すずめ休憩室

日々のこと、好きなこと、飼っていたペットのことなどなど・・・。
気の向くままにつづってみました。

「under the rose」4巻

2006年12月01日 | 漫画・本
ようやく読みました~船戸明里さんの「under the rose」の4巻

19世紀の英国。ロウランド伯爵家で働いていたグレースは謎の死を遂げた。彼女の息子ライナスとロレンスは彼らの実父であろうロウランド伯爵家へ引き取られることとなるのだが、そこには正妻とその息子達、そして敷地内には伯爵のもうひとつの家庭があった・・・

1巻「冬の物語」はグレースの息子・ライナスの葛藤を、そして2巻以降の「春の賛歌」はロウランド伯爵の次男・ウィリアムの心の闇を書いてます。この4巻もまさにそのその絶頂・・・今回もドロドロに拍車がかかってました。
1巻はまだライナスがもがき苦しみながらも精神的に成長する姿に、そして影ながら彼を慈しむ人たちに救いがあったのに対し、この「春の賛歌」は巻を重ねる毎に暗く、辛い・・・
同じ19世紀の英国カバァネス(家庭教師)ものなのに、明るい「レディー・ヴィクトリアン」と比べるともの凄い違い。
でも当時は勤労女性は身分が低い女性と決まっていたから、こういう理不尽に扱いや辛い思いをさせられたカバァネスも多かったのかも知れないね。

善良な家庭教師レイチェルを落としいれ辱めながら、母親の前では「良い子」の仮面を被り続けるウィリアムは何を考えているのだろう・・・なんとなくレイチェルの家庭教師としての「善良さ」をただ剥ぎ取ろうとしているだけでなく、奥底には愛を求めて叫ぶ子供の姿も見え隠れする感じがする。母親への愛を求め、振り向いてもらう為なら何でもしようというような・・・ただこの漫画がそう単純ではないトコはその母親アンナを始め、レイチェルの理解者であったはずの長男・アルバートまで闇を抱えているというとこ。最初この本を読み始めた時は愛情過多というか幾人モノ子を持つロウランド伯爵が元凶かと思ったけどそう簡単な話でもなさそうだし・・。

いつこの漫画を読むと思うけど、船戸さんで画面作りが上手いなーと思う。
なんか古い洋画を見ているような感じと言うか、19世紀の雰囲気もさることながら流れが「視覚に見せる」ということを意識して書いているように思う。
暗い話な割には結構ファンがいるのはこういうのもあるのかも

そういえば船戸さんってこの「アンダー・ザ・ローズ」の前に「ハニー・ローズ」と言う漫画も描かれているそうですね。コミックス未刊行の漫画なのですが、その「ハニー・ローズ」がこの「アンダー・ザ・ローズ」の数年後のロウランド家の兄弟のお話なんだそうです。
私はこの存在をつい最近知ったので未読なんですが、この泥沼化しているこの話からどうやってその「ハニー・ローズ」に繋がるのか気になるトコロ。そしてその頃にはその「ハニー・ローズ」も刊行して欲しいな

タイトルにもなっている「under the rose」は直訳すると「バラの下で」となりますが、実はもう1つ意味があるの知ってました?昔ローマの人がバラを吊るした下で話したことは秘密にしたということから「under the rose」とは「秘密」という意味も持つんだそうです。
このロウランド伯爵家を舞台にした秘密の物語、ちょっと目が離せません