続・知青の丘

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『We』第17号より 山口雪香第一歌集『白鳥姫』を読む 加藤知子

2024-04-24 19:53:00 | 短歌
『白鳥姫』のたてがみ      加藤 知子

『白鳥姫』は、第16号より「We」に参加された山口雪香さんの第一歌集。表紙絵も挿絵もご自分で描かれたものだ。チェロを抱えてひとり語りされるYoutubeも拝見した。2023年8月には、小泉八雲原作から「二つの約束」と題し、三味線夢語りライブをされた模様。あまり存知あげないが、どうも多彩多才な方のようである。

水くぐる指紋よ猫の肉球の無垢なるうそを捺して生きつつ

 詩人や小説家など、文学を業とする芸術家は、モノ書く素材を携えた掌の指紋を押し付けるように、「無垢なるうそを捺して生き」ているのではあるまいか。そうしつつ、読者という水をくぐることによって、評価を受けることにもなるのだろう。

天を指す虹のたてがみこぞりたち真野明け映ゆる夏のひかりよ 

 虹をたてがみと見立ててかつそれは天を指すという。この詩魂に圧倒されるが、これこそが、おそらく常に満を持してエネルギッシュかつ多彩にものごとに奮い向かってゆく作者の源なのだろうとおもう。

通り雨薄荷のごとく匂いたつ肩うすき少女の髪まだ乾かず

 いつまでも少女のような匂いを保ち、濡れた長い髪は黒黒として雫する。そんな常乙女像を作者に観てしまう。

ゆるやかに地上抜け出す肉体のけもの忘れて白鳥座かな

 この作者の身体も石牟礼道子と同様、まるで「たかざれき」しているようだ。肉体からふわーと魂が抜けて天上に遊ぶ。そこは白鳥座の館に住まう白鳥姫。ひとり語りされる舞台上の山口雪香さんは、竜宮殿の王女のようでもあり、巫覡のようでもある。

下着剥ぐ少女は天を記憶して鶏冠のやうに華を降らせり

 地上と天上を行き来する少女は、下着を冠の形に脱ぐときも手の先は天を意識しつつ、その周りからは赤い花びらがこぼれ、降ってくるごとくなのだろう。

夜桜や腹部にしやがむ夜叉もありきと今昔死体は夢のみなもと

 姫にも夜叉にもなって、今昔を問わず死者と交感するのが「夢のみなもと」なのだというのだろうか。この場合、生者の生きる糧は、死者なのであるが、死者とは言わず、生々しい「死体」なのだという。それは、死者に昇華される前の、まだこちら側に親しくひんやりとした人間の身体なのだ。
 この歌に限らないが、独特の異邦人的な捉え方が山口雪香の短歌なのだと思う。彼女が短歌で奏でる領域は幅広いのだが、他に共鳴した短歌を一部挙げておきたい。

つばめ一閃少年のくびは細きかなトルソのペニス欲しきまひるま
白妙の空曇らせて呑み残す乳房いきものを知る目覚めかな
白銀の静かに炎ゆる洗ひ終へて手重り髪はしひたげて干す
手のなかに花を埋めしなつかしさを別れと言わむ空白のある
ふつくらと莢を抱きたり昔今我よりきれいな女はゐない
(現代短歌社、平成26年刊)

(2024/04/22)
我が家のでもなく、ご近所のでもない
他所の薔薇!

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