乃木希典(のぎ・まれすけ)——日露戦争で苦闘したこの第三軍司令官、陸軍大将は、輝ける英雄として称えられた。
戦後は伯爵となり、学習院院長、軍事参議官、宮内省御用掛など、数多くの栄誉を一身にうけた彼が、明治帝の崩御に殉じて、妻とともに自らの命を断ったのはなぜか? “軍神"の内面に迫り、人間像を浮き彫りにした問題作。
私の前に一枚の写真がある。(中略)
司馬遼太郎は、『殉死』の文中でこの写真が明治天皇大葬の日の朝八時頃にとられたと記している。
夫婦でとったのは希典の希望だったらしい。「ケフノ写真ハ自然ナル姿勢ガヨカラウ」と希典が述べたと司馬は書いた。
このために写真のようなポーズが生まれたとういのだ。静子の立ち位置を決めたのが本人なのか、それとも希典なのか、司馬はなにも語らない。(解説・山内昌之)「BOOK」データベースより
「号泣必至!」などという評判と、司馬遼太郎にしては珍しい1冊ものなので借りてきました。
『坂の上の雲』のテレビドラマで、柄本明が好演していた「乃木希典」将軍。
軍神と言われ、桃山御陵(明治天皇陵)の近くに乃木神社が建立されるほどの明治期の偉大な軍人です。
僕も何となく、その人柄や来歴については知っていたものの、詳しく触れたのはこの『殉死』が初めてでした。
まぁ、いわゆる「司馬史観」に基づいて書かれているので、かなり偏った記述ではありますが、旅順攻略では、とんでもない数の犠牲者を出してしまった司令官であることは間違いありません。
戦時下のことですから、情報が不足していたことは否めませんし、日本軍大本営の中でさえ、「旅順なんて大したことない。数日で陥とせる」という見方が大勢であったために無謀とも思える突撃が繰り返され、多くの命が失われました。
Wikipediaで読んでみると、実際は乃木将軍の手腕や判断ミスによる失敗というよりも、情報が錯綜したり、補給が届かなかったり、旅順要塞が強固過ぎたり・・・と、乃木将軍だけを責めるものではないこともわかります。
この小説では、乃木希典について、その妄信的な明治天皇に対する忠誠心や、詩人としての情緒的な要素、家族に対する愛情の酷薄さなど、その人となりについて、いささか批判的ともとれるように書かれています。
その記述からは、『軍神』などという呼称はふさわしくないように思えますし、「本当のところはどうやったんやろ?」と思ったりします。
まぁ、小説なので、あくまで筆者の主観によって描かれて当然なので、司馬遼太郎が描く『乃木像』が正しいとも思いません。
いずれにしても、劇的な人生であったことは間違いないですし、軍人として、規律を守り、率先垂範した厳格な人柄であったことは間違いありません。
敵将に対する扱いや、学習院院長としての指導方針、我が息子を二人も同じ戦地で亡くすという悲劇、そして、明治天皇の大喪の礼に合わせた殉死など、本当にドラマティックな生涯であったと思います。
また別の作家が書いた『乃木像』を読んでみたいですね。
★★★3つです。
戦後は伯爵となり、学習院院長、軍事参議官、宮内省御用掛など、数多くの栄誉を一身にうけた彼が、明治帝の崩御に殉じて、妻とともに自らの命を断ったのはなぜか? “軍神"の内面に迫り、人間像を浮き彫りにした問題作。
私の前に一枚の写真がある。(中略)
司馬遼太郎は、『殉死』の文中でこの写真が明治天皇大葬の日の朝八時頃にとられたと記している。
夫婦でとったのは希典の希望だったらしい。「ケフノ写真ハ自然ナル姿勢ガヨカラウ」と希典が述べたと司馬は書いた。
このために写真のようなポーズが生まれたとういのだ。静子の立ち位置を決めたのが本人なのか、それとも希典なのか、司馬はなにも語らない。(解説・山内昌之)「BOOK」データベースより
「号泣必至!」などという評判と、司馬遼太郎にしては珍しい1冊ものなので借りてきました。
『坂の上の雲』のテレビドラマで、柄本明が好演していた「乃木希典」将軍。
軍神と言われ、桃山御陵(明治天皇陵)の近くに乃木神社が建立されるほどの明治期の偉大な軍人です。
僕も何となく、その人柄や来歴については知っていたものの、詳しく触れたのはこの『殉死』が初めてでした。
まぁ、いわゆる「司馬史観」に基づいて書かれているので、かなり偏った記述ではありますが、旅順攻略では、とんでもない数の犠牲者を出してしまった司令官であることは間違いありません。
戦時下のことですから、情報が不足していたことは否めませんし、日本軍大本営の中でさえ、「旅順なんて大したことない。数日で陥とせる」という見方が大勢であったために無謀とも思える突撃が繰り返され、多くの命が失われました。
Wikipediaで読んでみると、実際は乃木将軍の手腕や判断ミスによる失敗というよりも、情報が錯綜したり、補給が届かなかったり、旅順要塞が強固過ぎたり・・・と、乃木将軍だけを責めるものではないこともわかります。
この小説では、乃木希典について、その妄信的な明治天皇に対する忠誠心や、詩人としての情緒的な要素、家族に対する愛情の酷薄さなど、その人となりについて、いささか批判的ともとれるように書かれています。
その記述からは、『軍神』などという呼称はふさわしくないように思えますし、「本当のところはどうやったんやろ?」と思ったりします。
まぁ、小説なので、あくまで筆者の主観によって描かれて当然なので、司馬遼太郎が描く『乃木像』が正しいとも思いません。
いずれにしても、劇的な人生であったことは間違いないですし、軍人として、規律を守り、率先垂範した厳格な人柄であったことは間違いありません。
敵将に対する扱いや、学習院院長としての指導方針、我が息子を二人も同じ戦地で亡くすという悲劇、そして、明治天皇の大喪の礼に合わせた殉死など、本当にドラマティックな生涯であったと思います。
また別の作家が書いた『乃木像』を読んでみたいですね。
★★★3つです。