入院生活は、本当に大変だ。
家庭での生活と時間がズレている。
もしかしたら家庭時間の方が一般的な感覚とズレているのかも知れないが、とにかく色々と違う。
朝7時には朝食が配られる。
食べたくないけれど食べる。
でも、その前に検温と血圧測定がある。だからその前に洗顔をしておかなければならないしオチッコも出しておく必要がある。
必然的に一日は日の出と共に始まることになる。まるでキャンプしているみたいだ。
夜はさらに容赦ない。
消灯は10時だが、9時半には室内灯が消える。
そして10時になるとテレビの電源が落ち強制的な闇が訪れる。
いつもは午前1時まで本を読んでいた私には辛い生活リズム。
時々足音もなく看護師さんが入ってきて今日検査を終えた同室の患者さんの点滴を確認し血圧を測り声を掛けていく。
深夜、日が変わる頃懐中電灯の灯りを落として見回りにくる。
私は暗闇の中でこの時を待っている。どうせ眠られないのだ。
私はベッドの上で新体操の選手のように反り、片足を空中に延ばして大股開きで体を捻って眠っているふりをして巡回の灯りを待つ。
チラッと私を確認した微かな灯りがギョッとしたようにもう一度ジックリと当てられる。
「タブタブさん、起きているんでしょ。普通に寝てくださいね、普通に。」
看護師さんの甘い声が耳元でささやいた。