[試訳]
田舎に一軒の家があって、そこでかつて私は何度も夏を過ごした。時折その夏のことを考えたことはあったけれども、それは夏そのものではなかった。そうした夏が、私にとって永久に死に絶えたままである可能性は多いにあった。夏の蘇りは、すべての蘇りがそうであるように、ちょっとした偶然にかかっていた。ある夕べ、雪で凍えて帰って来て、しかも身体が温まることもなかった。ランプの灯った部屋で私が本を読み始めると、馴染みのお手伝いが、普段は私が飲まない紅茶を一杯すすめてくれた。そして偶然にも、何枚かの焼いたパンも持って来てくれた。私はそのパンを紅茶に浸した。それを口に運び、そして紅茶が染みて柔らかくなったパンを口蓋に感じると、私は震えを感じた。ジェラニウムやオレンジの木の匂いがした。強烈な光りの、幸福の感覚がしたのだった。
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今回は、特にぼくが付け加えることはなにもありません。みなさんよく読めていました。ただ、ひとつだけあえて注釈をつけておくと、mais ce n’e’taient pas eux. の所でしょうか。前回扱った sous le nom de passe’ n’est pas lui. という文章を思い出してもらえれば、eux が plusieurs e’te’s を表していることが分かってもらえると思います。
ところで、みなさんがプルースト作品に親しまれていること、心強く、うれしく思います。じつは、今、某デパートと大学の提携講座で、『失われた時を求めて』を鈴木先生の訳で読んでいます。受講生は6人。デパートの文化事業担当の職員さんが懸命に広く近畿圏で募集活動をして下さったにもかかわらず、この人数でした。あるいは、6人というのは、有り難い人数なのかも知れませんね。
Moze さん、自転車のことは災難でしたね。もう5年以上前のことになりますが、河内長野という市の丘陵地帯にある団地に住んでいた頃、愛用のマウンテン・バイクをぼくも盗まれました。それ以後、新しい自転車を買い替えることもなく、どこに行くにも徒歩でという習慣がついてしまいました。もっもと、「肩関節周囲炎」のために、今自転車のハンドルが握れるかどうか、自信もありませんが… 。
それでは、次回はこの文章を最後まで読んでしまいましょう。Smarcel
田舎に一軒の家があって、そこでかつて私は何度も夏を過ごした。時折その夏のことを考えたことはあったけれども、それは夏そのものではなかった。そうした夏が、私にとって永久に死に絶えたままである可能性は多いにあった。夏の蘇りは、すべての蘇りがそうであるように、ちょっとした偶然にかかっていた。ある夕べ、雪で凍えて帰って来て、しかも身体が温まることもなかった。ランプの灯った部屋で私が本を読み始めると、馴染みのお手伝いが、普段は私が飲まない紅茶を一杯すすめてくれた。そして偶然にも、何枚かの焼いたパンも持って来てくれた。私はそのパンを紅茶に浸した。それを口に運び、そして紅茶が染みて柔らかくなったパンを口蓋に感じると、私は震えを感じた。ジェラニウムやオレンジの木の匂いがした。強烈な光りの、幸福の感覚がしたのだった。
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今回は、特にぼくが付け加えることはなにもありません。みなさんよく読めていました。ただ、ひとつだけあえて注釈をつけておくと、mais ce n’e’taient pas eux. の所でしょうか。前回扱った sous le nom de passe’ n’est pas lui. という文章を思い出してもらえれば、eux が plusieurs e’te’s を表していることが分かってもらえると思います。
ところで、みなさんがプルースト作品に親しまれていること、心強く、うれしく思います。じつは、今、某デパートと大学の提携講座で、『失われた時を求めて』を鈴木先生の訳で読んでいます。受講生は6人。デパートの文化事業担当の職員さんが懸命に広く近畿圏で募集活動をして下さったにもかかわらず、この人数でした。あるいは、6人というのは、有り難い人数なのかも知れませんね。
Moze さん、自転車のことは災難でしたね。もう5年以上前のことになりますが、河内長野という市の丘陵地帯にある団地に住んでいた頃、愛用のマウンテン・バイクをぼくも盗まれました。それ以後、新しい自転車を買い替えることもなく、どこに行くにも徒歩でという習慣がついてしまいました。もっもと、「肩関節周囲炎」のために、今自転車のハンドルが握れるかどうか、自信もありませんが… 。
それでは、次回はこの文章を最後まで読んでしまいましょう。Smarcel