木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

ミーシャ ホロコーストと白い狼

2009年06月25日 | 映画レビュー
映画「ミーシャ ホロコーストと白い狼」を観た。
事実は小説より奇なり、という。

この映画は、世界17カ国で翻訳され大ヒットとなった「少女ミーシャの旅」を原作としている。
ナチスにより両親を連れ去られた8歳の少女が単独で3年もの日々をかけてベルギーからウクナイナまで両親探しの旅に出るユダヤ版「母を訪ねて三千里」の世界である。
その距離は片道2400km。日本でいったら九州から北海道くらいの距離を往復することになる。
ほとんどが徒歩で、しかも町中だけではなく積雪のある山間部も通過している。
防寒着も着ていないのに凄い。
腹を空かせた狼と出会っても襲われることなく、いきなり狼がなついてきたとしても、事実なら納得せざるを得ない。
戦争という過酷な状況が火事場の馬鹿力を出させたのかなあ、と思って映画を観ていたのであるが、後に知ったところによると、この小説はフィクションだそうだ。

ええ~?!

もとは、ノンフィクションとして出版されたが、読者から疑問の声が上がり、その後、作者が「事実ではない」と謝罪した。
もっとも、作者はノンフィクションとして売り出したくなかったそうなのだが、出版社の意向により、ノンフィクションとして売り出したとのこと。真実はどうなのかよく分からないが、いかにも出版社の考えそうなことではある。

映画の予告なども、何となく実話に基づいているかのような印象を与えさせるのは、フェアではないなあ。
だからといって、映画の出来が悪いか、というと、そうではない。
映画の中では、経験した者でない知りえないようなリアリティさを感じさせるところが随所にあり、それがまた、この映画をノンフィクションぽくさせている。
フィクションとしてみると、ストーリーが確かに強引なのだが、史実を含んだファンタジーとして捉えると、納得できる。
ナチスに両親を連行された子供達は、みなこの映画のストーリーのような夢を見ていたのは事実であろう。
そういった意味では、この映画は確かに「真実」である。

押しつけがましい演出がないのもよかった。監督の感情はミーシャの生きる執念を刻々と描いていて、それが取りも直さず戦争に対するアンチテーゼになっていた。
戦争は、どんなことがあれ、正当化されるべきではない。

お勧め度は、65%。



「ミーシャ ホロコーストと白い狼」HP

主役子役女優マルチダ・ゴファールのインタビューHP

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