いつもは私に相談することなく、知らない間に自分のお金で洋服を買うルンバが、珍しいことにパソコンの前に座っている私の所へ洋服のカタログ持参で近寄ってきた。
私はキーを叩くのに忙しくて生返事。
「ねぇ、この黄色とピンクのスウェットはどっちが良いと思う?」
私はチラ見して適当に「ピンク」
「寝る時のスウェットは、もう10年も着ているんだよ」と自慢気に云うので
「そうなんだ」と少しだけ驚いたフリ。
私の着ている服だって10年物は珍しくも何ともないからだ。
洋服に無頓着な私は同じ服を一週間でも二週間でも平気で着ていられる。
だから車中泊の時には薄汚れたシワシワの服で過ごすことが多いのだが、ルンバは同じ物を二日連続で着るのは絶対に嫌で毎日洗濯機を回す。
車中泊なんてトンデモナイと思っているようだ。
私が「ピンク」と選んだのを買うと決め部屋を出て行くと思ったら
「それじゃ黒とピンクの二着を買うね」と云った。
ひと月ほど前にスニーカーをプレゼントした時のように、毎日交代で使うと云う理由だ。
だから生返事で「それじゃ、俺が買ってあげるよ」とつい言ってしまった私。
ルンバはこの言葉を待っていたようで小さな声で「自分で買うから良いよ」と云いながらも嬉しそうに部屋を出て行った。
敵の策略にハマってしまった私。
(やられちまったなぁ・・・・・) と後悔したけれど後の祭り。