そこは
アメリカの田舎町。
清潔で小さな食堂。ありふれたダイナー。でも町一番のアッパルパイを出す食堂。
窓際の隅のテーブルで二人の中年男性が楽しそうに話しこんでいる。
一人の少年が母親とお昼をとっていた。
いつもの光景。
いつもと同じ退屈な光景。
でも、いつもと違うと少年は感じた。
隅の目立たないその中年男性に目が釘付けに。
千載一遇のチャンス。
即座に使い込んだノートとペンを持ってそのテーブルへ。
こちらに近づいてきた少年に目が留まったハンサムな男性が自分にサインをねだりに来たと分かってノートとペンを
受けと取ろうとした。
しかし少年は素通りして、向かいの太った髭もじゃの男性に渡した。
少年の目は輝いていた。「ミスター。お話し中大変失礼しました。サインを頂けませんでしょうか。」
髭もじゃの太った男は素敵な笑顔でサインをしてあげた。
その男の名は、スティーブン・キング。
そして向かいの席で所在なげに苦笑していたハンサムな男は、ブルース・スプリングスティーン。