いま『”きよのさん”と歩く江戸六百里』(金子敦子著)を読んでいます。この本はきよのさんが書いた旅日記を著者が読み下し、さらに詳しい解説加えた力作です。時代は江戸後期、きよのさんは山形鶴岡の豪商の内儀、三井清野。文化十四年(1817)3月23日(陽暦5月7日)に鶴岡を発ち、その年の7月に戻るまでの総距離は600里、2340㎞の大旅行をしました。そのなかの鎌倉観光の部分に着目してみました。
きよのさん一行は、東海道の保土ヶ谷宿から景勝地金沢八景を訪ね、鎌倉へ。最初は鶴岡八幡宮。
大きなる石の鳥居あり。それより石灯篭あり。又鳥居あり。大門ある也。右大臣・左大臣あり。八幡宮の御堂あり。末社多くあり。堂の後ろをぐるりとまわれば、頼朝公の御像、又その頃の大将の鎧・兜、政子の御手道具、それぞれの宝物あり。六文ずつにて開帳。右の方に頼朝の屋敷。北条の屋敷に堂あり。又女石あり。よくよく見べし。それから大仏見物。しょく山大仏殿。大仏に参り、六文にて腹の内に入り見べし。内に様々の御仏あり。鎌倉より百文にて案内頼むべし。江の島まで。鎌倉大観音様十二文にて開帳。御丈三十三尺、樟の木の由。日本二体の大観音なるよしにて、様々のいわれあり。参るべし。それより五百文にて舟に乗る。江の島めぐり・・・。
鎌倉ではガイドを百文で雇い鶴岡八幡宮、大仏、長谷観音の三か所を見学しています。ガイドの案内がよく、きよのさんの記憶に残ったのか、ほかの観光地の見物に比べ記述が具体的な気がしました。また五百文という代金を払い江の島まで舟で行ったのは意外でした。江戸時代の1文は、現在の価値で100円位と考えていますので、ご開帳料金が一人600円から1200円。ガイド料が10000円、舟代が50000円になります。ほかに旅籠代や料理の値段、酒代などの記載がありましたが、今の価格と比べると結構高いという印象です。逆にデフレ下の今が安すぎるかもしれませんね。今はマイナス成長でゼロ金利が続く異常な状態です。江戸時代の貨幣価値の方が正常であったかもしれません。