観測デッキの屋根を開ける。しずしずと開けば格好が良いが、安物ウインチのせいか竹取庵の屋根は、毎回「ガキン、バキン」と壊れそうな音が出る。その騒音の中で黄昏の空は広がっていった。透明度は高いが雲がやたら散らばっている。撮れるかな。雲が有っても晴れの区域が大きければ星は撮れる。しかし、量が少なくてもまんべんなく散らばっていると、数分の露出の間にも必ず雲が邪魔をする。今日はどうだろう。
ここにある3つの反射望遠鏡はどれも未整備。何とかしなければと思いながらそのままになっていた。ただ今日の撮影に望遠鏡は使わない。今夜撮影を予定しているのは以前宿題としていた星雲だ。この宿題を片付けなければ季節が変わってしまう。その相手がかなり大きいため、望遠鏡より視野の広い望遠レンズのほうがうまくいく。それだけに雲は邪魔。心配をよそに空が明るさを失っていった。
台風23号から北東に伸びた雨雲がようやく北に逃げた。そのすぐ後を24号が追っている。しかし今日一日くらいはなんとか晴れそうだ。そう踏んで上がってきたみかんの丘は青空が広がっていた。雲の塊がいくつかのんびりと流れている。二つの台風の狭間とは言いながら穏やかだ。
今日は少し進めなければ。実は昨日雨の中で増築部分の仮床を張って、仮物置をその上に移動して帰った。今日はその仮物置の有った場所に脚立を立てて西側の本体の柱にほぞ穴を開ける。これが手間だ。何しろ電柱は硬い。15センチ×6センチ、深さ5センチのほぞ穴を掘るだけで4時間近く掛かった。その間2回ノミを研ぐ。
穴が開いたら壁板の溝を少し掘って今日は終わり。この後が今日の本番になる。