WTO加盟10年、中日関係の「怪離」現象
人民日報が日中関係について述べています。
http://j.people.com.cn/94474/7667360.htmlからの引用です。
中国の世界貿易機関(WTO)加盟から10年で中日は経済的相互依存を強めた。だがこれは両国関係の安全を保障するものとはなり得ないようだ。経済関係が緊密化する一方で、政治的には時々摩擦が生じており、これは中日関係における「怪離」現象となっている。(文:王新生・北京大学歴史学部教授。「日本新華僑報」掲載)
WTO加盟前、日本企業を含む外国企業の対中投資における最大の懸念は、中国の政策が安定性に欠けていることだった。投資した途端に政策が変わることを、多くの企業が恐れていた。だが日本企業は中国市場に関心がなかったわけではない。2001年より前に、トヨタは中国で20年に及ぶ調査を行ったが、一銭も投資しなかった。WTO加盟によって多くの企業が安心した。政策が変わった場合に、白黒を決めてもらう場所ができたのだ。
中国のWTO加盟は中日の経済・貿易関係を着実に促進したと言えよう。
その最も顕著な例が自動車業界だ。WTO加盟後、日本の自動車業界の投資が中国に流れ込み、これは鉄鋼業、造船業、運輸業など関連産業を先導した。中国自動車産業は発展が後れていたため、部品の大部分は日本から調達された。特にエンジンや車体鋼板など重要部品はそうだ。また、中国の海運の80%は外国に依存しており、これも日本の関連産業を牽引した。
2001-2004年の間、日本の対外輸出の伸びは平均4.5%に過ぎなかったが、対中輸出の伸びは平均25.3%に達した。対外直接投資の割合も1990年の0.6%から2004年には12.8%に達した。「中国特需」に基づく輸出と設備投資の大幅な増加によって、2002年2月から71カ月の長きに及ぶ好景気がもたらされたのだ。皮肉なことに、これは中日の政治関係が最も冷え込んだ小泉政権時代にあたる。
中日関係の「政冷経熱」は一種の「怪離」現象となったようだ。
緊密な経済関係が両国関係の決裂を防ぐ役割を果たしていることは間違いない。両国がこのように緊密な経済・貿易関係を保っていれば、両国関係の決裂を望む者はいない。
その一方で、緊密な経済・貿易関係は両国間の政治的不信感を募らせもしている。日本は中国との経済関係が「ブーメラン効果」をもたらすことを非常に懸念している。ブーメランはオーストラリア先住民の狩猟用具で、投げると自動的に手元に戻ってくる。日本は中国に技術を渡した結果、逆に市場を占有され、損することを懸念しているのだ。
東日本大地震後、日本は研究開発拠点の一部海外移転や、オーストラリアやインドとの開発協力を始めたが、中国は意識的に避けている。日本は中国の急速な経済成長に「巻き込まれる」ことも懸念している。これは政治関係における摩擦の原因ともなっている。
中国のWTO加盟から10年、中日貿易の変化と課題
http://j.people.com.cn/94476/7667050.html
中国のWTO加盟後、中日の経済提携に大きな変化がもたらされた。この10年間で、両国の経済貿易関係の健全な発展についての課題も見えてきた。日本新華僑報網が報じた。
中日両国は密接な経済関係を保っている。1972年の国交正常化前、貿易関係は一定の発展を実現していた。この40年間、両国の政治・外交関係は不安定であったが、経済貿易関係は安定的かつ健康的な発展を維持してきた。
1979-2008年の30年間、中日経済貿易提携には主に3つの支柱があった。1つ目は二国間貿易、2つ目は日本の中国への直接投資(その後、中国の日本への投資も含む)、3つ目は日本の中国に対するODAである。中国のWTO加盟前、この3つの支柱により発展のバランスを保っていた。
