蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

神話「蜜から灰へ」を読む 1

2019年07月12日 | 小説
2018年6~7月にGooblogに連載投稿した同名作品を2019年7月に訂正、加筆し本稿としホームサイトに掲載することにした。当ブログには(長くなるので)一部の紹介。

レヴィストロースの神話学は全4巻。第一巻(生と調理)に続く第2巻が「蜜から灰へDu miel aux cendres」となります。
第一巻の生と調理(その解説は本ホームサイトに既掲載)は「文化の創造」。比べて第二巻の本書は「文化の喪失」がテーマとなります。文中に散見するperteなる語を「文化喪失」としたわけです。「瓦解」「途絶」も語られる。喪失にそれらの意味をも投影して欲しい。
加筆では蜜狂いの娘を追加しています。また自然と文化の出会いは偶然か、計画性かについても部族民通信の解釈をまとめている、御大レヴィストロースの意見と異なる点が苦しいのだが。

一部を引用します
<続いてのM213(題名と民族Tobaは同じ、89頁)
キツツキ妻は危うきを退け、森に逃げてしまった。程なくキツツキは戻ってきた。悪事を隠そうとキツネは妻に変装した。しかし何かがおかしい、事態をつかめないから、まさかの女装まで疑うにキツツキは至らない。とりあえずシラミ取りを命じた(むだ毛の引き抜きも、これは妻の義務)。シラミをつかんでエイャで潰したキツネの爪がキツツキの皮膚を破った。イテテ、何しているんだ、しかしいつもの手際良さがないぞ。疑い深めたキツツキはシロアリに<Plein de soupcons, Pic prie une fourmi de mordre sa soi-disant femme a la jambe>「あなたの妻よ」と自称する女らしきの足を噛みついてくれと頼んだ。<Renard pousse un herlement peu frminin qui le fait reconnaitre>あげたキツネの悲鳴は少しも女らしくなく、男の地声で誰かが分かった。

悪役ながら憎めないキツネ、せっかくの女装もばれてしまう。図は本書から。

他の神話(M216)ではキツツキ妻の沐浴中を襲ったら、衣服(隠しの布紐程度)を置いて逃げたからそれを着して妻と決め込んだキツネ。やはり疑う夫キツツキがシロアリに下した噛みつき条件は「股の奥に何があるかを見てくれ<Si tu vois une vulve,c’est bien, mais si tu vois un penis, alors mords>それが膣だったら見逃せ、男根を見たら噛みつけ(91頁)またも見破られ、もっとも痛い男の急所をアリに噛みつかれまた悲鳴。キツネはしこたま殴られたとさ。賢いキツツキと化けそこねたキツネの吉本喜劇風の失敗譚でした>
次回は明日投稿。

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グーグル検索では「部族民通信」で筆頭に位置します。よろしくご回覧のほど。



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