フランス語読解教室 II

 多様なフランス語の文章を通して、フランス語を読む楽しさを味わってみて下さい。

Histoire de peintures (2)注釈

2008年05月28日 | Weblog
Lecon 147
 
 [注釈]
 * (...) en oubliant Manet : 「しばらくマネを忘れて」でいいと思います。
 * la seconde est debout et porte sur son bras la robe de Ve’nus. : [要旨] を参考になさって下さい。
 * dallage と carreau に違いですが,正確なお答えはできません。ただ、carreau は、もちろん carre’ から来ている言葉ですから,そのひとつひとつの幾何学度が精密で,dallage と比べると面積は小さいような気がします。いま近代的な室内で見られるのは,carreau の方ではないでしょうか。
 [要旨]
 「ウルビーノのヴィーナス」の何がマネを惹きつけたのかを理解ためには、同作品がいかに作用しているかを見なければなりませんでした。
 まず注意しておかなくてはならないのは,ティチアーノ自身が、同作品よりも30年前に製作されたジョルジョーネの「ドレスデンのヴィーナス」に立ち返っていることです。ただ、前者はヴィーナスを宮殿内部に据えたのに対して、後者は風景の中に描いています。私は,横たわる女性と宮殿の関係はどうなっているのだろうかと考えてみました。画面を簡単に再現してみましょう。
 前景には,目映いばかりの裸婦が頭を左に向け横たわっています。画面の奥、左側には、結ばれた緑のカーテンが見える黒い部分があります。右側上のあたりには,タイルを敷き詰めた宮殿の一室が奥行きを持って描かれています。そこに召使いの女性二人の姿が見えます。一人は,ひさまづいて長櫃の中を覗き込んでいます。もうひとりは、ヴィーナスのドレスを肩にして立っています。二人の傍らには窓があって,その窓辺にはミルトの鉢植えが置いてあり、そこから柱が一本と木々が見えます。窓から見える空は、画面左側上の黒い部分と隣接しています。
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 さて、次回は、今回と同じ要領で p.250 (…) c’est la surface de la toile. までを扱います。

Histoire de peintures (2) 補足

2008年05月24日 | Weblog
 大阪は雨の週末となりましたが,関東地方も明日日曜日を中心に雨のようですね。
 さて、今回扱うテキストに見られる ジョルジョーネ「ドレスデンのヴィーナス」については、
 http://www.cartage.org.lb/fr/themes/arts/paintres/Pages/ut00059fr.html
 を参考になさって下さい。
 smarcel

Histoire de peintures (1)

2008年05月21日 | Weblog
 [注釈]
 * si (...) on allait pluto^t Manet a` Titien ? : si + 半過去で、「勧誘」の表現となります。ex. Si on allait au restaurant ce soir ?
 * Je le dis par allusion pre’cise a ` un tableau tre’s connu de Manet... : le は前文の内容,すなわちマネからティチアーノに遡っててみることを指しています。で、それは漠然とした時間旅行ではなく,もっと具体的に「オランピア」から「ヴィーナス」を考えてみたい、ということです。
 * Comment passe-t-on... : ここの passer はsuivre le cours の言い換えです。
 * en tant qu’historien on peut essayer d’approcher l’histoire de la peinture par le biais du regard... : approcher... de ~「…を~に近づける」, par le biais de... 「…を通じて」
 この本のタイトルにもかかわることですが,著者には既存の「美術史」ではなく、一枚一枚のタブロに読み取れる画家のまなざしを通して「絵画の歴史」を辿り直したいという思いがあるようです。
[試訳]
 ところで、美術史の流れ通りにティチアーノからマネに至るのではなく、マネからティチアーノにさかのぼってみてはどうでしょうか。そんなふうに時間軸に逆らってカードを切ってみることもできるでしょう。私がこんなことを言うのは,具体的にはマネの、あの名高く,スキャンダラスな「オランピア」のことを考えているのです。当時からさかのぼること300年の1538年に描かれ,フィレンチェのウフィツィの特別室に展示されていた,ティチアーノの「ウルビーノのヴィーナス」から直接着想を得た、あの作品のことです。私が長らく疑問だったのは,300年にも及ぶ西洋絵画において横たわった裸婦像は数多くある中で、なぜマネはオランピアの原型としてあの作品を選んだのか。しかもオランピアは近代絵画を立ち上げる重要な作品のひとつなのです。「ウルビーノのヴィーナス」は、当時展示されていた名の知れた作品で,しかもティチアーノの最高傑作というわけでもないのですから,なおさら不思議なのです。いかにしてマネからティチアーノに至ればよいでしょうか。マネのまなざしを取り戻そうというのではありません。そんなことはできないでしょう。そうではなく、画家自身が絵画に注いだまなざしを通して、美術史家として、美術史を絵画そのものに近づけてみたいのです。もう一度くり返しますが,美術史というカテゴリーの外で美術の歴史を生み出すのは、芸術家なのです。マネがオランピア制作より10年ほど前に「ウルビーノのヴィーナス」の小さな模写を残していて,それが後にオランピアとなる事実を、美術史家はどう考えればいいのでしょうか。このつながりは歴史家が考えついたものではなく,マネ自身が辿ったものなのです。
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 次回は、p.248のl.2 まで読んでもらって疑問に思った点を書き込んで下さい。長くなりますから,訳出には及びません。
 ウィルさん、「トークマスタースリム」って、どんな機械(ソフト)ですか。なんだか、それを使えば英語でもフランス語でもすらすらしゃべれそうですね。
 smarcel