2001年に中国がWTOに加盟すると、中日経済貿易関係に飛躍的な発展が訪れた。2001年の中日輸出入総額は831億7000万ドルであったが、2002年には1018億9000万ドルに急増した。その後は毎年高い成長率を維持し、2011年には3300億ドルを実現する見通しだ。WTO加盟後10年間で、中日貿易の規模は約4倍に増えた。この驚異的な成長率は、成熟段階に入った中日貿易にとって容易なことではない。
中国がWTOに加盟する前の2000年、日本の中国に対する直接投資額は29億ドルのみだった。2001年に中国がWTOに加盟すると、49%増の43億5000万ドルに達した。これが2005年になると、65億3000万ドルとなった。中国の対日投資も急増し、投資額は累積で20億ドルを超えた。
中国のWTO加盟が中日経済貿易関係にもたらした影響には、量的変化のみならず、質的変化も含まれる。
1、中国の日本向け輸出の貿易構造が改善しつつある。始めの低水準の製品から、加工品や高級製品に到るまで、多くの分野で日本と相互競争を展開している。2、中日双方の経済依存関係に逆転が生じた。WTO加盟前の2000年、中国の貿易総額に占める日本との貿易額は17.5%であったが、現在は約10%となっている。一方同じ時期に、日本の貿易総額に占める中国との貿易額は、8%から21%になった。3、中日欧米の三角貿易構造の形成。すなわち、中国が日本から高級部品を輸入し組み立てを行い、欧米の末端市場に販売するという構造だ。中日経済貿易提携は、世界経済と一体化している。
中国のWTO加盟後、日本の中国に対する直接投資構造も改善を続けている。まずは鋼鉄、石油化学、家電、一般製造業から、そして自動車、IT、省エネ・環境保護、ハイテク技術分野へと移り変わり、構造の改善とレベルアップが継続されている。
中国のWTO加盟後10年間、両国の経済貿易提携の健全な発展が中国経済の発展を促すと同時に日本にも利益をもたらし、互恵関係を築いた。中国経済の高度発展と「中国特需」が、日本経済復興の原動力となる。しかし健全に発展を続けてきた中日経済貿易提携にも、一定の課題が存在する。
1、中日貿易に「高位迷走」が見られる。「高位迷走」とは、この10年間の日中二国間貿易の平均成長率は約17%で低くない数値だが、中国の対外貿易総額の成長率と比較すると大きく下回っており、「迷走」の状態に陥っていることを指す。中国の対外貿易の全体的な成長ペースが、中日二国間貿易の成長率を上回っているため、全体に占める二国間貿易の比率が低下を続けている。
2、10年間の二国間貿易のうち、中国側が常に輸入超過であった。2010年の中国の対日貿易赤字額は556億ドルに達した。2001-2010年、中国側の累積貿易赤字額は2400億ドル以上に達した。同じ時期に、中国は対米貿易で輸出超過となっていたが、実質的には日本が対米貿易の黒字を中国側に転嫁した形だ。これを長期的に続ければ、中日貿易の健全な発展に対して不利である。
3、中日両国の貿易摩擦が絶えない。2001年、日本は中国の3種の農産物に対して「一時制限」を設け、それに続き農産物輸入リスト制度等の厳しい制限を設けた。日本によるさまざまな「安全の障壁」、「技術の障壁」が、中国製品の進出を妨げている。
4、日本の対中国投資が不安定。中国WTO加盟後の関連政策の支持を受け、日本の対中国直接投資額が急増した。特に自動車業界の対中国投資額は、2003-2005年に急増した。これはまた、2006-2007年の対中国投資の急減を招いた。2006年は30%減、2007年は22%減となった。
5、日本が中国に対して、投資を十分に開放していない。日本側は世界各国の対日投資を歓迎すると表明し、小泉元首相の頃には「外資誘致倍増計画」を打ち出していた。しかし日本市場は閉鎖的で、日本特有の「経営慣行」および中国企業に対する偏見等により、中国企業の対日投資が順調に進んでいない。(作者:中国社会科学研究院日本研究所経済研究室主任 翻訳YF)
