沙高楼綺譚 (浅田次郎 徳間書店)
沙高楼という名がつけられた高層住宅のペントハウスで、不動産王が著名人を招いて、各人の秘密を自ら暴露しあうという催しが開かれ、それぞれの話し手が少々怪談じみた不可思議な話を語るという設定の短編集。
最初の短編「小鍛冶」は、登場人物の一人が国立博物館へ国宝の刀剣を見に行く場面から始まります。私も時々国立博物館の常設展を見に行くことがあります。
刀剣の展示場所はかなり奥まったところにあり、常設展ではほとんど立ち止まっている人もみかけません。そのため大変静かなのですが、そんな静謐の中で「ギラリ」なんて擬音がしそうなほど輝いている太刀を見つめていると「凶々しい」という形容詞はこういつ時のたまにあるのではないかとも思われ、とても古いはずなのに磨き上げられて光をたたえている刀剣は年をとらない妖怪のようにも見えてきます。
「小鍛冶」は刀の鑑定家と贋物を巡る話なのですが、筋の展開は、この手の話としてはよくあるものです。しかし、文章がよく推敲されていて(オリジナルの雑誌掲載は1996年なので、浅田さんも今ほどお忙しくはない時期だと思います。そのせいでしょうか?)、格調の高さみたいなものが感じられるとても良い小説です。
他の収録作は、まあまあといったところかと思いますが、最後の「雨の夜の刺客」は、かつての得意分野である渡世人を描いているので、「小鍛冶」に次いで読みごたえを感じました。
沙高楼という名がつけられた高層住宅のペントハウスで、不動産王が著名人を招いて、各人の秘密を自ら暴露しあうという催しが開かれ、それぞれの話し手が少々怪談じみた不可思議な話を語るという設定の短編集。
最初の短編「小鍛冶」は、登場人物の一人が国立博物館へ国宝の刀剣を見に行く場面から始まります。私も時々国立博物館の常設展を見に行くことがあります。
刀剣の展示場所はかなり奥まったところにあり、常設展ではほとんど立ち止まっている人もみかけません。そのため大変静かなのですが、そんな静謐の中で「ギラリ」なんて擬音がしそうなほど輝いている太刀を見つめていると「凶々しい」という形容詞はこういつ時のたまにあるのではないかとも思われ、とても古いはずなのに磨き上げられて光をたたえている刀剣は年をとらない妖怪のようにも見えてきます。
「小鍛冶」は刀の鑑定家と贋物を巡る話なのですが、筋の展開は、この手の話としてはよくあるものです。しかし、文章がよく推敲されていて(オリジナルの雑誌掲載は1996年なので、浅田さんも今ほどお忙しくはない時期だと思います。そのせいでしょうか?)、格調の高さみたいなものが感じられるとても良い小説です。
他の収録作は、まあまあといったところかと思いますが、最後の「雨の夜の刺客」は、かつての得意分野である渡世人を描いているので、「小鍛冶」に次いで読みごたえを感じました。