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あみものと手仕事と旅の記録

『貧しい人々への友愛訪問』読書会のお知らせ

2018-01-26 21:56:57 | 『貧しい人々への友愛訪問』
昨年、共訳で出版した『貧しい人々への友愛訪問』。



今月末〜来月初めに、この本のゆるーーーーい読書会をしたいと思っています。

読書会というか、この本がいかに面白いかを(わたしが)語りたい、という会です。笑

日はまだ決めてなくて、ご希望いただける方とご相談して。

実は、この本、「ソーシャルワークの母」リッチモンドが書いたものですが、本書には「ソーシャルワーク」という単語は、なんと一度も出てこないのです。。

『貧しい人々への友愛訪問』を読むと、「ソーシャルワーク」という言葉がなかった時代から、人を援助するということは、タイヘンだったし難しかったんだなーと思います。
そして、大変さとか難しさを超えたやりがい、みたいなのは、今も昔も同じような気持ちになってくる。

そんなところが、本書の魅力なのですが、ひとりで読もうと思うとなかなか手強い本かもしれません(訳者の力不足という側面もありますが^_^;)。

積読にしておくのは、もったいないし、悲しい!
ということで、共訳者として裏も表も知り尽くしたワタクシが、本書の魅力をざっくばらんにお話します。

130年前の援助を垣間見てみると、「制度がない」「サービスが不十分」「人材が足りない」という悩みが吹き飛ぶかもしれませんよー?!

【こんな方に】
・買ったものの読めてない…
・ひとりで読める気がしない…
・読んだけど、意義がよくわからない

【こんなことをします】
・本書のバックグラウンド解説
・リッチモンドってこんな人です
・なぜ「専門職化」なのか:歴史的背景

【日時など】
日程:1月下旬〜2月初旬
場所:大阪市内
参加費:資料代程度

「参加してみたい」「詳しく知りたい」な方いらしたら、コメントまたはこちらから お願いいたします。
折り返しご連絡します。パソコン・携帯で、n4sisters [at]gmail.comからのメールが受信できるよう、設定をお願いいたします。

『貧しい人々への友愛訪問』オススメの読み方

2017-09-06 21:45:18 | 『貧しい人々への友愛訪問』
読者の方々が本書の魅力や理解を深めていただけるように、共訳書『貧しい人々への友愛訪問ー現代ソーシャルワークの原点ー』の内容・読みどころを少しずつご紹介しています。今回は、本書における「貧しい人々」とは誰か、について(個人的な解釈を多分に含みます。3名の訳者共通の見解ではないことをご了解ください)。

本書のオススメの読み方は、「翻訳にあたって」にも書いたように、第2章以降の読者の関心のあるテーマから読み進むこと、です。
そして、実は、やめていただきたい、という読み方もありまして、それは、

第一章を初めから理解しようとして読むこと、です。

なぜなら、この章の書き出しが、激しくわかりづらいから。。。

これはわたしが担当した章なのですが、要するに、リッチモンドはここで、

貧しい人々は、文学の歴史をみても、上流階級の主人公たちの刺身のツマ程度の扱いを受けてきた。それは、慈善の歴史でも同様で、慈善を施す金持ちの宗教心や自尊心・満足感だけが「誰を」「いつ」「どのように」救済するかの基準になってきたのではないか、しかし、文学同様に、貧しい人々の目線に立った慈善のあり方が模索・実践されるときにきている

ということが言いたい。

意訳すれば、もう少しこなれた文章にできるのですが、学術書である限り、できるだけ原文に忠実に訳しました。その結果、抽象的すぎて、何が言いたいのか一読ではつかみにくくなっています。ひとえに訳者の力不足ではあるのですが。。。

第1章は、本書を執筆するにあたってのリッチモンドの熱意というか「張り切り」が感じられる箇所でもあります。ロウアーミドル出身だったリッチモンドは、学歴は低いなりにも文学に親しむことで教養を身に着けた。低学歴であることを舐められてはいけない、というプライドと、そんな彼女だからこその洞察力をこの本を通して明らかにしていく!という気負いのようなものとが入り混じっている。そのあたりを「リッチモンドってば、なんだか一生懸命でかわいいなあ」とくらいの気持ちで読んでいただければ幸いです。

共訳書『貧しい人々への友愛訪問』(中央法規出版)、予約受付中です。
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ワークショップのご案内なども更新いたします。美味しいもの巡りの記事(たとえば、こちらの明石焼き)もご好評いただいています♪ 購読登録・読者登録していただけると、とても嬉しいです。

共訳『貧しい人々への友愛訪問』販売中です!