人民日報が日中関係について述べています。
http://j.people.com.cn/94474/7667360.htmlからの引用です。
中国の世界貿易機関(WTO)加盟から10年で中日は経済的相互依存を強めた。だがこれは両国関係の安全を保障するものとはなり得ないようだ。経済関係が緊密化する一方で、政治的には時々摩擦が生じており、これは中日関係における「怪離」現象となっている。(文:王新生・北京大学歴史学部教授。「日本新華僑報」掲載)
WTO加盟前、日本企業を含む外国企業の対中投資における最大の懸念は、中国の政策が安定性に欠けていることだった。投資した途端に政策が変わることを、多くの企業が恐れていた。だが日本企業は中国市場に関心がなかったわけではない。2001年より前に、トヨタは中国で20年に及ぶ調査を行ったが、一銭も投資しなかった。WTO加盟によって多くの企業が安心した。政策が変わった場合に、白黒を決めてもらう場所ができたのだ。
中国のWTO加盟は中日の経済・貿易関係を着実に促進したと言えよう。
その最も顕著な例が自動車業界だ。WTO加盟後、日本の自動車業界の投資が中国に流れ込み、これは鉄鋼業、造船業、運輸業など関連産業を先導した。中国自動車産業は発展が後れていたため、部品の大部分は日本から調達された。特にエンジンや車体鋼板など重要部品はそうだ。また、中国の海運の80%は外国に依存しており、これも日本の関連産業を牽引した。
2001-2004年の間、日本の対外輸出の伸びは平均4.5%に過ぎなかったが、対中輸出の伸びは平均25.3%に達した。対外直接投資の割合も1990年の0.6%から2004年には12.8%に達した。「中国特需」に基づく輸出と設備投資の大幅な増加によって、2002年2月から71カ月の長きに及ぶ好景気がもたらされたのだ。皮肉なことに、これは中日の政治関係が最も冷え込んだ小泉政権時代にあたる。
中日関係の「政冷経熱」は一種の「怪離」現象となったようだ。
緊密な経済関係が両国関係の決裂を防ぐ役割を果たしていることは間違いない。両国がこのように緊密な経済・貿易関係を保っていれば、両国関係の決裂を望む者はいない。
その一方で、緊密な経済・貿易関係は両国間の政治的不信感を募らせもしている。日本は中国との経済関係が「ブーメラン効果」をもたらすことを非常に懸念している。ブーメランはオーストラリア先住民の狩猟用具で、投げると自動的に手元に戻ってくる。日本は中国に技術を渡した結果、逆に市場を占有され、損することを懸念しているのだ。
東日本大地震後、日本は研究開発拠点の一部海外移転や、オーストラリアやインドとの開発協力を始めたが、中国は意識的に避けている。日本は中国の急速な経済成長に「巻き込まれる」ことも懸念している。これは政治関係における摩擦の原因ともなっている。
中国のWTO加盟から10年、中日貿易の変化と課題
http://j.people.com.cn/94476/7667050.html
中国のWTO加盟後、中日の経済提携に大きな変化がもたらされた。この10年間で、両国の経済貿易関係の健全な発展についての課題も見えてきた。日本新華僑報網が報じた。
中日両国は密接な経済関係を保っている。1972年の国交正常化前、貿易関係は一定の発展を実現していた。この40年間、両国の政治・外交関係は不安定であったが、経済貿易関係は安定的かつ健康的な発展を維持してきた。
1979-2008年の30年間、中日経済貿易提携には主に3つの支柱があった。1つ目は二国間貿易、2つ目は日本の中国への直接投資(その後、中国の日本への投資も含む)、3つ目は日本の中国に対するODAである。中国のWTO加盟前、この3つの支柱により発展のバランスを保っていた。
