「長男の七回忌をお願いします」殺害された妻の“遺書”…介護の末路、悲しい現実
悲しすぎる。家族にしか分からない苦労と苦悩の果てに、「死」を懇願された母は息子を、夫は妻を…。神奈川県相模原市で今月12日、妻に「死にたい」といわれた夫が、包丁で妻の首を刺し殺害する事件があった。妻は5年前、介護していた息子を殺害して起訴されたが、執行猶予付きの有罪判決を受けていた。介護される側とする側。それを見守った家族。高齢化や核家族化が進む中、介護は誰にとっても身近な問題となっている。その末路が「殺人」ではやり切れない。神奈川県警相模原署に殺人容疑で逮捕されたのは同市の無職、菅野幸信容疑者(66)。12日午後2時半ごろ、自宅寝室で妻、初子さん(65)の首を包丁で刺し殺害した疑いがもたれている。
初子さんは、全身の運動神経が侵され体が動かなくなる難病「筋委縮性側索硬化症」(ALS)を患っていた長男=死亡時(40)=を、平成13年から約3年間、自宅で介護した。人工呼吸器をとりつけられた長男の食事も排せつも、ほとんど面倒を見ていたという。床ずれの心配もあり、夜も2時間おきに起きなければならなかった。「体格の大きい息子さんを抱えて看病しながら、病気に負けないように励ます毎日。本当に大変そうだった」。近所の人はそう振り返る。
長男の身体は動かなくなっていった。ひらがなの文字盤を目で追わせ、視線の動きで意思を読み取る方法でしか、長男との“会話”は成立しなかった。「死にたい」。長男は初子さんに視線でこう訴えるようになったという。
横浜地裁の判決によると、初子さんが無理心中を決意したのは、16年8月26日深夜。初子さんが人工呼吸器を外すことを伝えると、長男は目で「おふくろ、ごめん。ありがとう」と応じたという。
結局、初子さんは死に切れず、殺人罪で起訴された。裁判では「嘱託殺人」と認められ、執行猶予判決を受けて自宅に戻ってきたが、「すっかりふさぎ込んでいた」と近所の男性は話した。
初子さんは、長男に語りかけるように家の仏壇を拝むようになり、夫婦で墓参する姿もたびたびみかけられた。精神的に不安定にもなっていたようで、病院にも通っていたという。
初子さんは足が悪かったが、勤めていた会社を退職した幸信容疑者が病院や買い物に車で送り迎えをしている姿を、近所の人たちはたびたび目にしていた。
「妻が『死にたい』と言うのをずっとなだめていた」「妻が包丁を持ち出した」。相模原署によると、幸信容疑者はこう供述しているという。
「長男を手にかけるという辛い事件があった自宅に5年近く住み続けた2人には、想像を絶する思いがあったはずだ」。署幹部は複雑な表情で話す。
幸信容疑者と初子さん、長男が暮らした自宅の郵便受けには、いまも3人の名前が書かれたままになっている。初子さんが殺害された後、ベッド脇のテーブルの上には、書き置きが置いてあるのが見つかった。そこには、こう書かれてあった。
《これでやっと楽になれる 葬式の心配はしないでください 長男の七回忌をお願いします…》
◇
難病や高齢者介護の悩みを相談する窓口は、都道府県など自治体にある。寄せられるのは介護疲れなど深刻な悩みが多いが、精神的なケアはほとんどボランティアまかせになっており、サポート態勢は十分とはいえないのが現状だ。専門家からも「国は、患者や家族をくまなく支える仕組みを早急に作るべきだ」との声が上がっている。
介護する側が介護される側に暴力を振るうなど虐待や暴力情報が寄せられることも少なくない。厚生労働省の調査によると、家庭で介護する家族などが高齢者を虐待したという通報は、1万9971件(平成19年度)に上っている。介護される側もする側も、精神的に厳しい状況に置かれている様子が浮かび上がる。
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未遂を含め殺人事件は裁判員裁判の対象となる。「介護疲れ」などの事情を裁判員はどう受け止め、どのような判断を下すのか。
山口地裁で9月、介護疲れから寝たきりの妻(60)を刺した殺人未遂事件の裁判員裁判が開かれた。殺人未遂罪も殺人罪と同様、死刑や無期懲役を科す罪だが、被告の夫(63)への判決は、懲役4年の求刑に対し、懲役3年、保護観察付き執行猶予4年。検察、弁護側ともに控訴せず、確定した。
判決は「愛情をもって13年間介護していた」と、被告に有利な情状を認定。量刑も弁護側の主張に沿ったものとなった。判決後の会見で裁判員からは「今回のような(献身的)介護を自分ができるかと考えると難しい」などと、被告に同情的な声があがった。
選ばれる6人の裁判員の年齢構成や、介護経験の有無などで判断がばらつく可能性もあるが、元最高検検事で筑波大の土本武司名誉教授は「介護疲れによる殺人事件などに対し、裁判員が同情するケースは増えるだろう」と分析している。
(中村昌史)
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