最近、蕎麦談義があちらでもこちらでも聞かれるようになった。
勿論、生まれも育ちも津和野(一応島根)の私は幼い頃から食べていました。
でも、蕎麦の花を見たり蕎麦を打っている姿は実は見ていないんです。
年末になると「年越し蕎麦は?」と母に聞かれ私は「蕎麦は勘弁して」と自分で中華そばを買いに行き母に「これでよろしくお願いします。」
と、年越しラーメンを食べていました。
でも、蕎麦が嫌いな訳じゃなくて年越しは「つるつるっとラーメンにしたいのです。
我が家で蕎麦を育てている訳じゃないし、どこから調達してくるのかもさっぱり判らないまま「そばがきが食べたくなったら隣のおばさんに作って貰いんさい。」と母に言われ甘いものが嫌いな私は学校から帰ると隣の家(父の実家)へ行って勝手にこたつに入り寝転がっています。
するとおばさんが来て「そばがきが食べたいの?」と聞きます。
「うん」と言って待っていると固くも無く柔らかくも無いちょうど食べごろの「そばがき」が出て来てお椀2杯くらい食べると「ごちそうさま」と、言って自分の家に帰ります。
今のようにインスタントなわさびも無い時代おろしたてのわさび醤油につけては食べる。
ちょっと「変な子」だったんだろうなと思います。
私の母は私が小学校高学年くらいから働き始めたと思いますが隣のおばさんは身体が弱くいつも家で寝ている方が多く、大抵家にいる時が多かったのだと思います。
私は無口な子(今思うと懐かしい)だったので自分からは何も言えなかったけれどきっと母から頼まれていたのでしょう。
余談ですが
女3人寄れば・・・と言いますが私の母が家にいると近所のお母さん連中が10人組だと思いますがいつも井戸端会議でキャーキャー・ワーワーと姦しかったです。
それぞれに役割を持っていたりこの日は柏餅を作ろう、とか、暮れの餅つきはいつも我が家でお父さん連中も含めて大賑わいです。
子供たちは全員お飾りなどが出来上がったら並んでお餅を丸めたり運んだり、10軒分だと一日中かかり皆で作り友達同士で作業するので楽しかったですねえ。
私はお餅もあまり好きでなく2月くらいに作る「かきもち」が好きでした。
私のために我が家は塩入で青のりやごま、豆などが入っていました。
父も母も好き嫌いの多い私には一言も苦情を言ったことも叱られたことも無く今思うと私ばかり甘やかされ、苦学しながら一心に勉強している兄には厳しかった兄はちょっと可哀想でした。
県境を越えて早朝から通学し、勉強もスポーツも出来た兄は大学へ行きたかったに違いないのに父「大学なんか行かんでええ」の一言で進学は諦めたそうです。
就職先も殆どの人が親がかりだったのに兄は自力で就職をしました。
兄は実家で楽しい時間を過ごすことが出来たのだろうかと時折思います。
私は結婚して初めて自分がいかに甘えて育てられたかについて学びました。
お餅が嫌いな私は大きくなって年越し蕎麦は食べられるようになっていましたがお雑煮は相変わらず苦手。1個食べるのがやっとで餡餅などは今でも苦手です。
お姑さんから何度も嫌味を言われたり隠れて食べているんじゃないかと子供たちも聞かれたそうです。
でも、好きなかきもちだけは別腹で食べられるので「かきもち、青のりやごま、豆も作りますよね」と聞いたら「とんでもない、かきもちは甘いに決まっている。塩が入ったかきもちなんて聞いたことが無い」と、一喝。
自分がいかに甘やかされて育ったのかが思い知りました。
でも、こんなことでへこむ私ではありません。
子供たちを使って懐柔策をしたらあっという間にばれて「お母ちゃんが食べたいから塩入を作って欲しいって言えいわれたんじゃろ」
まあしつこい私は、3年間同じ手を使ったのですが家族全員甘いのが好きで夫も味方に出来ず諦めました。
と、話が横にそれましたが夫はいつの間にか江戸風、信州そば系が好きになり最近は出雲そばと聞くと嫌がります。
私はどちらもOKお店もどこでもOKです。
時おり「そばがき」も作っておやつにしますがこれが作り方が下手で固くなったり柔らかすぎたり未だに隣のおばさんのようには作れません。
あの世に問うわけにもいかず「う~んイマイチ」と言いつつ一人ぶつぶつ言っています。
そうそう、先日、総領のあたりで食べる所が無く迷っていた時「蕎麦やなら美味しい所知ってるけどあなたのお口に合わないと言うのなら連れて行きたくないけど」
と、言うと「えーいこの際腹が減ったらなんでもええよ」と言うので「五陵庵」に行った。
看板に「江戸風」とあったのでニヤリとしながら入ったが結構な人がいた。
もりそばをあっという間に平らげたので私の割子を一つあげた。
ちいさなむかごごはんも付いていたが男性には少ないらしい。
すると「冷やす時間が無くて・・・」と地元のいもで地元の人が作ったと言うこんにゃくの刺身が出てきた。刺身も美味しかったが酢味噌の上品さ。
それにむかごご飯に添えられたつくだに。
昆布もカツオブシも上等品。
まあ主人の顔がほこらんだこと。好みの味だったようで上機嫌でした。