月は昇ったものの、南の天の川はまだはっきりと見えていた。今度いつこんなに晴れるか分からない。駄目で元々、撮ってみようか。カメラを望遠鏡から外し、元のレンズを付け直す。条件を「はくちょう座」の撮影に合わてフレームを南に移動。カメラのシャッターを開く間に7分。画像がモニターに現れるまでに7分。この間、空はわずかずつ明るくなってゆく。ここまでか。竹取庵の屋根を閉め、ディテールの薄らいだ天の川に別れを告げて丘を下りた。
翌々日、2枚目の天の川の画像を処理をしながら気が付いた。北の天の川と南の天の川、この二つの画像は一部重なり合っていてつなぎ合わす事が出来る。そこで数時間頑張って仕上げたのがこれ。はくちょう座からいて座までの天の川だ。地上の明かりの影響は有るものの、場所によって明らかに色が違う星の流れ。その両側で織り姫彦星が鮮やかだ。
僕らの住む銀河を真横から見た姿。それもここに写し撮ったものは一部分でしかない。その壮大なスケールの中で僕らは生きている。 いや、生かされている。その理由を尋ねるのは、未熟な人類にはおこがましい事なのだろうか。