台風21号は、まだ遠くにいるときから、どんなコースを辿るのだろうかとズーット見守っていた。というのは10月中旬に子供が帰省した時、「もう台風はこないだろう」と云って雨戸を開けてくれたからだ。今回もう一度閉めに行くかそのまま放っておくかで、心が揺れた。
三重県の沖の方にいるとき、タクシーを使って閉めに行くと決めた。それは、テレビの画面に▲▲半島に上陸するコースをとるという字幕が出たからだ。そうだとすると、台風の中心が家の近くを通るような気がしたからである。半日くらい過ぎたころテレビの気象予報を観ていた主人が「静岡県に上陸する」と、コースが変わったことを知らせてくれた。これなら行く必要はないと思った。
それ以来、いかない気持ちを保持するのに随分とくろうした。
夜になって開票結果と台風のニュースを交互に見てあわただしく時間が過ぎて行った。しばらくすると、情報がありすぎる画面の見続けで疲れが出てきた。チャンネルを変えてみると、パイプオルガンで弾くバッハの曲が耳に入ってきた。日本人の演奏者がドイツの有名な教会をあちこち訪れてパイプオルガンでバッハの曲を演奏する企画だった。優雅なオルガンの音色に心癒された後床に入った。
再び目覚めたのは、午前二時。風も吹いていないし、雨も降っていない。テレビを点けると予報士が静岡県の様子を話していた。台風は知らない間に通り過ぎ、たいしたことはなかったと安心して、再び眠りについた。
そのとき、画面では衆議院選挙の投票数312、143、という数字が映し出されていた。(E)
台風後の刈り田