マルクス・アウレーリウスのことば 3:宇宙の一体性

2011年04月10日 | 生きる意味

 宇宙は一つの生きもので、一つの物質と魂を備えたものである、ということに絶えず思いをひそめよ。またいかにすべてが宇宙のただ一つの感性に帰するか、いかに宇宙がすべてをただ一つの衝動から行うか、いかにすべてがすべて生起することの共通の原因となるか、またいかにすべてのものが共に組み合わされ、織り合わされているか、こういうことを常に思い浮かべよ。
                             (『自省録』4・40)


 宇宙の中のありとあらゆるものの繋がりと相互関係についてしばしば考えて見るがよい。ある意味であらゆるものは互に組み合わされており、したがってあらゆるものは互に友好関係を持っている。なぜならこれらのものは、〔膨張収縮の〕運動や共通の呼吸やすべての物質の単一性のゆえに互に原因となり結果となるのである。
                             (『自省録』6・38)


 マルクス・アウレーリウスの思想は、ストア学派と呼ばれる古典ギリシャの哲学の1つの流れに属しています。

 ストア学派の自然学は、現代思想的な用語でいえば「コスモロジー」にあたり、驚くほど現代科学の洞察を一致するところがあります(そのことについては、「いのちの授業1:コスモロジー」を参照してください)。

 ストアのコスモロジーの要点は、宇宙と自己は一体である、というところにあります。

 しかし、日常生活の中でそのことを忘れがちなので、マルクス・アウレーリウスは「絶えず思いをひそめよ」とか「しばしば考えてみるがよい」と自分に言い聞かせているのです。

 そうして、繰り返し絶えず思うことによって、ストアのコスモロジーが単なる一般的な理論ではなくいわば彼自身によって「生きられている哲学」になっています。

 『自省録』の魅力は、ストア哲学が一人の具体的な人間によって生きられている哲学として表現されているところにあるといっていいでしょう。

 第35期の公開講座では、そのあたりをさらに深く掘り下げ味わっていきたいと思っています。



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サングラハ第116号が出ました

2011年04月10日 | 広報



 今年の春は、なかなかのどかに楽しむという気分になれません。

 しかし、春の草花は季節どおり花を咲かせていて、ひと時、心をなごませてくれます。

 少し心を休ませては、またこれからどうすれば日本をいい国にできるのかということを考え続けています。

 方向としては「『十七条憲法』と緑の福祉国家」ということでまちがいないと思っているのですが、日本国民のみなさんの圧倒的多数の理解と支持を得る、ということにはまだなっていないのは、なぜでしょうか。

 しかし、お陰様で、本ブログの閲覧者数はここのところかなり多くなってきています。徐々にもっとたくさんの方に理解・共有していただけることを祈っています。

 いいと思われたみなさん、よろしければ、さらに一歩踏み込んで、『サングラハ』誌もご購読ください。

 最新の第116号が昨日出来上がり、会員の方には発送申し上げました。





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第35期講座案内

2011年04月10日 | 広報

         サングラハ教育・心理研究所
      
       第35期オープンカレッジご案内


 東日本大震災は、これまで日本人が体験したこともないほど大きな災害で、これからどういうふうに復興するのか・できるのか、日本人は大きな課題を抱えています。

 そうした中で、個々人はどういう心がまえで生きていけばいいのか、「これまでどおり、なんとなくやっていれば、なんとかなる」というわけにはいかなくなっており、しっかりと人間観・価値観の基礎を築きなおす必要に迫られているように思います。

 そうした中で『自省録』は、幸不幸に心を惑わされることなくまっすぐに生きるための深い人生哲学を教えてくれる、今、学びなおすにふさわしい古典だと思われます。
また言うまでもなく、仏教は苦に満ちたこの世のあり方をしっかりと受け止めながらたくましく生き抜く智慧を教え続けてくれている日本人の精神的基盤です。

 今期は、この時代のきびしさにくじけない強い心を基礎から育むために、木曜日は「マルクス・アウレーリウス『自省録』を読む」、土曜日は「基本から仏教を学ぶ」という東西の古典に学ぶ講座を企画しました。みなさんのご参加をお待ちしております。


 木曜講座:「マルクス・アウレーリウス『自省録』を読む」

              於 サングラハ藤沢ミーティングルーム
               木曜日 18時45分~20時45分  全7回
           4月 21日 5月12日 26日 6月9日 23日 7月 7日 21日

古代ローマの哲学者皇帝マルクス・アウレーリウスの哲学的な日誌である『自省録』は、筆者の学生時代以来変わることのない座右の書でしたが、これまでまだ本格的に講義したことがありませんでした。

今、日本が「国難」といってもまったく大げさでない厳しい状況に置かれ、現実否認をし続けるのでないかぎり、もはや「ネアカ・ルンルン」はもちろん「終わりなき日常をまったりと生きる」ことさえ不可能になり、人間が宇宙の中で宇宙の一部として存在するという根底的な自覚を基に覚悟をもって真摯に生き死にするほかない――そういう人生哲学のあり方を「ストイック=ストア派的」と言います――という時代になっている中で、もっとも学びなおすにふさわしい古典ではないかと考え、みなさんと共有するための講義を行なうことにしました。

ご一緒に自分の人生哲学を深めていきましょう。

テキスト:マルクス・アウレーリウス『自省録』(神谷美恵子訳、岩波文庫)


土曜講座:「基本から仏教を学ぶ」

         於 サングラハ藤沢ミーティングルーム(JR、小田急藤沢徒歩5分)
          土曜日 13時30分~15時30分 全8回
          4月16日 23日 5月7日 21日 6月4日18日 7月2日 16日

タイトルどおり、仏教を基本から学びたい方のための講座です。ゴータマ・ブッダの教えから大乗仏教の空や唯識の思想まで仏教思想の流れを基本から学ぶことができます。
これまで仏教の学びを続けてこられた方にも、総復習的意味とさらに理解を深めていくという意味があると思います。

 594年、推古天皇―聖徳太子の意思表明(詔)「三宝興隆の詔」以来、仏教は日本人の心を育んできたにもかかわらず、明治維新と敗戦という2つの歴史的プロセスを経て、日本人は仏教を「過去の宗教」としてその意味を見失うような方向に歩んできてしまいましたが、実は仏教のエッセンスはむしろ「未来の霊性」とでもいうべき深さ・妥当性・普遍性をもっている、と筆者は考えています。

 今、仏教を基本から学びなおすことは、日本人としての自分のアイデンティティを深いところから再確立し自信をもって未来に向かうことにもつながるでしょう。

テキスト:『仏教とアドラー心理学――自我から覚りへ』(佼成出版社)

*講義の前に30分程度の坐禅を行ないます。坐禅のできる服装をご用意下さい。


●受講料は、一回当たり、一般3千5百円、会員3千円、専業主婦・無職・フリーター2千円、学生1千円 それぞれに×回数分です。
 都合で毎回出席が難しい方は、単発受講も可能です。

●いずれも、申し込み、問い合わせはサングラハ教育・心理研究所・岡野へ、
 ・E-mail: okano@smgrh. gr. jp または ・Fax: 0466-86-1824で。
 住所・氏名・年齢・性別・職業・電話番号・メールアドレス(できるだけ自宅・携帯とも)を明記してください。

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