やっぱり自宅は良い。
病院へ2枚ずつ持って行った下着、パンツとシャツは使うことなくバッグから出された。
ルンバが「洗濯物は出してね」と云うが2泊3日の入院で一度もシャワーを浴びなかったので入院した時の下着のまま退院してきた。
多分、顔をパンツに近づけると芳しい(かぐわしい)アンモニアの臭いがするだろう。
シャワーは浴びなかったと云うより浴びられなかったと云うのが正しい。
右手には点滴。左手は動脈を止血する圧迫帯を巻かれていたから。
「右手にピストル、左手に花束……」ジュリーの歌を思い出した。
ルンバは、下着を替えていないと知って凄く嫌な顔をしたが仕方がないと納得したようだ。
アンモニアの匂いだって、慣れれば好きになると思うのだけれど。
久しぶりに風呂へお湯を張った。
家で数少ない私が任されている仕事の一つだ。
3日分の汗と匂いを洗い流し、浸かるお風呂の温もりに気持ちまで暖かくなる。
両腕に残る大きな痣は、戦いの跡。
どちらも穿刺に失敗した内出血の痕跡だ。
入院していた時、スリスリ(娘)からLINEが入ったのを思い出した。
「お母さんのいれるお風呂はぬる過ぎる。やっぱりお風呂のお湯はお父さんが入れないとダメだわ」と云う言葉が嬉しかった。
「今日の風呂は良い湯加減だぞ」
風呂から出たらスリスリに胸を張って教えてあげよう♨。