寝室には木刀がある。
木刀と云ってもスポーツ用品店で売られている本物ではない。
もう半世紀以上前に阿寒湖畔にある土産物店で買ったものだ。
小学校の修学旅行で阿寒観光ホテルに泊まった時、自由時間に温泉街で手に入れた。
男の子と云うのは木刀とか武器が好きだ。
誰かが買ってきたのを見て、俺も俺もと土産物屋を探し回って同級生男子のほぼ全員が手に入れた。
そして当然のように部屋で戦いが始まったのだが、子供は手加減を知らない。
新聞紙を丸めて戦っているのと同じ強さで振り回すので、偶然指にでも当たると思いっきり痛いのに気が付いた。
新聞紙を丸めて戦っているのと同じ強さで振り回すので、偶然指にでも当たると思いっきり痛いのに気が付いた。
そして自主的に休戦と云うか停戦。
「痛いと」半ベソをかいている何人かの同級生を皆で介抱し、戦いは枕投げに変更された。
その懐かしい木刀が今でも捨てられずに残っているのだから奇跡だ。
それが何故枕元に立てて置かれているか・・・・・。
モチロン戦うためだ。
侵入してきた誰かを葬るのに使う日が来るかも知れない。
眠狂四郎の円月殺法は何度も観た。
赤胴鈴之助だって少し記憶にある。
勝新太郎の座頭市では闇の中での戦い方を知った。
ただチョット予想外だったのは、そんなものを振り回されてはたまらないとルンバが寝室を別にしたことだ。
でも本物の男と云うのは女々しく「戻って来て」なんて云わない。
絶対に云わない。
きっと云わない。