蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

日本史の論点

2022年01月13日 | 本の感想
日本史の論点(大石学他 中公新書)

印象に残った点を並べてみます。(要約は私見に基づくので、間違っていたらすみません)

・日本史の学者のメルクマールは岩波講座日本史と山川の高校教科書。ここにどう書かれているかが主流派(通説)?とそうでないものを分けているらしい。

・かつての大化の改新は、今では乙巳の変と呼ばれるらしい。そういえば中学受験を描いた漫画にもそう書かれていた。(というか、本書によると事件の存在そのものを疑問視する向きもあるらしい)

・道鏡は宗教者、とくに布教・教育者として非常に優秀で、都から下野へ追放された後も弟子の育成に注力し、後の天台座主円仁などを輩出した。

・誰もが暗記している語呂合せで有名な鎌倉幕府成立年は、今では頼朝が守護地頭の任命権を獲得した1185年が有力となっている。

・元寇戦勝利の主要因は御家人の頑張り。上陸地点近くで持ちこたえたのが大きい。

・江戸時代の大名の多くは江戸滞在を好んでいた。芝居では「田舎者」扱いされる浅野内匠頭は江戸生まれ江戸育ちのシティボーイだった。したがって藩主は、地方の領主というより幕府の官僚というイメージ。

・江戸幕府4代将軍家綱以降の兵農分離が行政の文書化を進め、吉宗の代で精緻に整備された。

・明治維新はレボリューションではなくてイノベーション。そのココロは王朝交代ではなく士族間の権力移動だから。

・日中・日米戦争が日本社会にもたらしたものを一言でいうと1940年体制である。

・1978年10月、訪日した鄧小平に昭和天皇は「我が国はお国に対して、数々の不都合なことをして迷惑をかけ心から遺憾に思います。ひとえに私の責任です」という旨を述べ鄧小平を驚かせた。(諸説あるようです)
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