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河津聖恵のブログ 「詩空間」

2018-11-29 05:48:28 | お気に入り
河津聖恵のブログ 「詩空間」 を紹介します。


 http://shikukan.hatenablog.com/

 詩集の紹介や旅行記など、繊細な言葉の世界を堪能してみましょう。

私が選んだ鮎川信夫の詩2篇

(1)「詩がきみをー石原吉郎の霊に」



あのとき

きみのいう断念の意味を

うかつにも

ぼくはとりちがえていた

生きるのを断念するのは

たやすいことだときみが言ったとき

ぼくはぼんやりしていた

断念とは

馬と蹄鉄の関係だ

と教えられても

レトリックがうまいなと思っただけで

蹄鉄が馬を終るとは

どういうことか

ついに深く考えずじまいであった

酒杯をかたむける

そのかたむけかたにも

罪びとのやさしさがあって

それがきみの作法だった

ぼくはうっとりと

自然にたいして有罪でない人間はいない

というきみの議論にききほれたものだ

きみにとって詩は

残された唯一の道だった

いつかみずからも

美しい風景になりたいという

ひたすらなねがいで

許されるかぎりどこまでも

追いもとめなければならない

断念の最後の対象だった

そしてきみが

詩を終ったと感じたのは

やわらかい手のひらで

光りのつぶをひろうように

北條や足利の美しい光景をすくってみせたときだろう

ぞっとするような詩を書き終えることで

断念の意味は果されたのだ

苦しんでまで詩を書こうとは思わない

きみにとって

もはや暁紅をかいまみるまでもなかった

死はやすらかな眠りであったろう

ぼくはきみに倣って

「きみが詩を」ではなく

詩がきみを

こんなにも早く終えたことを悲しむ



(2)「詩法」



生活とか歌にちぢこまってしまわぬ

純粋で新鮮な嘘となれ

多くの国人と語って同時に

言葉なき存在となれ



くるしい黙禱を

水漬く兵士の納骨堂に

きらめく感謝を

最も遠い天の梢へ



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