宝くじ殺人 2億円の一部借金返済 熊谷容疑者「首締め殺害」 2008年10月23日(木)16:25
岩手県一関市の無職、吉田寿子さんが2億円の宝くじに当せん後殺害された事件で、元新聞配達員、熊谷甚一容疑者(51)=殺人容疑で逮捕、同下=が当せん金の一部を借金返済に充てていたことが23日、大船渡署捜査本部の調べで分かった。
熊谷容疑者は電子部品製造会社を経営していたが、
平成17年末に破綻(はたん)。当せんを知っていたのは熊谷容疑者だけとみられ、捜査本部は当せん金をめぐるトラブルから殺害した可能性もあるとみて、動機や殺害の経緯などを調べる。 また、熊谷容疑者が「首を絞めて殺害した」と供述していることも判明した。
捜査本部は同日、熊谷容疑者を新幹線で警視庁から盛岡東署に移送。遺体が見つかった岩手県陸前高田市の現場検証も始め、午後には遺体を司法解剖する。
捜査本部によると、熊谷容疑者が以前住んでいた陸前高田市の家で、吉田さんの自宅からなくなっていた預金通帳や印鑑、家財道具などが見つかった。当せんした2億円はすでに換金されていたが、吉田さんの口座には大金が入金したり、送金されたりした記録はなかった。
一方で、吉田さんの周囲には家族も含め、当せんを知っていた関係者はほとんどいなかった。 吉田さんの遺体は、熊谷容疑者が電子部品製造会社の事務所として使用していた建物の敷地内から発見。
通帳などが見つかった民家はその隣にあった。
会社はその後倒産、熊谷容疑者は平成18年ごろに東京へ移り住み、同年9月からは東京都台東区の朝日新聞販売所で働いていた。
関係者によると、吉田さんは高校卒業後、岩手県一関市内の通信機器関係会社に勤務。地元の男性と結婚して2人の子供ができたが、数年前に離婚した後は会社近くにある平屋の一戸建てで1人暮らしをしていた。
その後、平成16年夏に2億円の宝くじに当せんした吉田さんは勤務先を退社したが、周囲は当せんを知らなかった。
一方、熊谷容疑者は吉田さんの勤務先に出入りしていた関係で、吉田さんとは10年以上前から顔見知りだったという。吉田さんの同僚だった女性(66)は「以前、吉田さんが熊谷容疑者と交際しているという話を聞いたことがあったので、今回の事件を聞いて、やっぱりそうだったのかと思った」と複雑な表情を浮かべた。
◇ ■「過去に聞いたことない」みずほ銀担当者
「宝くじに絡む殺人事件は過去に聞いたことがない」。
宝くじ販売を手がけるみずほ銀行の担当者は、2億円に当せんした吉田寿子さんが殺害された事件に衝撃を受けている。
同行宝くじ部によると、1000万円以上の高額当せんの場合、当せん金の受け渡しは宝くじの販売窓口ではなく、各支店で実施。手続きは、当せんの事実が漏れないよう当せん者を別室に案内して行っている。
その際、「その日から読む本 突然の幸福に戸惑わないために」という冊子を渡し、「落ち着いてから使い道を考えても遅くありません」と平静を保つよう呼び掛けているという。
冊子は55ページで、(1)当せん金はすぐに安全な場所に保管すること
(2)興奮せず落ち着くこと
(3)当せんしたことを外にあまり漏らさないこと
(4)使い道には注意すること-といった「アドバイス的な内容」(担当者)。だが、具体的なトラブルの例は示していないという。