「龍-RON-」 村上もとか 全42巻 小学館刊行
ここんとこ村上もとかさんの漫画の魅力にハマっている私ですが、なかなか手が出せなかったこの大作を歴史トピでお世話になっているパールさんよりお借りできました。ありがとう~!!パールさん
時代は1928年男爵の爵位を持つ京都の押小路家の御曹司・龍は晴れて武道専門学校に入学した。過酷ともいえる武専独自の上下関係と稽古の中、かけがえのない師と友を得るが、時代は確実に激動の時代へと進む。そして龍もまた例外ではなく、己の半分を占める血と壮大な秘密のために大陸へと導かれていくのだった・・・。
いや~面白かった!一気読みしてしまいました。
さすがに昭和の激動の時代を背景としているので読むのに時間がかかり1日では読みきらず、2日かかりとなったけど(笑)最初の5巻位までは龍の精神的成長のためのプロローグという感じですね。本格的に面白くなるのは押小路家の下働きをしていた田鶴ていという女性と龍が想いを通い合わせてからぐんぐんと惹きつけられました。
以前パールさんが「村上もとかさんの作品に誠実さと品格がにじみ出てる」とおっしゃっていましたがほんとそう思います。
人間が本来持っているであろう「人間としての良さ」が滲んでいる感じがします。もちろん人間がもっている「悪」の部分も描かれてますけど、それらを併せ持ちながら、そういう部分が現されている感じなのです。
そしてもう1つの魅力は徹底した時代考証ですね。
勿論、主な時代は満州事変後の日本、中国、満州ですから歴史的登場人物は当然出てきますが、ていが女優としての階段を登り始めた時に出逢う映画関係者も実在の俳優さんをモデルとしているトコも作品自体にリアリティを与えている感じがします。
入沢たき子(モデルは入江たか子)、岡山時彦(同、岡田時彦、ちなみに女優岡田茉莉子さんの実父)、溝田健一(同、溝口健二監督)など・・・(実際に入江たか子と岡田時彦は「滝の白糸」という作品に共演していたそうです)
また田鶴てい自体が「坂根田鶴子」という日本初の女性監督にヒントを得ているみたいですね
そしてもう1人忘れてはならないのが「甘粕正彦」
物語の中盤から後半にかけては主人公・龍は世界中が血眼になって探す「紫禁城の秘宝」を封印するために追い続け、ていは1人の女優から満州映画協会(満映)の監督として、それぞれが自分達の目的に向かって突き進みます。その2人に大きく関わってくるのが、この時代の重要人物でもあるこの甘粕正彦。この時代の歴史背景に疎い私は今まで甘粕正彦といえば大杉栄が惨殺された「甘粕事件」と映画「ラストエンペラー」で坂本龍一が演じた彼しか知らなかったので、なんとなく「冷酷」なイメージがあったんですね。
でもこの作品は違う。
国を憂い、満州を愛した甘粕正彦の生き様、精神がビリビリと伝わってきました。
確かに満州時代、日本に虐げられた韓国や中国の人がみたら異論はあるだろうし、戦時下「映画」という満州メディアの頂点にいた彼がそれを全くの大衆娯楽として考えていたとは思い難い。でも色んなエピソードを知るうち、この「龍-RON-」の甘粕像が一番近いように感じましたね。
いつも村上さんの作品を読むたび思うのですが、この膨大なる時代背景や知識はどうやって得ているんでしょうね。専門にブレイン(頭脳)となる人がスタッフとしているのならまだしも、これらを調べ上げ、そして自身のキャラクターと共に作品中への寸分の狂いもなく納める村上さんの力量にただただ驚くばかり・・・。
人が羨むであろう才能を次々と開花させる押小路龍と田鶴てい夫婦がフィクションだとはわかりつつも、すっかりその世界に魅せられてしまいました。
全42巻という大作ですが、これほどのスケールの作品がよくぞ収まったという感じ。
歴史漫画好きの方、アクション好きの方、色んな方を満足させる作品だと思います。是非お試しあれ!!
