人間はコスモロジーなしには生きられない生き物であり、そういう意味でコスモロジーは人間の根本的なアイデンティティだと言ってもいいでしょう。
しかもそれは、幼児からの教育・環境・自分自身の解釈などによって埋め込まれてきた深層のアイデンティティですから、変化することにはしばしば不安や抵抗が伴います。
かつて、かなり深刻な心理的問題を抱えていて本人自身悩んでいるにもかかわらず、変化のプロセスで「自分が自分でなくなるみたいな気がして、変わりたくない」と報告してくれた学生がいました。
心の歪みや病いはしばしば当人の強固なアイデンティティにまで固着しており、だからこそたとえ肯定的変化であっても不安や抵抗が伴い、治癒が困難なのです。
しかしその不安や抵抗が乗り越えられると、程度はさまざまですがパーソナリティの肯定的な変化が生まれます。
以下のいくつかの感想は、そうした不安や抵抗が乗り越えられていくさまざまなパターンを示していて、とても興味深く参考になります。
H大学社会学部1年女子
先生の話を聞き、本を読むことで、私は、なんともいえない気持ちになった。
言葉ではうまく表現できないが、声に出すと「うわあー」といった感じだ。
これが、まさに世界観が変わるということなのかと思った。
最初の授業で世界観が変わるの意味がよくわからず、これからどうなるのか不安と期待をもって前期の授業に参加した。
私は、言葉で表現するのがとても苦手で「すごい」の一言しか、見つからない。
私は今まで生きている意味がわからず、とまどっていた時もあった。
だが、私は、宇宙と一体で周りのもの全て、すなわち宇宙によって生かされていて、私が生きているのには宇宙的な意味があるんだとわかった。
この講義をうけて本当によかった。
H大学社会学部1年男子
「死んだらおしまい、だから今を楽しくしよう。けど結果、死んだらおしまいなのは変わらない。」
このようなことを小学生から中学生の間、少しだが毎日のように考えていました。
高校生になると、考えるのを(『コスモロジーの心理学』内にあったように)やめろと友人から言われ、今まで快楽主義のみを自分の生きている目的・原動力としていました。
しかし快楽主義だけではもう持つことはできませんでした。
当面の生きている目的が受験であったため、だましだましやっていましたが、入試が終わると自分に自信が持てなくなっていました。
しかし現代科学のエッセンスを内包したこの考え方を知り、少しずつですが、ニヒリズム・エゴイズム・快楽主義からの脱出をすることができています。
H大学社会学部1年男子
自分は前回のレポートの感想に、「先生の授業を聞いていてもまだ自分の中には劇的な変化は起きていないし、これからも起きない気がする。起こせるものなら起こしてみろ」といった挑戦的な主旨の感想を書いたと思います。
ですが、今回の第2、第3章を読んで、自分の価値観にとても大きな変化がありました。
そのなかで特に新しい考え方であると思ったのが、宇宙の中で銀河などがまったく新しいものとして生まれたのではなく、宇宙の自己組織化の一環だということです。
これは「コペルニクス的」と言ってもいいほどの発想の転換だと思います。
貴重な体験をありがとうございました。後期もよろしくお願いします。
H大学社会学部1年男子
私は最初、ニヒリズム、エゴイズム、快楽主義がどういったものかの本質を理解しようとしなかった。
なぜなら知ってなにが変わるのか、と思っていたからである。
なので本書を読むのも抵抗があったが、読み進めていくうちになるほど! そういうことか! といった発見、納得があった。
特に「人間は宇宙の自己認識器官だ」という考え方は今までになく本当にすばらしいと思った。
このなんとも言えない心地よさを後輩にも味わってほしいと思う。
素晴らしい世界観をありがとうございました。
H大学社会学部1年男子
この本を読み始めた当初は正直「人生観が変わるわけがない」と思っていました。
でも本を読んでいくうちに少しずつですが自分の目の前に見える風景が変わってきたような気がします。
電車に乗っている人も街で通りすがる人もみんなもともとは1つのエネルギーであり、いわば親せきのようなものだと考えるとなんだかほっとしてうれしくなります。
私が純粋に感動したのは宇宙で最初に創発された原子である水素が137億年経った今の自分の体の多くの部分を構成しているということでした。
私がこの部分を読んで思わず鳥肌が立ちました。
自分には宇宙137億年の歴史が込められていると考えると本当に驚愕します。
私がこの本に対する前回のレポート提出の際にもっと自分に自信を持ちたい、持てるような人になりたいと書きました。
この本を読んでいてその解決の糸口をつかんだような気がします。
後期の授業も楽しみです。
生まれてからずっと20年近く教えこまれてきた深層のばらばらコスモロジーをつながりコスモロジーに完全に変換することは、必ずしも容易ではありません。
彼ら彼女らが体験した変化をどう維持し深めていくか、彼ら彼女らにとっても私にとっても大きな課題です。
始まるのはまだ少し先ですが、私も後期の授業を楽しみにしているところです。
孫崎享(まごさきうける)「戦後史の正体」創元社、読まれましたか?
僕はテレ朝のそもそも総研で紹介されていて購入しましたが、よく分からない戦後史がまさに霧が晴れるように分かる名著です。読まれていなかったら、ぜひ!取り急ぎご報告でした
元気ですね? 相変わらずよく学んでいるようですね。すばらしい!
『戦後史の正体』、読んでいません。しゅとうくんのご推薦ですから、時間ができたら読んでみようと思います。