@人への憎しみ、積年の憎しみが抑えきれなく一気に爆発、事件を起こすことになるサスペンス小説だ。相談相手もなく、孤独に耐え切れなくなった時だ。一歩悪の道に出る前に立ち止まり、心を落ち着かせれば何でもないことで済むはずなのに。周りに必ず頼りになる人(家族)を据え、冷静に物事を考える時間をもつことが大切だと教えてくれる。
『人は、人を愛していると思い込み、実は自分自身だけしか愛していない場合が多い』瀬戸内寂聴 -
『悪寒』伊岡瞬
「概要」妻が殺したのは、夫が勤める会社の重役だった――。大手製薬会社「誠南メディシン」に勤める藤井賢一は、会社の不祥事の責任を一方的に取らされ、東京から山形にある小規模な関連会社「東誠薬品」に飛ばされた。それから八か月ほとが経ったある夜、東京で娘・祖母と暮らす妻の倫子から、不可解なメールを受け取る。「家の中でトラブル」がありました。賢一はすぐさま倫子に電話をするが、繋がらない。その数時間後、警察から「藤井倫子を傷害致死の容疑で逮捕しました」という電話を受ける。妻が殺した相手は、賢一にとっては雲の上の存在、「誠南メディシン」の常務、南田隆司だった――。
ー会社組織で上司の過ちを部下が受け左遷させられ、家族が疎遠となる。この小説はさらにその妻と会社の上司との関係、妻の家族関係など複雑な「人間関係」が絡んで事件を起こすサスペンスだ。
ー「中年男の鈍感さは、それだけで犯罪」という文中の言葉は「家族は放っておいてもうまくいくものじゃない。全力で守りものだって」と夫の心にグサリとくる。 仕事、仕事と忙しいばかりで家族に関心を示さなかったことで家族に亀裂が生じた事も一因があった。
ー犯人像は2転3転と、展開する度に誰もが真犯人かのように疑うが実は事件に繋がるきっかけは血のつながった家族なのか、そこから広がりを見せた憎しみが殺害事件へと発展させた事だ。
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