宇宙は一つの生きもので、一つの物質と魂を備えたものである、ということに絶えず思いをひそめよ。またいかにすべてが宇宙のただ一つの感性に帰するか、いかに宇宙がすべてをただ一つの衝動から行うか、いかにすべてがすべて生起することの共通の原因となるか、またいかにすべてのものが共に組み合わされ、織り合わされているか、こういうことを常に思い浮かべよ。
(『自省録』4・40)
宇宙の中のありとあらゆるものの繋がりと相互関係についてしばしば考えて見るがよい。ある意味であらゆるものは互に組み合わされており、したがってあらゆるものは互に友好関係を持っている。なぜならこれらのものは、〔膨張収縮の〕運動や共通の呼吸やすべての物質の単一性のゆえに互に原因となり結果となるのである。
(『自省録』6・38)
マルクス・アウレーリウスの思想は、ストア学派と呼ばれる古典ギリシャの哲学の1つの流れに属しています。
ストア学派の自然学は、現代思想的な用語でいえば「コスモロジー」にあたり、驚くほど現代科学の洞察を一致するところがあります(そのことについては、「いのちの授業1:コスモロジー」を参照してください)。
ストアのコスモロジーの要点は、宇宙と自己は一体である、というところにあります。
しかし、日常生活の中でそのことを忘れがちなので、マルクス・アウレーリウスは「絶えず思いをひそめよ」とか「しばしば考えてみるがよい」と自分に言い聞かせているのです。
そうして、繰り返し絶えず思うことによって、ストアのコスモロジーが単なる一般的な理論ではなくいわば彼自身によって「生きられている哲学」になっています。
『自省録』の魅力は、ストア哲学が一人の具体的な人間によって生きられている哲学として表現されているところにあるといっていいでしょう。
第35期の公開講座では、そのあたりをさらに深く掘り下げ味わっていきたいと思っています。