いちよう:二千和会だより

 会報「いちよう」を通して、人生がさらに豊かに広がるよう「今も青春!」の心がけで楽しく交流しながら散策しましょう。

寝るほど楽は…

2008年06月09日 | SO-Color

 生まれた地は違うが、育ちは千葉県北東部。それも3歳から中学3年春までの期間だけれど、純朴で豊かな自然環境に囲まれた原風景をもつ。そのときの懐かしい仲間が集う。
 二千和会会員のKinueちゃん、Ayakoちゃんも同郷、同級という仲だ。小中学校を共にさせて頂いた女性だけの会“水無月会”。女声の会としては今年で5回目くらいになる。 昨年の集いには、白鳥を見に行った。



 今年はいつもより小人数となったが、それでも女性の集まり! お昼どきを中心に集まって四時ごろまで、何のお話ということもなく楽しむ。お茶菓子や、お多福豆の塩味や甘味に煮たものなど持ち寄り、諸々…絶えず口の運動をしながら、優雅に時を過ごす。
 私たちのお仲間に、お祖父さんが当時「村長さん」をしていた方もいらっしゃる。その方のお兄さんは、後にInzai市となったこの地区で「市長さん」を勤められていた。お兄さんは惜しくも病に罹りお若くして急逝されてしまったのだけれど…。その彼女の名はMasakoさん。 
 Masakoさんの話はいつも楽しく面白い。村長さんをなさっていたお祖父さんの逸話は傑作だ。彼女は従来からよくあった家族構成で、お祖父さんと共に暮らしいていらした。使用人も何人か共に生活しておいでだった旧家である。そんな暮らしのなかで、夜なべ仕事をお母さんが音頭をとって使用人の方たちとしていたという。そんなとき、早く床に就いていたお祖父さんが、小用か何かで起きて来られたときのこと。眠そうな眼をこすりながら、一言!
 「世の中に寝るほど楽は無かりけり 浮世の馬鹿は起きて働く!」
 せっせと物も言わずに働いている方たちを尻目に、そんな一言を言い放ち…である。何度聞いても「ぷっ!」と吹き出してしまう。愉快な可愛い、お祖父さんである。どんな顔して言われたのだろう。まるで夏目漱石のような立派なお髭をつけていらした印象深いお方が、である。

    

 「皆さんは、平均何時くらいに寝る?」との質問が飛ぶ。質問の主は、勿論Masakoさんで、彼女は「早い時間に眠くなるので、割りに早く寝てしまう。」という。 あ~、私は夜はあまり眠たくは無いのである。寝ているのが勿体無いと思ってしまう傾向。村長さんだったお祖父さんの言われる「浮世の馬鹿」なのである。まあ、働くのではなくて、テレビ、パソコン、本などに没頭して静かに過ごすには夜が一番だ。昼は玄関にチャイムやら食事介助やら、買い物、人との交流もあり落着いて自分だけの時間が持てない。だから夜の時間が好きなのである。

 澤地久枝の『六十六の暦』を読んでいたら、あった! それは祖母の話としてであったが。
        「秋の終わりの虫の声」 の項 ―抜粋―
 早咲きのサザンカが散り始めたのを見て、秋の終わりによく祖母が口にした言葉を思い出した。これが最後というように鳴きすだく虫の声のかたわらである。
「肩させ、裾させってないているんだよ」
と祖母は言った。祖母は読み書きにまったく縁のない生涯を生き、それでも一家を背負って働きぬいたなかなかの人である。
 一日の仕事をおえて床につくとき、小柄な全身をのびのびさせながら、
「ああ、極楽極楽。寝るよりラクはなかりけりってね。むかしの人は、うまいこと言ったもんだ。浮世のばかはおきて働けって」
 おばあさん子だったわたしの頭に、祖母の言葉は思わぬときにひょっこりよみがえってくる。
                     ~略~ 

 「働く」なのか、「働け」なのか? 断定と命令では、その意味合い・ニュアンスも微妙に違ってくるのだが、そのようなことを言っては人々の社会秩序や流れを作って、バランスを保ちながら、生きてきたのだろう。