殺処分寸前の捨て犬から災害救助犬になった「夢之丞(ゆめのすけ)」。広島土砂災害でも活躍し、現在は地震で大きな被害を受けたネパールで活動中です。 殺処分される予定だった日、処分数が多くて後に回されたことで助かった夢之丞。人によって捨てられた命が、災害に苦しむ人たちの命を救うべく活動していま す。
現在カトマンズに派遣中
夢之丞は、紛争地や被災地で人道支援をしているNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(広島県神 石高原町、PWJ)の災害救助犬です。現在、ネパールで起きた地震の被災者救援と支援のため、PWJの緊急支援チーム6人と、仲間の災害救助犬ハルクとと もに、首都カトマンズで活動中です。チームは倒壊した建物の周辺などで捜索活動を始め、水や食料などの支援物資の調達にもあたっているそうです。
救助犬向きとは言えなかった
2010年11月、夢之丞は広島県動物愛護センターにいました。殺処分される順番の日でしたが、処分数が多くて後に回されました。そんなとき、救助犬候補を探しに愛護センターを訪れていたPWJのスタッフが夢之丞を見つけ、引き取ったのです。
「人によって捨てられた犬が人の命を救う」という目標の下、専門のドッグトレーナーが捜索や救助の訓練をしてきました。生後4カ月だった夢之丞は人への警 戒感が強く、救助犬向きとは言えなかったといいます。まずは人に慣れさせ、「待て」「座れ」などの基本動作を覚えさせました。人の指示に従う訓練や、がれ きの中を歩く練習などを繰り返したそうです。
広島土砂災害でも活躍
災害救助犬の役割は、地震などの災害時にいち早く現場に駆けつけ、がれきや土砂の中から一人でも多くの命を見つけ出すこと。初めての出動は、昨年8月の 広島土砂災害の現場でした。仲間のハルクとともに土砂が流れ込んだ民家を捜索し、行方不明になっていた人たちの遺体を発見しました。
人を捜すのに必要な好奇心が持続せず、臆病だったという夢之丞。広島に続いて昨年末には台風被害を受けたフィリピンへ派遣されていて、今回のネパールで3度目の出動となります。
PWJの広報担当・大成絢子さんは「ネパールでも犬とスタッフの安全を第一に考えながら、一人でも多くの命を救えれば」と話しています。
竹久岐史
2014年8月29日16時12分
広島土砂災害の現場で、泥まみれになりながら捜索にあたった災害救助犬がいる。雑種の夢之丞(ゆめのすけ)。殺処分寸前の捨て犬だったが、仲間のハルクと初出動した。
夢之丞は、紛争地や被災地で人道支援をしているNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(広島県神石高原町、PWJ)の災害救助犬。災害当日の20日、もう一頭の救助犬ハルクとともに安佐南区八木3丁目の現場に向かった。
午後1時20分ごろ、1階部分が埋まった民家の近くで夢之丞が立ち止まった。救助犬は生存者を見つけると、ほえるように訓練されている。夢之丞はじっと倒れた木を見ていた。同行したハンドラーの佐野浩之さん(24)が木材の間から男性の遺体を見つけた。
午後7時過ぎ、土砂が流れ込んだ民家の捜索で、ハルクがほえ始めた。しきりににおいをかいだ所から女性の遺体が見つかった。
災害救助犬は生存者の救助が本来の役目。初日の捜索を終えて撤収した。
4年前の2010年11月、夢之丞は広島県三原市にある県動物愛護センターにいた。殺処分される順番の日だったが、処分数が多くて翌日に回された。
PWJは各地で救助犬の活躍を目の当たりにし、その育成を考えていた。この日、救助犬候補を探しに愛護センターを訪れていたPWJのスタッフが夢之丞を見つけ、引き取った。
生後4カ月だった夢之丞は人への警戒感が強く、救助犬向きとは言えなかった。まずは人に慣れさせ、「待て」「座れ」などの基本動作を覚えさせた。その後、人の指示に従う訓練やがれきの中を歩く練習、山中で人を捜す体験などを繰り返し積み重ねた。
それでも、人を捜すのに大切な好奇心の持続ができず、臆病な面もあるため、現場に出る一歩手前だった。一方、ゴールデンレトリバーのハルクは競技会で好成績を収め、いつでも出動できる救助犬だった。
佐野さんには初出動を終えた夢之丞が自信のありそうな表情になったように見える。「人に捨てられた夢之丞が人を救う。夢之丞が生きている証しです」(竹久岐史)