伊原五郎兵衛／ものづくり中部の革新者たちⅢ

2022-10-06 06:40:48 | ものづくり・まちづくり

ものづくり中部の革新者たちⅢ　より　伊原五郎兵衛を紹介します。

去る2022（令和４）年９月10日（土）に名古屋都市センター（金山南ビル内）　11階「まちづくり広場・企画展示コーナー」で行われた、第17回パネル展での学びを振り返ります。

ここから　http://csih.sakura.ne.jp/panerutenn.html

今回は、卓越せる識見と手腕　-伊那谷の電源開発と伊那電気鉄道の創始-

伊原五郎兵衛 (1880~1952)

卓越せる識見と手腕

-伊那谷の電源開発と伊那電気鉄道の創始-

■生い立ち

伊原五郎兵衛は、 1880 (明治13) 年、長野県下伊那郡飯田町番匠町(現飯田市通り1丁目) 漆器店近江屋の父伊原五郎兵衛と母志のの三男恒次として

生まれる。長野県尋常中学校飯田支校 (現飯田高等学校)、松本中学校(現松本深志高校) 第一高等学校を経て1906(明治39)年に東京帝国大学法科を

卒業した。

1892 (明治25)年、政府は中央線敷設を計画。その西線を巡って、木曽谷経由か伊那谷経由かが問題となるも、様々な理由で木曽谷経由に決定した。伊那谷の人たちは、辰野飯田間の私設鉄道を計画した。父伊原五郎兵衛はその発起人の一人として奔走するが1906(明治39)年に急逝。家督相続人だっ

た二男も日露戦争で戦死していたため、恒次が家業を継ぎ五郎兵衛を襲名、電気鉄道建設の意思も引き継ぎ、 1907(明治40)年伊那電車軌道(株)の創立の発起人の一人として活躍することとなる。

■伊那電気鉄道 (株) の経営

伊那電車軌道 (株)は1907(明治40)年9月に創立した。伊原は先頭に立って用地買収と軌道工事、発電所建設に取り掛かる。松川第三、第四発電所、諏訪に低川発電所の建設、長野電灯伊那支社 (1915年)、飯田電灯 (1918年)の買収を行い伊那地方での一般へ配電も行った。

電車の運転を辰野・飯田間66㌔ (後に天竜峡80㌔まで延伸)に目指し、当初は辻新次が社長を勤める諏訪電気(株)から電気の供給を受けた。 1909(明治42) 年12月辰野・伊那松島が開通し長野県初の電車となる。 1923(大正12)年8月飯田まで開通し、会社名を伊那電気鉄道 (株)に変更、 1927(昭和2)年12月天竜峡まで全線開通した。 1942(昭和17)年、豊川鉄道、鳳来寺鉄道、三信鉄道とともに国鉄への移管が決定され、1943(昭和18)年に国鉄飯田線となる。

伊原は、太平洋側まで延伸させることを目標に掲げ、 1928(昭和3)年第16回衆議院選挙で政友会代議士として当選したが、政界は水に合わず1回で引退する。

また経営難に陥った鉄道、電灯会社の建て直しに協力を惜しまず、伊原が関わった会社は筑摩電気鉄道初め、三河鉄道、笠原鉄道武州鉄道、天竜川電力、諏訪電気など47社に及んだという。

1952(昭和27)年、飯田線の功労者として、「伊原五郎兵衛頌徳碑」が飯田駅前に建立された。「辰野天竜峡八十粁に亘る電気鉄道を完成せり、更に三信鉄道敷設の難工事に尽力し、かくて表裏日本短絡通路を見るにいたりたるすべてこれ氏の卓越せる識見と手腕による」と功績が刻まれている。頌徳碑の建立から3か月後の1952年4月に伊原は72歳の生涯を閉じた。

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