硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

タイムライン。

2019-06-08 21:20:17 | 日記
LINEを開くと、タイムラインに赤い印がついていた。しかし僕は、内容は観ずに、いつも赤い印を消す為だけに開いて、すぐ閉じるという作業を繰り返していた。

今回も、いつものように、手早く済ましてしまおうとしたが、ずいぶん前に一緒に働いていた女性のもので、いくつもの写真の中にウエディングドレスを着た女性の後姿があったから、少しばかり、気になって、じっくりと見ると、ウエディングドレスを着た女性の後姿には、その人の面影と重なるところがあった。

一緒に働いているときは、意見がぶつかり、お互いに腹も立てたが、職場の皆で飲みに言った時、酔った勢いもあったのか、その女性から、急に、「私はあなたの事が好きなの」と言われ、動揺してしまった。

単純だった僕は、それ以来、少しばかり意識してその人の事を見るようになり、とりあえず、理由をつけてご飯に誘ったりもしてみた。

職場を離れた彼女は、素敵だった。そして、「僕も彼女の事を好きなのかもしれない」と思い、彼女がシングルマザーであったので、真剣に付き合うのであれば、両親にも了解を得なければと、彼女に告白する前に、両親にその事を伝えると、頭の固い両親は、予想通り、血筋や跡継ぎを重んじて、猛反対にあってしまった。

僕は、意を決し、初めて、農家はそんなに偉いのか、どうして血筋にこだわるのかと反論したが、それ以上どうにもならなかった。

そして、この時、僕は、誰と結婚しても幸せにはなれないと強く思った。

今考えれば、家を出て自立し、自身と好きになった人の事だけを考えればよかっただけの事であったが、小さなころから囁かれてきた呪文からは、逃れる事が出来なかった。

それから、いろいろな出来事が重なって職場に居づらくなり、結局、離職してしまったが、仕事を円滑にする為に交換したメールアドレスは携帯に残り続け、一年に一回くらいの割合でどちらかともなく連絡をした。

一昨年、使用していたガラケーが故障し、時流にのってスマホへと移行し、姉たちと連絡を取り合う為に、LINEを使い始めると、彼女から友達登録がなされた。その時、なぜかほっとし、承認をした。

LINEはメールよりもアクティブであるけれど、一年に一度の連絡のやり取りは変わらなかった。それでも、画面下に知らされるタイムラインの印を消す作業をする中で、彼女のタイムラインも更新されている事を知った。

ウエディングドレスを着た女性の後姿の写真。イニシャルの着いた2つのマスコット。それは彼女の再婚を意味していた。

なぜかわからないが、涙が溢れそうになった。不器用で苦労人の彼女が幸せになるのだから、祝福せねばと思い、タイムラインのコメント欄にお祝いのメッセージを入れ、画面を閉じた。

そして、こういった形で、誰かの生活の変化を知る時代になったのかと思い、大きくため息を吐いた。


3日後、彼女のタイムラインが更新された。メッセージがあるようなので、開いてみると。

「無事帰国しました。あれは娘です。大きくなったでしょ(笑)」とあった。

そういえば、娘さんに会った事があったが、まだあどけない小学生の頃だったので、ウエディング姿の女性が娘さんと結びつかなかった。よく考えれば、イニシャルも一緒だ。

不思議と笑みがこぼれる。メッセージには「改めておめでとう」と送った。