2001年に中国がWTOに加盟すると、中日経済貿易関係に飛躍的な発展が訪れた。2001年の中日輸出入総額は831億7000万ドルであったが、2002年には1018億9000万ドルに急増した。その後は毎年高い成長率を維持し、2011年には3300億ドルを実現する見通しだ。WTO加盟後10年間で、中日貿易の規模は約4倍に増えた。この驚異的な成長率は、成熟段階に入った中日貿易にとって容易なことではない。
中国がWTOに加盟する前の2000年、日本の中国に対する直接投資額は29億ドルのみだった。2001年に中国がWTOに加盟すると、49%増の43億5000万ドルに達した。これが2005年になると、65億3000万ドルとなった。中国の対日投資も急増し、投資額は累積で20億ドルを超えた。
中国のWTO加盟が中日経済貿易関係にもたらした影響には、量的変化のみならず、質的変化も含まれる。
1、中国の日本向け輸出の貿易構造が改善しつつある。始めの低水準の製品から、加工品や高級製品に到るまで、多くの分野で日本と相互競争を展開している。2、中日双方の経済依存関係に逆転が生じた。WTO加盟前の2000年、中国の貿易総額に占める日本との貿易額は17.5%であったが、現在は約10%となっている。一方同じ時期に、日本の貿易総額に占める中国との貿易額は、8%から21%になった。3、中日欧米の三角貿易構造の形成。すなわち、中国が日本から高級部品を輸入し組み立てを行い、欧米の末端市場に販売するという構造だ。中日経済貿易提携は、世界経済と一体化している。
中国のWTO加盟後、日本の中国に対する直接投資構造も改善を続けている。まずは鋼鉄、石油化学、家電、一般製造業から、そして自動車、IT、省エネ・環境保護、ハイテク技術分野へと移り変わり、構造の改善とレベルアップが継続されている。
中国のWTO加盟後10年間、両国の経済貿易提携の健全な発展が中国経済の発展を促すと同時に日本にも利益をもたらし、互恵関係を築いた。中国経済の高度発展と「中国特需」が、日本経済復興の原動力となる。しかし健全に発展を続けてきた中日経済貿易提携にも、一定の課題が存在する。
1、中日貿易に「高位迷走」が見られる。「高位迷走」とは、この10年間の日中二国間貿易の平均成長率は約17%で低くない数値だが、中国の対外貿易総額の成長率と比較すると大きく下回っており、「迷走」の状態に陥っていることを指す。中国の対外貿易の全体的な成長ペースが、中日二国間貿易の成長率を上回っているため、全体に占める二国間貿易の比率が低下を続けている。
2、10年間の二国間貿易のうち、中国側が常に輸入超過であった。2010年の中国の対日貿易赤字額は556億ドルに達した。2001-2010年、中国側の累積貿易赤字額は2400億ドル以上に達した。同じ時期に、中国は対米貿易で輸出超過となっていたが、実質的には日本が対米貿易の黒字を中国側に転嫁した形だ。これを長期的に続ければ、中日貿易の健全な発展に対して不利である。
3、中日両国の貿易摩擦が絶えない。2001年、日本は中国の3種の農産物に対して「一時制限」を設け、それに続き農産物輸入リスト制度等の厳しい制限を設けた。日本によるさまざまな「安全の障壁」、「技術の障壁」が、中国製品の進出を妨げている。
4、日本の対中国投資が不安定。中国WTO加盟後の関連政策の支持を受け、日本の対中国直接投資額が急増した。特に自動車業界の対中国投資額は、2003-2005年に急増した。これはまた、2006-2007年の対中国投資の急減を招いた。2006年は30%減、2007年は22%減となった。
5、日本が中国に対して、投資を十分に開放していない。日本側は世界各国の対日投資を歓迎すると表明し、小泉元首相の頃には「外資誘致倍増計画」を打ち出していた。しかし日本市場は閉鎖的で、日本特有の「経営慣行」および中国企業に対する偏見等により、中国企業の対日投資が順調に進んでいない。(作者:中国社会科学研究院日本研究所経済研究室主任 翻訳YF)