温故知新~温新知故?

音楽ネタが多いだろうけど、ネタのキーワードは、古きを訪ねて新しきを知ると同時に新しきを訪ねて古きを知るも!!

時間はなぜあるのか読了〜アウグスティヌス「過去についての現在、現在についての現在、未来についての現在」、物理学者のロヴェッリ「時間とは論理的には存在せず、人間の脳の中で作られるものでる」〜

2022-06-12 13:09:39 | 
出版社内容情報 「チンパンジーに時間はわかる?」「“きのう”と“あした”を表すことばが同じ外国語がある?」「自閉症や認知症の人が経験する時間の障がいとは?」などの不思議に、幼児の発話記録や動物研究、はたまた世界の言語・表現の分析などを解きながら迫る。 知的好奇心くすぐられる、時間の世界へようこそ! 目次 第1章 ミッチーの時間―“幼児の時間理解”の発達を探る(ミッチー、将来を思う;「きょう」は「あした」!? ほか) 第2章 ことばにみる「時間」―“今昔の日本語と外国語”から時間表現を探る(“いま・ここ”と時間語;自分を中心にして時間を位置づける ほか) 第3章 チンパンジーの時間―“動物の時間”からヒトの時間のヒントを探る(なぜチンパンジーの心を探るのか?;心的時間旅行 ほか) 第4章 時間を失う?―“脳障害の事例”から時間理解への糸口を探る(時間感覚の不思議;自閉症と時間 ほか) 第5章 時間とはなにか?―時間をめぐるディスカッション(「時間」ということば;「きのう」と「あした」が同じ言語 ほか) 著者等紹介 平田聡[ヒラタサトシ] 1973年生まれ。京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了、博士(理学)。現在、京都大学野生動物研究センター教授 嶋田珠巳[シマダタマミ] 1977年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。現在、明海大学外国語学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
この本はいつもの朝日新聞の書評から選んだモノではなく、新聞の広告を見て選んだ。著者が言語研究者とチンパンジーの研究者ということで、興味を持った。時間に関しては以前下に書いているように「時間はなぜ無限に過去から無限に未来へ向かうのか」ということに、疑問やインチキ臭さを感じていたのだけど、この本では言語と動物という切り口から新しい視点を教えてくれるかという期待があった。結果は、期待に違わず、大変面白かった。
私はエンジニアで、時間はなぜ無限に過去から無限に未来へ向かうのか不思議だったし、数学の計算などでlimとか言う記号を使って時間を無限に0にして、解くなんて方法があったりするのはなにかおかしいなと思っていたから時間には興味があった。
ook2では、時間とかの概念が私が常日頃思っているような概念(物理的に、無限に過去から無限に未来へつながっているなんて、そう見てもロジックとして不完全、まだ、科学的には時間の概念は確定していないのでは?)と似ていて面白いなと思って読んだ。
まず、第1章で、自分の子供の4歳半から6歳半までの成長の中で時間という概念の捉え方が変化していることを自分が撮影したビデオで観察した結果を述べている。これは大変貴重な話だと思う。時間と大きさが混同されていたり、「きょう」も「あした」も同じだったり、「ナンネンカ」という新しい言語を使ったり、「きのうとあさって」のように、今日ではないがその前か後かが確立されていない状況が、成長過程のなかであることが示されている。
また、2章のチンパンジーの観察というか、実験では、果たして動物が未来を予測できるのかが示されている。結論から言うと、ある行動を学習して翌日とかにその行動を覚えていて、失敗したことや、目的を達成できない行動は避けることから、ある種の過去や未来という感覚はあるようだが、それはそんなに長い期間ではないのでは?とか、この本のなかでエピソード記憶という言葉が出てきているが。いわゆる人間が過去の経験をもとに、未来を構築してくような、進化の原点のような感覚はないのではないかなどの考察がある。しかし、「ひさしぶり」という感覚がありそうだとの経験に基づく記述もある。
人間には5感があるが時間を感じる器官はないから、色々難しいとの記述も面白かった。また、日本語でtimeの訳として「時間」という言葉が使われ出したのは明治時代からと、割合新しいということも新鮮だった。
「きのう」と「あした」が同じ、言語(リンガラ語、ヒンドゥー語など)があるということも興味深かった。これとは少し違うが、中国語では未来形や過去形がないことは中国に行って実感したが、他の言語でもあるのだ。
アウグスティヌスの言葉で「過去、現在、未来」は本来「過去についての現在(記憶)、現在についての現在(直観)、未来についての現在(期待)」というべきとのこと。それに、また、アリストテレスの「時間とは、運動の前後における数である」、物理学者のロヴェッリの「時間とは論理的には存在せず、人間の脳の中で作られるものでる」という言葉も印象的。
また、相対性理論の下では光の速度で移動すると、早く動けば動くほど、時間の進みが遅くなる。光の速度で80%で動く宇宙船で1年を過ごしたら、地球では1年8ヶ月ほど経過するとのことだそうだ。
やはり、時間は一筋縄ではいかない概念ですね。これからも、この本で参照されているいろいろな本を読んでいきたい。面白かったです。

以下に、他の方の感想も紹介しておきます。
まどの一哉 時間の研究となると哲学や物理学の立場から描く、時間全体の大きな話になりがちだけど、言語学やチンパンジーの研究など一見専門外の各分野からのアプローチが案外核心に迫るかもしれない。 チンパンジーはじめ動物は今を中心としたごく狭い範囲の時間感覚しか持っていないのではないか?という仮説を検証するため様々な実験が行われる。成長したライオンが子供の頃世話してくれた人間に久しぶりに会って喜んでいるシーンなどネット内で見ると、動物にも人間と同じ時間感覚があるのが当然と思ってしまう。 marukuso 時間はどうも人間だけが感じているのではないらしい。子どもの成長過程からチンパンジーの研究,言葉の発達の面など面白い切り口。過去と未来が日本語でも「まえ」とも言えるし,同じ意味を表す言葉は他の民族でもあるようだ。飛行機雲を見てるのと実際飛行機乗ってるのと感じるのは違うし,楽しい時はあっという間でしんどい時は長く感じる。時間とは不思議なものだ。 Go Extreme ミッチーの時間: 発話時・イベント時・参照時 時間の社会的制度 現在と非現在 時を刻み、伝える「時計」 時間の長さの理解 ことばにみる「時間」: 〈いま・ここ〉と時間語 時間と空間 月日は過客 チンパンジーの時間: エピソード記憶はヒトだけのもの? 自発的な未来計画 時間を失う: 時間感覚の不思議 自閉症と時間 〈いま〉の認識の障害 時間の長さの知覚と脳障害 時間とはなにか?: 言語なしで思考は可能か 時間はなぜあるのか・先人からの知恵 動物にとっての過去・現在・未来 ヒトの進化と時間 時間がかかわる物語