昔、実家へ寄った私にいつもは寡黙な父が神妙な顔で話しかけてきた。
相当悩んでいたのだろう。もしかしたら胃がんではないかと・・・・
症状を聞いたら、私も憶えのある胃の違和感に酷似していたので、「牛乳を飲んでみたら」と教えてあげた。
牛乳はアルカリだ。胃酸過多や胃潰瘍には効果があるはず。
これでダメなら胃がんかも知れないので、その時は胃の検査を勧めるつもりだった。
母は乳製品が苦手だ。
牛乳なんて実家では見たこともない。
それが早速父の命令でスーパーへ牛乳の買い出し。
色々なメーカーのを数本買ってきたようで、飲んでみたら・・・あら不思議。
魔法のように効果てきめんで、症状が消えて悩みも雲散霧消。
胃薬よりも安いし良く効いたのだ。
電話なんか掛けてきたこともない父が、「効いた、効いた」と大喜びで連絡してきた。
それは母の苦難が始まった日でもある。
毎日牛乳を買うために近所を歩き回ることになったとこぼす。
すっかり牛乳の虜になった父は、メーカーまで指定したらしい。
その父・母は既に他界したが、スーパーで牛乳売場に立つ度に、そのことを思い出す。
新コロナで牛乳が余り、在庫を抱えているらしい。
家の冷蔵庫には必ず6本は入っている。
毎日ガブガブ飲むからだ。
お蔭様で、胃の調子は頗る(すこぶる) 良い。