日本国道路元標は、国道の基点となる原点です。東京都中央区の日本橋にあります。
日本橋がはじめて架けられたのは、徳川家康が幕府を開いた慶長8年(1603)と
伝えられています。幕府は、東海道をはじめとする5街道の起点を日本橋としました。
日本橋は、重要な水路であった日本橋川と交差する点として江戸経済の中心となっていました。
現在の日本橋は、東京市によりルネサンス様式の石造2連アーチ橋の道路橋として
明治44年(1911)3月に完成しました。4隅の親柱の橋銘に刻まれた「日本橋」
及び「にほんはし」の文字は、第15代将軍徳川慶喜の揮毫によるもので、青銅の
照明灯装飾品の麒麟は東京市の繁栄を、獅子は守護を表しています。
橋の中央にあった東京市道路元標は、当時日本橋を走っていた市電(後の都電)の
柱の形を取っていたことから、昭和42年(1967)に都電の廃止に伴い電柱が不要となり、
同47年に日本橋の道路改修が行われたのを契機に、東京市道路元標は撤去され、
現在は日本橋北詰の「元標の広場」に移設・保存されています。
また、道路元標は、柱からプレートに、プレートの文字は、「東京市道路元標」から
「日本国道路元標」に変更され、文字は、当時の内閣総理大臣佐藤栄作の筆によるものです。
平成10年に照明灯装飾品の修復が行われ、同11年5月13日には国の重要文化財に
指定されました。
日本橋(2005年11月29日撮影)
元標の広場
戦前の旧道路法:大正9年(1920)4月1日施行の道路法施行令によると、
第9条1 道路元標ハ各市町村ニ一箇ヲ置ク
道路元標は、市町村毎に設置されていました。つまり市町村それぞれにおける道路の
基点なのであって、日本国全体を代表させるような「日本国道路元標」はもとより、
道府県の元標についての定めがない。そしてもっと重要なことに、
第8条1 東京市ニ於ケル道路元標ノ位置ハ日本橋ノ中央トス
2 市町村ニ於ケル道路元標ノ位置ハ前項ニ規定スルモノヲ除ク
ノ外府県知事之ヲ定ム
今日「日本国道路元標」が鎮座している日本橋の中央は、本来は東京市の道路元標の
位置なのである。その場所は、概して市役所や県庁などとされたが、首都たる東京市は
江戸時代を踏襲して、日本橋を道路元標とした。形も、他の道路元標が石柱なのに対して、
当時日本橋を走っていた市電の電柱や電灯も兼ねた独特のものになっていました。
東京市道路元標がこのように特別な扱いだったのは、ここがまさに日本の道路網の
中心とされたからである。大正9年の旧道路法に基づいて認定された国道の一覧
(大正9年内務省告示第二十八号)には38本の国道が記載されているが、どの国道も
皆、起点は「東京市」になっている。すなわち「すべての道は東京市道路元標に通じて
いた」のである。
道路元標については大正9年施行の旧道路法及び道路法施行令がその根拠法になって
いた。ところが昭和27年に現行の新道路法が施行されるのと入れ替えに廃止されて
しまう。
新道路法 第二条2の三で「道路元標又は里程標」は道路の付属物として認められて
いる。ところが、新道路法とその関連法規では道路元標の新設、維持、更改についての
規定が見あたらないのである。そのため戦後体系立てて設けられた道路元標はない。
一方で大正時代から残る道路元標は、道路整備が進み、バイパスの建設などで国道や
主要幹線がかつての市街地を大きく迂回するようになると、その市町村における道路の
基点としての役割を果たせなくなってしまう。また、昭和28年の町村合併促進法により
市町村の合併が大幅に進み、大正9年当時の市町村区分にもとづく道路元標が今日の
行政区分とかけ離れたものになってしまった。いずれにせよ道路元標は、行政上の機能
を失ったと言える。
新道路法では、道路元標に関する規定は無いが、現在でも日本橋の中央には「日本国
道路元標」の文字が埋め込まれている。
現在、日本橋を始点としている国道は次の7本である。とはいえ、日本橋がこんなに
複雑な交差点になっているわけではもちろんなく、日本橋付近では複数の国道が重複
しているのである。そのため表向きには、南向きに国道1号、北向きには国道4号の
起点となっている。
国道1号(終点:大阪市・梅田新道)
国道4号(終点:青森市)
国道6号(終点:仙台市)
国道14号(終点:千葉市)
国道15号(終点:横浜市)
国道17号(終点:新潟市)
国道20号(終点:塩尻市)
現在でも日本国道路元標として、この日本橋を中心として道路のキロ数が表示されて
おり、国道1号、4号、6号沿いにある「起点(東京)まで○○km」という表示は、
ここ日本橋までの距離である。
日本国道路元標は、道路の真ん中、橋の真ん中にあるので、普段は車が走っている
ため近くでは見ることができない。そのため、元標の複製が袂に設置されている。
首都高速が日本橋川に沿って架けられているため、空間を圧迫されている日本橋で
あり、橋中央のモニュメントも高架橋の隙間をみつけて天に向かっている姿となっている。
道路中央にあるのが道路元標
日本国道路元標