心のガンを取る薬

2012年08月19日 | 心の教育

 H大学経済学部2年男子

 ここからは感想ですが、我々の世代とは意図せず、ニヒリズムが染みついてしまっているのだと思います。

 自分のこれまでの頭の中にあったものがニヒリズムだとも知らずに生きてきたような感じがします。

 今回この本を読むことで少なからず、生きることへのイメージが変わった気がします。

 染みついたもの全て取り除くのは難しいが、それでもかわるきっかけはつかめたと思います。


 H、大学経済学部1年男子

 私は、レポートを書いていて、現代科学のコスモロジーは、ニヒリズム、エゴイズム、快楽主義などの心に住みついたガンを取る薬のように思いました。

 私自身も教科書を読んでいて、心が洗われるのが実感できました。

 あと、先生の本は非常に読みやすく、すごく面白いんだなとすごく思いました。

 このレポートを書く前に日本の税金についてのレポートの本を読んでいたんですが、1時間で20ページも読めないでしかも分からなかったのに対して、先生の本は100ページくらい一気に読めて、しかも、心がスーッとした気持ちになったので、よりそう思いました。

 なので、夏休みに先生の他の本も読んでみたいと思っています。


 H大学経済学部1年男子

 僕ら人間は宇宙とつながっていて、どれ1つが欠けてしまっても生きていくことができない。

 窓の外に見える木が酸素を出し、それを僕ら人間が吸って生きている。

 そんな大切な木々は海から蒸発して出来た雲がもたらす雨によって、そして木々を支える地球という大地によって生かされている。

 地球だって元をたどれば、46億年前にできた宇宙の一部。

 全てはつながっている。僕も。かわいいあのこも。この紙も。

 今まで考えもしなかったことだけど、授業を受けていてなるほどと納得せざるを得ないぐらいにすっと頭に入っていった。

 21世紀の現代において、この考えを広めることはそんなに難しくないのではないかと思う。

 グローバル社会となり、インターネットに接続すればメール、ブログ、skype, twitter, facebook など様々なコミュニケーションツールがあり、これらを利用した考えの共有は実に有効な手段だと思う。

 ニーチェほどの天才がもがき苦しんだニヒリズムを、僕のような凡人が陥ることなく生きているのは、果たしてつきつめてないからなのか、それともこの宇宙とのつながりを簡単にではあるが感じることができたからなのか、実際よくわかりません。

 ただ、先生の授業を受けてこの宇宙とのつながりを考えるようになったことは間違いなく、非常にこの授業を選択してよかったなと思っています。

 先生の言っていたとおり、前期前半はちょっと暗い話がありましたが、後期から明るい話になるというので、さらに楽しみです。

 夏休みの中に4章、5章も読んでしまいたいと思います。



 H大学の授業タイトルは「現代社会と宗教」なのですが、実質的にはコスモロジー教育=コスモス・セラピーです。

 現代というよりは近代社会の標準的な思想は啓蒙主義的なヒューマニズムであり、物質還元主義的な科学主義であり、基本的には反宗教・無神論です。

 にもかかわらず、いわゆる先進国の社会からも宗教がまったく消えてしまう気配はありません。

 「それはなぜなのか。啓蒙が進んでいないからだ」というのが、かつて左翼大学と呼ばれたH大学の標準的な思想でもあるのでしょうが、私の考えはこのブログでも著者でも繰り返してきた通りやや異なっています。

 そして「思想の自由」を重んじる大学では、私のような考えも排除されることなく、自由な発言・講義が許されているのは幸いなことです。

 さて、私の考えでは、人間は言葉を使う動物であり、世界とは何か、人間とは何か、したがって人間は何をすべきなのか・何をしてはいけないのか等々を、言葉によって体系的に語っている「コスモロジー(世界観)」なしには生きられない存在です。

 そしてそのコスモロジーは、人間の人生に関する根本的な問い(ビッグ・クエスチョン)に答えてくれるものでなければなりません。

 例えば、人間は何のために生きているのか、なぜ自殺していはいけないのか、なぜ人を殺してはいけないのか、死んだらどうなるのかなどなどの問いの答えが必要なのです。

 過去の宗教は、近代から見ると確かに神話的・理性以前ですが、人間のそうした根源的な問いに答えるための本質的な試みであり、その時代の人々には納得できる答えであり心の支えでありえたのです。

 ところが近代科学のコスモロジーは、コスモロジーでありながら、人間の生きる意味や死についてきわめてドライというかクールというかニヒルというか、実に否定的な答えしか出すことができません。

 つまり、近代科学をつきつめるとニヒリズムに陥らざるをえないのです。

 近代社会でも宗教が消滅しない最大の理由は、啓蒙つまり近代主義的な教育が足りないからというより、近代的な思想では人間の根源的な問いに肯定的な答えを与えることができないからだ、と考えてまちがいないでしょう。

 しかし、まだ素直な幼い頃からずっとそういう近代主義的なパラダイムのもとに教育を受けさせられて・受けてきた若者たちの心には、当然のことながら近代的な考えが染みつけられ、その結果、半ば無意識的なニヒリズムも染みついてしまうのです。

 私の授業を受け、テキストの『コスモロジーの心理学』を読んだ学生たちは、そのことに気づき、さらにそこからの脱出の手がかりやきっかけを得てくれます。

 そしてさらに、そういう現代科学のコスモロジーを広く同世代と共有したいという気持ちを持ってくれるようです。

 私としては、ぜひ、若い世代だけでなくすべての世代が、科学的であり、現代的であり、そして何より人生に対して肯定的な答えを示してくれるコスモロジーを広く共有できるようになってほしいと願わずにはいられません。

 学生の評価によれば、このコスモロジーは「〔ニヒリズムという〕心のガンを取る薬」なのですから。


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