2017-09-02 19:39:03 | 『貧しい人々への友愛訪問』
ソーシャルワークの歴史的名著『貧しい人々への友愛訪問』(共訳)が、昨日(9月1日)販売開始となりました。

アマゾンは在庫を置いてない様子。。出版元の中央法規の販売ページからお買い求めいただけます。社会福祉・対人援助の専門書を扱っている本屋さんでも置いていただいていると思います。もし、どこかで見かけられたら、写真に撮って送ってくださると嬉しいです。明るい山吹色の表紙です。よろしくお願いいたします♪




深読み?!『貧しい人々への友愛訪問』②:「貧しい人々」とアメリカの矜持

2017-08-28 11:50:51 | 『貧しい人々への友愛訪問』
読者の方々が本書の魅力や理解を深めていただけるように、共訳書『貧しい人々への友愛訪問ー現代ソーシャルワークの原点ー』の内容・読みどころを少しずつご紹介しています。今回は、本書における「貧しい人々」とは誰か、について(個人的な解釈を多分に含みます。3名の訳者共通の見解ではないことをご了解ください)。

本書は、1880年台からアメリカ東海岸の都市ボルチモアの慈善組織協会で働いていたリッチモンドによって執筆されました。

本書に出てくる貧しい人々は、大きく分けて

1.アメリカの地方から大都市へ移住してきた人々
2.ヨーロッパからの移民

です。
彼らの職業、社会的地位、家庭での役割(夫または妻)、そして人種はいろいろですが、本書で慈善の対象として登場する貧困層は、おおむね上記のとおりです。

とりわけ、「2のヨーロッパからの移民」についての記述からは、移民に対してアメリカ市民としての役割を強く要請するような”圧迫感”があります。この圧迫感が、当時のアメリカ社会全体のものだったのか、リッチモンドの個人的な思いだったのか、明確に判別することはむずかしいですが、要するに「貧しい農民であることがイヤでヨーロッパからアメリカに来たのかもしれなけれど、タダでご飯は食べられませんよ。自由と民主主義アメリカに来たからには、アタマの硬いヨーロッパのままでいてもらっては困ります、わたしたちのやり方に従ってもらいます」という時代的な雰囲気があったことは確かだと思わます。

この、アメリカ式のルールに乗れないのならばここにいなくてよい的な考え方は、わたしが1996年に初めてアメリカでホームステイしたときに感じたこととすごく似ています。1800年台から脈々と引き継がれる、世界のどこにもない民主主義の実験場としてのアメリカの矜持。本書で、この側面に触れるとき、アメリカ・ファーストをゴリ押しする21世紀のアメリカの原点を垣間見る気がするのです。

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深読み?!『貧しい人々への友愛訪問』①:原著者リッチモンドの生い立ちと本書の魅力

2017-08-26 18:35:43 | 『貧しい人々への友愛訪問』
読者の方々が本書の魅力や理解を深めていただけるように、共訳書『貧しい人々への友愛訪問ー現代ソーシャルワークの原点ー』の内容・読みどころを少しずつご紹介したいと思います(個人的な解釈を含みます。3名の訳者共通の見解ではないことをご了解ください)。今回は、原著者リッチモンドの生い立ち・人となりについて。

ソーシャルワークの母・メアリー・エレン・リッチモンドは、1861年アメリカ北中部イリノイ州で生まれ、その後東海岸の都市ボルチモアで育ちました。幼いころから生涯を通じて、読書が趣味でした。早くに両親を病気で亡くし、祖母に育てられました。教育熱心ではあったものの、経済的に裕福な家庭環境ではなかったようで、高校卒業後、16歳で働き始めました。同時代に活躍したジェーン・アダムズはいわゆる良家の女子でしたが、リッチモンドは中産階級出身の叩き上げだったのです。

この出自と生育歴つまり、祖母や叔母に精神的に支えられながら低学歴で社会に出て自活し、大病を困難を克服し、読書など知的な趣味をとおして培った教養・知性をもって知識階級の多かった慈善事業の大物となったことこそが、リッチモンドをリッチモンドたらしめている、とわたしは感じています。このことを理解して読むと、本書には、リッチモンドの「矜持」がビシバシと伝わってくる箇所がたくさんあります。

たとえば、

・文学少女としての読書歴・文学への造詣の深さを披瀝するかのような、第1章の書き出し。
・第4章「主婦」には、生涯独身を通したリッチモンドの、結婚に縛られる主婦への同情と苛立ちがチラチラと。
・知識階級のスノッブへの反骨精神がみなぎる第8章「レクリエーション」…

などなど。

深読みしすぎ?!なのかもしれませんが、「内向的でちょっと強気な正義感あふれる女性・メアリー」が浮かび上がってきて、なかなかおもしろいと思うのです。歴史的事実の根っこにははいつも人がいて、その人を介してわたしたちにつながってきている…そんなところもお楽しみいただければ、嬉しいです。

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