ここんとこ村上もとかさんの漫画の魅力にハマっている私ですが、なかなか手が出せなかったこの大作を歴史トピでお世話になっているパールさんよりお借りできました。ありがとう~!!パールさん
時代は1928年男爵の爵位を持つ京都の押小路家の御曹司・龍は晴れて武道専門学校に入学した。過酷ともいえる武専独自の上下関係と稽古の中、かけがえのない師と友を得るが、時代は確実に激動の時代へと進む。そして龍もまた例外ではなく、己の半分を占める血と壮大な秘密のために大陸へと導かれていくのだった・・・。
いや~面白かった!一気読みしてしまいました。
さすがに昭和の激動の時代を背景としているので読むのに時間がかかり1日では読みきらず、2日かかりとなったけど(笑)最初の5巻位までは龍の精神的成長のためのプロローグという感じですね。本格的に面白くなるのは押小路家の下働きをしていた田鶴ていという女性と龍が想いを通い合わせてからぐんぐんと惹きつけられました。
以前パールさんが「村上もとかさんの作品に誠実さと品格がにじみ出てる」とおっしゃっていましたがほんとそう思います。
人間が本来持っているであろう「人間としての良さ」が滲んでいる感じがします。もちろん人間がもっている「悪」の部分も描かれてますけど、それらを併せ持ちながら、そういう部分が現されている感じなのです。
そしてもう1つの魅力は徹底した時代考証ですね。
勿論、主な時代は満州事変後の日本、中国、満州ですから歴史的登場人物は当然出てきますが、ていが女優としての階段を登り始めた時に出逢う映画関係者も実在の俳優さんをモデルとしているトコも作品自体にリアリティを与えている感じがします。
入沢たき子(モデルは入江たか子)、岡山時彦(同、岡田時彦、ちなみに女優岡田茉莉子さんの実父)、溝田健一(同、溝口健二監督)など・・・(実際に入江たか子と岡田時彦は「滝の白糸」という作品に共演していたそうです)
また田鶴てい自体が「坂根田鶴子」という日本初の女性監督にヒントを得ているみたいですね
そしてもう1人忘れてはならないのが「甘粕正彦」
物語の中盤から後半にかけては主人公・龍は世界中が血眼になって探す「紫禁城の秘宝」を封印するために追い続け、ていは1人の女優から満州映画協会(満映)の監督として、それぞれが自分達の目的に向かって突き進みます。その2人に大きく関わってくるのが、この時代の重要人物でもあるこの甘粕正彦。この時代の歴史背景に疎い私は今まで甘粕正彦といえば大杉栄が惨殺された「甘粕事件」と映画「ラストエンペラー」で坂本龍一が演じた彼しか知らなかったので、なんとなく「冷酷」なイメージがあったんですね。
でもこの作品は違う。
国を憂い、満州を愛した甘粕正彦の生き様、精神がビリビリと伝わってきました。
確かに満州時代、日本に虐げられた韓国や中国の人がみたら異論はあるだろうし、戦時下「映画」という満州メディアの頂点にいた彼がそれを全くの大衆娯楽として考えていたとは思い難い。でも色んなエピソードを知るうち、この「龍-RON-」の甘粕像が一番近いように感じましたね。
いつも村上さんの作品を読むたび思うのですが、この膨大なる時代背景や知識はどうやって得ているんでしょうね。専門にブレイン(頭脳)となる人がスタッフとしているのならまだしも、これらを調べ上げ、そして自身のキャラクターと共に作品中への寸分の狂いもなく納める村上さんの力量にただただ驚くばかり・・・。
人が羨むであろう才能を次々と開花させる押小路龍と田鶴てい夫婦がフィクションだとはわかりつつも、すっかりその世界に魅せられてしまいました。
全42巻という大作ですが、これほどのスケールの作品がよくぞ収まったという感じ。
歴史漫画好きの方、アクション好きの方、色んな方を満足させる作品だと思います。是非お試しあれ!!