連続、霧の中にいた街にやっと陽が射した。
夏が戻ってきたように気温が上がり青空が見えた。
ルンバは冷蔵庫の中が心細くなってきたのかスーパーへ行きたいと云う。
多分彼女もしばらくぶりに太陽を拝みウキウキしているのだ。
ヒマな私は快く運転席に座ったのだが、ルンバが乗車した途端「早くエンジンかけて」とオネダリと云うより恐喝。
車内温度が50℃を超えていたのでエアコンのスイッチを入れて欲しいのだ。
ドアを開放してノンビリと熱波の入れ替えをしていた私が許せないのだろう。
エンジンをかけエアコンONで全ての窓を全開にして走り出すと一瞬で車内の空気が入れ替わり窓を閉じた。
後はいつものようにヒンヤリとした微妙な空気が漂う状態でスーパーへ到着。
店内には今日も爺ちゃん婆ちゃんのペアが沢山。
その中で一定の距離を保ち、時々欲しいものを持ってルンバの押すカートに接近し、まるでバスケの選手のように隙をみて入れては離れる私。
不思議なのは周りの爺ちゃんの服装。
服装には無頓着な私は、襟無しのスポーツウェア。そのままでジョギングできるスタイルだ。
しかし世の爺様はダンディーを気取っているのだろうか。
すれ違う爺様は何故か皆 襟を立てている。
これが今のトレンドなのだろうか…それとも襟を寝かせるのを忘れただけ?
私がファスナーを閉め忘れるのと同じように。
エアコンのそこそこ効いた店内でブレザー姿の爺ちゃんを見た。その横にはモコモコこそ付いてはいないけれどコートをガッチリ着込んだ婆ちゃん。
夫婦で冷え性なのだろうか。
(色々な人がいるなぁ)と観察しながら私は洗剤とかロウソクの並んでいるコーナーへ向かった。
スーパーの中で唯一、人のいないエアポケットのような区画。
私はそこで深呼吸をするように気体を「スッ」と放出し、さりげなく場所を離れた。