サングラハ教育・心理研究所の「オープン・カレッジ」と名づけた公開講座の第35期に、古代ローマの哲学者皇帝マルクス・アウレーリウスの『自省録』の講義を行なうことは、お知らせしたとおりです。
それに先立って、いわば前宣伝的にマルクス・アウレーリウスの深く美しいことばをいくつか紹介しようと思います。
まず最初に引用したいのは、彼の死生観をもっとも端的に表現した次のことばです。
おお、宇宙よ、すべて汝に調和するものは私にも調和する。汝にとって時をえたものならば、私にとって一つとして早すぎるものも遅すぎるものもない。
おお自然よ、すべて汝のもたらすものは私にとって果実である。すべてのものは汝から来り、汝において存在し、汝へ帰っていく。
(『自省録』四・二三、神谷美恵子訳、岩波文庫)
すべての出来事――悲劇的な出来事でさえ――を宇宙のもたらしたものと受け止めることができたならば、私たちは幸不幸を超越して、生きられる間は生き死ぬべき時は死ぬというきっぱりとして爽やかな生き死にの仕方ができるでしょう。
それは決して容易ではありませんが、心を鍛錬することによって、そうした心境に近づくことは不可能ではありません。
今、困難な時代にあって、こうした心境に近づけるとどんなに強いでしょう。
私も、こうした死生観で覚悟を決めて生き死にしたいと思っており、このことばは私の墓碑銘に選んだものでもあります。