雇用状況がきびしい中、何度か、あるいは何度も入社試験、面接に受からず、すっかり落ち込んでしまう学生がたくさんいます。
そういう本人や友人がしばしば相談に来ますが、彼らが言う典型的な言葉があります。
「もう○○社も落とされてしまって、自分を否定されたような気がするんです。自分は誰からも必要とされていないんじゃないかと感じるんです。」
そういう時、まず「そうか、○○社も採用されなかったんだ。それは、がっかりするよね」とセラピー用語でいえば「共感的アプローチ」をします。
しかし、少し共感のプロセスを経た後で、「それで、きみは落ち込んでいる気持ちをわかってほしいんだろうか、それともどうしたら就活に勝てるか、方法を教わりたいんだろうか。どちらでも、ある程度は対応してあげられるけど、気持ちをわかってあげてもそれで就活に勝てるわけではないと思うので、僕としては就活に勝つ方法を教えるほうが効率的でいいと思うんだけど、どちらにする?」と聞きます。
そうすると、多くの学生が「方法を教えてください」と言ってくれます。
人間にとって感情は大切なものですが、感情に引きずられたり溺れたりするとたいてい失敗するものです。
そこで、人生(ここではその一部としての就活)で成功するためには、感情を大切にしながらもコントロールする必要があります。
そこで、まず落ち込みという感情の簡単なコントロール法を伝えます。
「○○社の人事担当者が君を採用しなかったことは確かに事実だけど、どのくらいの面接時間だったのかな? ○○分、なるほど。
ところで、君という人間の全体はたった○○分で評価できるほど、単純で小さいものなのかな? そんなはずはないよね。人間はとても複雑で多様な要素をもっている存在だよね。
人事担当者は、やむを得ず入社試験というごく短い時間の中で見えた君の一部の印象がその会社が要求することとは合っていない、と判断したんだと思うけど、どう思いますか?
そう、それは、ごく短時間で見えた君の一部が否定されただけで、君という人間の全体が否定されたわけじゃないよね?
では、『私が否定された』という考えを『私の一部が否定された』と訂正してみよう。それから、さらに『私のごく一部が否定されただけのことだ』と言い換えてみよう。どういう気分がするだろう?」
「自分(全体)が否定された」のではなく、「自分のごく一部が否定されただけだ」と捉え方が変わると、ほとんどの場合、気持ちが軽くなります。
続いて、「『誰にも必要とされていない』と感じたんだね。そう感じるとショックだよね。
それは『みんなが私を必要としていない』と言い換えてもいいよね?
ところで、えーと、何社だったっけ? ○○社、なるほど。で、面接官は延べ何人くらいだった? そうか、○○人くらい。
○○社とその○○人のことを『みんな』と言うのは、言葉の使い方として正確だろうか? 『みんな』という言葉の正確な意味は『人間全員』ということだと思うんだけど、どうだろう? ○○社の延べ○○人は、全人類のごくごくものすごくごく一部だと思うんだけど、どう思う?
だから、正確に言うと、『誰にも必要とされていない』んではなくて、『ごくごく一部の人に必要とされなかった』ということだよね?
では、『誰にも必要とされていない』という考え方を、『たまたまごくごく一部の会社には必要ではないと思われただけだ』と言い換えてみよう」
論理療法や認知療法では、ごく一部の事例ですべてを断定することを「過度の一般化」といいます。
私たちはよくやりがちなことですが、過度の一般化はとても不正確でたいていの場合非生産的なものの捉え方です。
人間の感情は、ものごとの捉え方・考え方・認知の仕方によって、大きく左右されます。
捉え方を変えると、感情も大きく変わるのです。
〔*これは論理療法の基本的な考え方です。〕
「自分(全体)が否定された」から「自分のごく一部が否定されただけ」、「誰からも必要とされていない」を「ごくごく一部の人には必要でなかっただけ」と捉え方を変えると、気分はすっかり楽になります。
さて、落ち込んでいるのと、気分が楽なのと、どちらが就活に勝つ可能性が高まるでしょう? 言うまでもありませんね。
だったら、しっかりものの捉え方を変えて、気分を楽にして、再度挑戦してみよう!
10回でうまくいかなかったら、20回、20回でまだうまくいかなかったら、30回。何回うまくいかなくても、最後にうまくいけばいいのですから。
アメリカの大成功者で、成功哲学の著者でもある、ナポレオン・ヒルが言っています。
勝つ者はけっしてあきらめない。あきらめる者が成功することはけっしてない。
若者諸君、勝つまではあきらめるな! 君ならきっと最後には必ず勝てるんだから。
いやな気分の整理学―論理療法のすすめ (生活人新書)岡野 守也日本放送出版協会このアイテムの詳細を見る |