今日から約1週間、年末年始、そして最終授業、サングラハ心理学研究所の新講座の開始等々で、結局なかなかはかどらなかったレポートの採点を集中的に行ないます。
学期末ごとにいつもそうなのですが、うれしいが大変、大変だがうれしいという凝縮した時間になることでしょう。
早速、1つ、典型的な感想を書いてくれた男子学生(文学部4年生)がいました。以下、掲載させていただきます。
唯識を授業で学ぶ前は、テキストをパラパラとめくり、そこに何やら難解そうな漢字が並んでいるのを見て、不安というよりも拒否の気持を抱いた。しかし、先生の話を聞き、テキストを読み進めていくうちに、そのわかりやすさ、理論としての完成度に驚かされた。
私は、正直、1年前つまり、宗教学を受講する前は、宗教というものに対し相当な偏見を持っていた。具体的には、心の弱い人間が頼るものだとか、仏教などはこの現代においては、古くさい考え方である、などである。
今、改めて自分の宗教に対する考えを思い浮かべてみて、宗教に対して持っていた偏見がほどんどなくなっていることに気付いた。
私は、自分の考え方というものが変わることが、とても嫌であった。だから、自分の考え方を守るために、他を否定し拒絶することが度々あった。しかし、今は以前ほど自分の考え方が変わることに嫌悪も不安も感じない。そのことだけを考えてみても、宗教学を通して宗教を1歩踏み込んで学んでよかったと思っている。
この学生も、宗教、仏教のエッセンスの持つ意味を、実にすんなりと理解してくれました。
そしてそのことが、自分の考え方にこだわらない心のやわらかさをももたらしているようです。
まさに「我が意を得たり」という感じの受け止め方をしてくれています。
不幸なことに、現代の日本人は自らの大切な伝統である仏教の意味を見失いつつありますが、秩序立てて伝えていくと、こういうふうに、しっかりと再発見してくれるのです。
ネット学生のみなさんも、コスモロジーと仏教の共通性、仏教の普遍性、日本人にとっての仏教の意味といったことを、しっかりと学んでくださっているようで、うれしいコメントをいただいています。
改めて、ありがとうございます。
続いて、アイデンティティ確立のための坂道をご一緒に登りましょう。
ところで、時々、私が何を参考にしてこういうふうに「空」を理解できるようになったのか、というご質問をいただきますので、ネタを明かしておきたいと思います。
まず、1つ大きいのは、京都学派宗教哲学の大家、西谷啓治先生の『宗教とは何か』(創文社版著作集第10巻)の空解釈から学ばせていただいたことです。
この本は、非常に深いと感じましたが、決してわかりやすくは書かれていません。
でも、ファイトのある方には、取り組むに値するものです。
それから、中村元先生の『龍樹』(現在、講談社学術文庫、私が読んだのは人類の知的遺産シリーズ)など、空・中観思想の研究書でした。
さらには、大乗仏典シリーズの『般若部経典』『八千頌般若経Ⅰ・Ⅱ』『龍樹論集』(いずれも現在、中公文庫)を繰り返し読んだことです。
もちろん、もっともっとたくさんの文献を読みましたが、主に参考になったのは上記のようなものです。
しかし、決定的なのは、やはり何といっても、禅定によるある種「じか」ともいうべき体験です。
それと唯識による理論的な理解が合わさることによって、自分なりの、確信をもてる空理解ができるようになりました。
理論的理解としては、これでほぼ大丈夫と思っていますが、もし指摘してくださる方があり、自分でもまちがっていたとわかったら、いつでも訂正するつもりでいます。
みなさんも、私の解釈が絶対に正しいと、悪い意味で信じないで、可能なかぎりご自分で確かめるようにしてください。
……というわけで、私にもみなさんにも、学びには終わりがありません。さらに続けていきましょう。
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こりゃ坊さんもうかうかしていられません(笑)
先生が「空」理解について学ばれた本、読んでみようと思います。
学びに終わりなし、果てしなく学んでいく。
まさに、菩薩の四つの誓願の一つ、「法門無量誓願学」ですね。
私も果てしなく学んでまいります。
それにしても、先生のブログにいろんな方のコメントが寄せられて私も嬉しく思います。
みなさん遠慮されていたようですね・・・。
私なんか遠慮なく、毎日コメントしてまいりましたが・・・(笑)
比較するのが無意味なことは承知しているつもりですが、しかし自分の学びの姿勢を省みて、はたしてどうか?
惰性でなく、日々更新の開かれた心であることができますように。
コメントをヒントにさせていただいて、四弘誓願の記事を書きました。有難うございます。
>type1974さん
ジェラシー・羨望には、健全なものと不健全なものがあるんでしたね。
若者たちの感受性に健全な羨望を感じましょう。そして、自分の感性を磨く励みにしましょう。