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どんどん潰れていく。
寂しい。
愛想の悪い切符売り場のおばちゃん。
売店のおばちゃん。
なつかしい。
あのうんざりした顔が見たい。
「キングコング」はギラーミン版。
ジェシカ・ラングがエロくて綺麗だった。サム・シェパードと結婚した時は一番納得できるカップルだった。
一人で初めて観に行った映画館は「新宿プラザ」今はもうない。
「ロッキー」「ロッキーⅡ」同時上映だった。
はまった。
小学6年生だった。
もう両親とは一緒に行かなくなった。
ずっと一人。
彼女がいる時もいない時も一人でせっせと映画館へ。
「ぴあ」最新号を片手に。
「新宿シネマスクエアとうきゅう」という映画館では「フラッシュダンス」「愛と青春の旅立ち」同時上映を一人でいく。
日曜の午前、最初の上映だというのにカップルで込み合っていた。デートムービーとか知らない。
監督が好きで観に行っただけ。カップルとカップルの間に挟まれて、というかすき間に入り込んだ一人の彼女いない高校生。
でも映画は暗くなっちゃえば独り者も関係ない。
あの時は一番映画が面白く観れていた。
観終わったらカレーショップで昼食べて新宿紀伊國屋書店や三省堂書店へ行く。そして電車にゆれて帰る。
孤独な一日だ。楽しかった。
カップルはデートの充実を味付ける一部分だけどオレはその一日のすべてがその上映時間だ。
だから寝るまでその映画のことをずっと思い返して考えていた。ノートに場面をイラストで描いたり感想文をちょこっと書いたり。
そんなオレを見ていて面白そうだと思い始めた奴らが一緒についてくるようになった。
オールナイト上映も名画座めくりもそんな連中と行くようになった。
そんな奴らも大学や就職や引越なのでいなくなる。
またひとりで観に行くようになる。
映画館は映画を観に行くところ。
映画館がなくなっていく。
寄り添えるところがなくなっていく。