ふるさと納税、勝ち組・負け組 町税超す収入、都心は…
伊藤唯行、上田輔、歌野清一郎
2015年5月11日09時48分
実質2千円の自己負担の寄付で、自治体から返礼の米や肉などが届くことで注目が集まる「ふるさと納税」。税収を上回る寄付を集め、新たな施策を打ち出す自治体がある一方で、減収に危機感を抱く大都市も。今年から控除額が倍になってブームに拍車がかかる中、返礼品競争のあり方も問われている。
■東京で「感謝祭」
十勝平野の北端、北海道上士幌(かみしほろ)町。人口約5千人、牛の飼育数3万4千頭の酪農の町に2014年度、全国から約5万5千件、計約10億円のふるさと納税が寄せられた。前年度の4倍で、町税収入6・4億円を上回った。町企画財政課の関克身主幹は「想定外の勢いに驚いている」と言う。
人気の秘密は返礼品の和牛。町内の牧場で飼育した最高品質の牛肉で、1万円を寄付すると300グラムがもらえる。空港や駅から遠い同町は元々、和牛など特産品のネット通販に力を入れてきた。町は11年8月から通販サイトをふるさと納税に転用。ほかの自治体が返礼の品ぞろえや受発注に四苦八苦する中、ネット通販で培った多彩な品ぞろえと到着の早さで人気を集めた。
ふるさと納税専門サイト「ふるさとチョイス」への掲載やネット決済もいち早く採り入れた。関主幹は「スタートダッシュでファンを獲得できたのが成功の理由」と振り返る。
高齢化と人口減に悩む町は寄付者から使途を指定されなければ寄付金を少子化対策に当てている。13年度分で町立図書館に子供向けアニメなどの最新DVDをそろえ、小中学生を送迎するスクールバスを新調。14年度分で4月に開園した町立認定こども園の幼稚園料金を今後10年無料にした。
今年2月、町は東京で寄付者約1千人を招き感謝祭を開いた。町の観光案内を見ながら「夏休みに行こうか」と盛り上がる家族連れや、移住の紹介を熱心に聞く人もいた。関主幹は「獲得したファンを離さないようにしたい」と話す。
東シナ海に面した長崎県平戸市。昨年度にふるさと納税の拡大に取り組み、約14億6千万円を得た。人口は3万人余、住民税額は約11億円だ。
ウチワエビや平戸牛など豊かな食に恵まれ、返礼品を選ぶ特典カタログには83商品をそろえる。クレジット決済も導入。昨年11月に開いた専用サイトでは、寄付に応じて付与するポイント残高や商品の発送状況を寄付者が確認できる。
特典の商品価格は寄付額の半分ほど。商品の高額化で目を引く他の自治体とは一線を画す。「高額商品は、まちづくり財源を確保するという制度の趣旨とあわない」との考えからだ。
市は今年度、寄付金約3億2千万円をコミュニティーバスの維持や小中学生の医療費助成など20事業に充てる。今後は寄付者との交流も進めたいという。担当する市企画財政課の黒瀬啓介・主任主事は「汗をかいた自治体に光が当たる制度。小さくとも生き残れることが実感できた。地方創生は自治体間のサバイバルだ」と話す。
■寄付者増え、財源流出
昼間人口90万人のオフィス街と高級住宅地を抱える東京都港区。11年度に286人だった区民の寄付者は13年度に657人にのぼり、都内の区市町村最多の2億9千万円を寄付。区は1億円の税収を失った。14年度の寄付者はさらに増えて1057人、寄付額は5億3千万円で、1億6千万円の減収を見込む。
「カタログ競争の状況は当初の趣旨から逸脱している。最大の被害者の港区はどう考えるのか」。3月の区議会予算特別委員会。東日本大震災後、区がふるさと納税を知らせるチラシを納税通知書に同封した経緯に触れながら、区議の一人が区側に詰め寄った。「被災自治体を応援する精神は変わらないが、やみくもに他自治体への寄付を奨励しているわけではない」と、区の担当者は答えた。
制度が拡充される中、担当者は「今後、減収は5億~6億円になるだろう。無視できる額ではない」と危機感を抱く。15年度の一般会計は1141億円だが、5億円は小学校の給食に区が支出する額に匹敵する。
■換金性高い品、撤回も