<< Histoire de peintures >> 補足

2008年05月17日 | Weblog
 今回のテキストで扱われる、マネとティチアーノの作品は下記のサイトでそれぞれ見ることができます。
参考になさって下さい。

オランピア
http://www.musee-orsay.fr/fr/collections/oeuvres-commentees/recherche.html?no_cache=1&zoom=1&tx_damzoom_pi

ウルビィーノのヴィーナス
http://www.cineclubdecaen.com/peinture/peintres/titien/venusurbino.htm

smarcel

Daniel Arasse << Histoires de peintures >>を読む

2008年05月07日 | Weblog
 次週よりフランス語読解教室 II では、Daniel Arasse << Histoires de peintures >> を読んでゆきます。先日まで東京で公開されていた 「ウルビーノのヴィーナス」から、マネの「オランピア」を見つめ直す論考です。 
 あらためて教室に参加なされたい方は,テキストを添付ファイルにてお送りしますので、
 smarcel@mail.goo.ne.jp
までご連絡下さい。
 smarcel

フランスとフランス人に対する30の質問(5)

2008年05月07日 | Weblog
Lecon 145 かな ? 注釈と試訳

 [注釈]
 * << discrimination positive >> : アメリカで言われているところの,affirmative action のことです。最近のフランスでの例をとれば,Grandes Ecoles に、いわゆる教育優先地域(ZEP)に指定されている高校の受験生を別枠で入学させたりしています。ZEPとは、Quartier sensible など、おもに家庭・教育環境に恵まれないこどもたちが多く通う教育施設がある地域のことです。
 * corriger le tir : 文字通りは、照準を正すこと、転じて状況判断の誤りなどを修正することを意味します。
 * les mesures (...) ne se re’ve`lent au final pires que le mal : neは「虚辞 の ne」と言われているものです。よかれと考えてとった施策が裏目に出ること、ですね。
[試訳]
 差別問題と取り組むフランスの政策においては近年前進が見られる。とりわけ2004年には差別問題高等事務局 (Halde)が創設され、この問題が政治の場で懸念されていることを見て取ることができる。それは以下の事実が公に認められたことを示している。移民の統合に問題があるとしても,それはおそらく移民やその子供たちの振る舞いに因る問題ではなく,むしろ「本国フランス人」の態度の問題であるという事実だ。ただ、国民アイデンティティー省なるものが新たに作られたことによって、反移民の動きが激化するという後退に加えて,つぎのような心配もある。今日ともすると状況を改善するものと考えられている「アファーマティブ・アクション」の施策が裏目に出て、フランス社会がどんどん細切れの共同体に分割されてしまわないだろうか。それならば結局、平等という共和国の理想を活かす方があきらかにましであるだろう。けれども、言うは易し...。
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 日本とフランス。同じ先進国でありながら、その社会のあり方には随分と違うところもあります。両国ともに根深い問題をそれぞれに抱えていますが,互いを相見ることによって、それぞれが有効な参照軸となることはあるのではないでしょうか。フランス社会の動きを注視しながら、日本社会のことを考えてゆきたいものです。
 みさよさん、雅代さん、その後お風邪の方いかがでしょうか。大阪はすっかり初夏の陽気ですが,週末からまた少し季節が後戻りするようです。どうかお大事になさって下さい。