年末に青竹でお箸を削るのが恒例の行事になっている。瑞々しい美しい竹の緑、ただ、この緑色が何時までも残っていない。時間とともに緑色が薄くなっていくのだ。ある意味、逆にこの瞬間しか美しさが無い事を大事に考えて、新年を迎えるお正月のお箸として出している。
竹薮に2年物のまだ、美しい竹を見つけて切り出す。今は、竹薮が整理されていないので、四方八方に倒れた竹が邪魔をする。太く真っ直ぐ育った竹を見つけるのだが、切り出した竹の三分の一くらいしか、お箸になる材料は無いのだ。曲がりがあったり、反りがあったり、傷があったりする物を省いていくと本当に少なくなってしまう。
材料を切り出して、カンナで削り出していくのだが、今年は竹を留めておく治具を新しく作り直さなくてはならない。冶具とはカンナをかける時に竹が動かないように板の上に固定させる道具である。昔は切り出しナイフだけで削っていたこともあるのだが、どうしてもバラツキが出てしまう。「手作りの味」と言ってしまえばそれはそれで済むのだが、お箸に関しては手作りの味よりも、同じ手作りであるが精度の高さから来る美しさを求めてしまう。
無事一年を終えることが出来た感謝の気持ちと、来年に向けての期待を込めて青竹箸を削り込んでいくのだ。