たちのみ
とまりぎ
小田急線新宿駅の地下改札口を出ると、JR新宿駅西口へ出る通りの両側に店がある。
その中の一軒に”たちのみ”とあるので吸い込まれるように入ると、たしかに椅子はなく客は立っている。
奥に店員のいるカウンターがあって二人が窓口に見えたので、二階堂のお湯割りと煮込みを頼む。
料金はセット500円。安い。
昔から”たちのみ”はあったことはあった。山手線の各駅近くの酒屋がコップ一杯づつ出してくれて、つまみは缶詰や乾き物が主で、煮たり焼いたりのものはなかった。そういった酒屋の”たちのみ”が東京からは消えてさびしくなった。
そう思っていたら、数年前に横浜で数軒見つけて入ったことがあったが、それももうなくなった。
極端な景気低迷で、神田、新橋、新宿といった人の多く集まるところには”たちのみ”が増えた。
サラリーマンの懐事情は日に日に悪くなっているようだから、この手の店が客を集める。
小田急線の管轄内にこれができたのは、安全で入りやすくてたいへんありがたい。思い出横丁まで歩かなくて済む。
むかしの酒屋の”たちのみ”がのんびりしていてなつかしさを感じるのだが。