医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

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インフルエンザワクチンはほとんど効いていないというデータ

2019年12月12日 | 感染症
上の図は日本臨床内科医会会誌の今月号に載っていた図です。
「インフルエンザワクチンの有効性と安全性」
日本臨床内科医会会誌 2019;34:14
(インパクトファクター☆☆☆☆☆、研究対象人数★★★★★)←この表示、久しぶりです。

過去10シーズンについてインフルエンザワクチンを接種した人と接種しなかった人のインフルエンザの罹患率を年齢別に示したものです。

ご覧いただくとわかるように、昨シーズンはインフルエンザワクチンは9歳以下と30歳~39歳の人しかインフルエンザの発症を抑制していません。全体を平均して図の説明では、全年齢で「一定」の効果がみられたと書かれていますが、統計学的にはp=0.0512は差がないということですから、この説明は誤りです。この説明を書いた人は統計学を誤解していると思います。9歳以下と30歳~39歳の人では効果がみられたと書けば正しかったと思います。30歳~39歳の人は働き盛りなので職場や通勤交通機関などで不特定多数の人と接する機会が多く、これらの人には有効であったと想像できます。

この年齢でない私はこれらのデータを以前から知っていますので、私はインフルエンザワクチンを接種していません。

インフルエンザワクチンを接種すれば症状が軽くなるという話もききますが、私は半信半疑です。以下にその理由を述べます。

(その1)
私たちは医学研究をする前に、「こういう理由から私たちはこの仮説をたてた。この仮説を検証するためにこの研究を行った」と論文を書くことが多いです。皆さんも冷静に考えてみて下さい。インフルエンザワクチンの場合の私個人の「仮説」は、「まだウイルス量が少ない発症さえも抑制できないのに、発症して体内で何万倍にも増殖したウイルス量状態である症状を軽くすることなどできるのだろうか」ということです。

(その2)
この医学研究を行う場合(既に行われていますが)同一人物で2種類の人生など比較できませんから、接種群と非接種群に分けて両群の平均を比較するのですが、それが本当に個別の人々にあてはまるのだろうか、ということです。少し難しい話なので分かりやすい例を挙げます。ある若者は将来社長になりたくて東北大学に入ろうか九州大学に入ろうか迷っていました。調べたら人数で補正した社長数は九州大学出身者の方が多かったので(例えばの話なので本当かどうかわかりません)その若者は九州大学に入学しました。その若者にはその方がよかったかどうかなどという証明はほとんど不可能ということです。
その若者自身には東北大学の方が合っていたかもしれません。会社数自体が北日本よりも西日本に多いのかもしれませんし(例えばの話なので本当かどうかわかりません)、社長をめざす若者が過去のデータを見て九州大学を選んでその結果社長をめざす人が九州大学に多く社長が多くなったのかもしれません(例えばの話なので本当かどうかわかりません)。
このように医学研究でいうところの「交絡因子」が沢山あります。ワクチンを接種する人の方が健康に配慮する人が多いので罹患しても早く対処したのかもしれません。

(その3)
百歩譲ってインフルエンザワクチンに症状を軽くする効果があったとしても、今では、タミフルやイナビルなどの抗インフルエンザウイルス薬が登場し、早期に内服すれば発熱などの症状は約36時間短くなるのですから、万が一罹患したら早めに内服を始めれば、ワクチンの存在意義はないのでは?ということです。でも本来は健康な成人の場合、耐性の問題から抗インフルエンザ薬など使用しない方がよいです(仕事の都合でどうしても、という場合は仕方がないですが)。
この件に関しては以前ここで書きました。

インフルエンザワクチンの効果は65歳以上では9%

結論
インフルエンザワクチンは9歳以下と30歳~39歳の人以外には効果はほとんどありません。9歳以下と30歳~39歳の人には有効ですから接種して下さい。図から判断すると10歳~19歳もお勧めです。


私は以前、別の観点の説明を書きました。

意外と効いていなかったインフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンはあまり効いていない

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1 コメント

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excess death (pwdhang)
2019-12-19 08:54:51
公衆衛生上はexcess deathに関して有効そうなデータがある。
N Engl J Med 2001; 344 : 889 - 96.

ただこういう事より、AHA総会の話、特にISCHEMIA試験について書いて欲しい。
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