★ 高浜原発再稼働差し止め訴訟、福井地栽で勝利
福井地裁は14日、運転を停止している関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県高浜町)の再稼働の差し止めを関電に命じる仮処分を決定した。
樋口英明裁判長は「原子力規制委員会が策定した新規制基準は緩やかにすぎて合理性を欠き、適合しても安全性は確保されていない」とし、福井など4府県の住民9人の申し立てを認めた。
再稼働を含め、原発の運転を差し止める仮処分決定は初めて。関電は決定を不服として同地裁に異議や執行停止を申し立てる。
仮処分決定は訴訟の判決と異なり、切迫した危険を止めるため直ちに効力が生じる。
高浜3、4号機は2月、東京電力福島第一原発事故を受けて施行された新規制基準を満たすとし、原子力規制委員会の安全審査に全国2例目で合格した。
関電は11月までの再稼働を目指すが、今後の司法手続きで判断が変わるまで運転を再開できない。
決定はまず原発の耐震設計の基本になる基準地震動(想定される最大規模の地震の揺れ)の数値の信頼性を検討。
関電は700ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)とし、規制委も安全審査の合格証にあたる「審査書」でこれを認めた。
決定は、2005年以降の地震のうち全国4原発で5回、想定の地震動を超えたことを重視し、「高浜の想定だけが信頼に値する根拠はない」と指摘。
基準地震動は発生しうる一番大きな揺れの値ではないとする専門家の意見も挙げ、「理論面でも信頼性を失っている」とした。
また、700ガル未満の地震でも、外部電源が断たれたり、給水ポンプが壊れたりして冷却機能が失われ、炉心損傷の危険があるとした。
決定は新規制基準の妥当性にも言及。
高浜3、4号機の脆弱(ぜいじゃく)性を解消するには〈1〉基準地震動の策定基準を見直し、想定を引き上げ、根本的な耐震工事をする 〈2〉外部電源と給水設備の耐震性を上げる――などの対策が必要だが、新基準は規制対象にしていないとした。
さらに、事故時の対応場所になる免震重要棟の設置に猶予期間があることについても「地震は人間の計画、意図とは無関係に起きる。
規制方法に合理性がないのは自明」と批判。
「(新基準は)深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえる厳格な内容にすべきだ」との見解を示した。
そのうえで「住民らの人格権が侵害される具体的危険性がある」として差し止めの必要性を認めた。
関電は異議のほか、決定の効力を止める執行停止を同地裁に申し立てることができ、異議審の結論に不服があれば名古屋高裁金沢支部に抗告できる。
決定後、「主張を理解いただけず、誠に遺憾で到底承服できない」とのコメントを出した。
樋口裁判長は昨年5月にも関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の訴訟の判決で再稼働差し止めを命じた。
この訴訟は名古屋高裁金沢支部で控訴審中。今月1日付で名古屋家裁に異動したが、継続して審理するため福井地裁判事職務代行の辞令を受け、今回の仮処分決定を担当した。
仮処分は福井、大阪、京都、兵庫4府県の住民9人が昨年12月に申し立てた。
◆高浜原発仮処分決定の骨子◆
▽全国4原発で想定の地震動を超えた地震が起きており、関西電力が想定する基準地震動は信頼に値する根拠が見いだせない
▽基準地震動を超える地震が起きれば、施設が破損し、炉心損傷に至る危険がある
▽基準地震動を下回る地震でも、冷却機能喪失による炉心損傷に至る切迫した危険がある
▽新規制基準は緩やかにすぎ、適合しても原発の安全性は確保されず、住民の人格権を侵害する具体的な危険が認められる