ルンバが部屋着を重ねた。冷えてきたからだろうか。
「何処かへ行くの?」とつい訊いてしまう私。
やっぱり気になるからだ。
その言葉を待っていたように不機嫌そうな顔を見せるルンバは
「何処へも行かないから。それに何処へ行ったって良いでしょ。イチイチ訊かないで」と尖った声。
私は仕返しを考えた。
私が着替えていると「何処へ行くの?」と訊くのは圧倒的にルンバの方が多い。
「ついでにCOOPへ連れて行って」とか「ATM」に寄ってとお願いするのはアイツの方だ。
絶対「何処へ行くの?」と云わせてやる。
私が返す言葉は決まっている。今聞いたばかりだから忘れるもんか。
夕闇が迫った頃、私は部屋着を脱いで無言で外出の支度。
それをチラリと見てヤツは気にしているようだ。
私はゆっくりファスナーを上げ、車の鍵を取り、キャップを被った。
さぁ云ってみろ
「何処へ行くの?」と訊いてみろ。
私は後ろ姿を尖らせた。