自治体の競争が過熱する中、換金性の高いプリペイドカードや寄付額への還元率が高い返礼品も目立つようになった。利益を求めないふるさと納税の趣旨に反するとして総務省は1月と4月、こうした返礼品の自粛を自治体に要請した。
石川県加賀市は2月、加賀市発祥で、動画配信やDVD販売などを手掛ける「DMM.com」と提携して寄付額の半分をゲームや動画などの購入に使えるDMMマネーで還元し始めた。3週間で約2千件、約6500万円の寄付を集めたが、市は3月に打ち切った。担当者は「国が自粛を求める換金性の高い返礼品と判断した」と話す。
三重県伊賀市は昨年10月、500万円以上の寄付者への返礼品に純金の手裏剣を加えた。1500万円を寄付した東京の男性に3枚を贈ったが、市は「換金性の高さ」を理由に3月末で打ち切り、忍者衣装などに切り替えた。
大手スーパー・イオンの商品券を返礼品にしていた鳥取県日吉津村は総務省の自粛要請を受けて5月1日で中止した。担当者は「特産品がない村には痛手」と話す。村の製紙工場にちなんだBOXティッシュを後継の返礼品に据えたが、どれだけ寄付が集まるかは未知数という。
千葉県市川市は1万円につき2千円相当のTポイントを返礼し、14年度は4300万円の寄付を集めたが、県から自粛を求められた。担当者は「梨などの特産品で返礼すると保管や発送の手間がかかる。Tポイント自体は直接、現金化できないのだが……」。今後、ほかの自治体の事例を調べて判断するという。
格安航空会社のピーチ・アビエーションのポイントが人気で昨年、約3億9千万円を集めた大阪府泉佐野市は4月から、「1万円で5千ポイント還元」とポイントを前面に出した寄付の呼びかけを自粛した。ただ、航空会社は地元の関西空港発着便を中心に運航し、ポイント発行自体は続ける。市の担当者は「地域活性化につながり、ポイントは寄付者本人しか使えず、換金性はないと判断している」と話す。
総務省の担当者は「返礼品の法律やルールはなく、あくまで各自治体の自主的な判断」と話す。(伊藤唯行、上田輔、歌野清一郎)
■ふるさと納税を検討した政府の研究会座長で千葉商科大学長の島田晴雄さんの話
変化の激しい時代に自治体が生き残るには、市場を意識した競争が必要だ。ふるさと納税は都市住民に応援してもらうために地域一丸で知恵を出し合い、活用次第で自治体は税収を超える財源を得られる。ただ、地域の産業振興につながる面もあるが、返礼品合戦はやや行き過ぎ。寄付の使途を競うのが本来の姿だ。
■明治大大学院の青山佾(やすし)特任教授(都市政策)の話
住民税は住む地域の自治体に納め、その地域のために使うのが基本。返礼品合戦の度がすぎ、他地域への納税が奨励されると本来の趣旨から逸脱する。大都市は財源が豊かと思われがちだが、貧困も都市に集中し、行政ニーズは尽きない。都市の自治体も、地方に税収を持って行かれるだけでなく、使途を明確にした寄付を募るなど工夫が必要だ。
◇
〈ふるさと納税〉都市部と地方の自治体の税収格差を埋めようと2008年に始まった。応援する自治体に寄付した人は2千円を超える額が所得税や住民税から控除される。今年から控除の上限額が2倍になり、年収700万円で扶養家族が配偶者のみの世帯の場合、5万5千円が10万8千円になった。給与所得者は控除を受けるための確定申告も不要になる。
総務省によると、東日本大震災が起き、被災地への義援金にも税控除の特例を政府が認めるようになった11年には74万人が649億円を寄付した。その年を除けば増加傾向にあり、13年は13万4千人が約142億円を寄付。人数は08年の約4倍、金額は約2倍にのぼった。
各地の返礼品や寄付の方法を紹介するふるさと納税の専門サイト「ふるさとチョイス」の運営会社・トラストバンクによると、このサイトで返礼品を掲載している自治体は約1100にのぼり、12年9月に約5千品だった返礼品数は先月時点で2万品を超えている。
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