覚せい剤を使用した疑いで逮捕された歌手のASKAさんが、逮捕直前に乗ったタクシー車内の映像が、テレビの情報番組などで公開されて、インターネット上で物議を醸している。
ASKAさんは11月28日午後8時20分過ぎ、警察に用意された車に乗って、自宅から警視庁へ出頭した。これに先立って、外出していたASKAさんは同日午後6時半ごろ、大勢の報道陣が待ち構える自宅前にタクシーで戻って来ていた。
このとき乗車したタクシーに搭載されたドライブレコーダーの映像が11月29日、テレビ各局の情報番組などで公開された。その映像には、タクシーの後部座席に乗ったASKAさんが、運転手に対して指示している様子が映っていた。
映像は、タクシー会社か運転手が提供したものとみられるが、ネット上では「プライバシーの侵害になるんじゃないか」「どこのタクシー会社だ?」「犯罪捜査以外に第三者に渡していいものか」といった疑問の声が多数あがっている。
●関東運輸局に複数の苦情が入っている
関東地方のタクシー会社を監督する国土交通省・関東運輸局の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「映像が公開された29日以降、『タクシー会社がそんなことをしていいのか』『タクシー会社を指導しろ』といった苦情が複数入ってきている」と回答した。
インターネット上では、タクシー会社を特定する人も現れているが、関東運輸局によると、現在のところ、どの会社なのかといった詳細は把握できていないという。
一方で、担当者は「(映像提供が)どういう法律に違反しているか、はっきりいえない。関東運輸局内でも、対応を検討中だ」と述べた。たとえば、強盗などで、タクシー内の映像がニュースに使用されることがこれまでもあったが、「そのことをいけないことだと言ってきていない。この件だけ特別というのは難しいのではないか」(同担当者)。
東京都内のタクシー会社が加盟する業界団体「東京ハイヤー・タクシー協会」は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「映像を提供した会社の情報は入っていない。ニュースで流れている映像で特定の会社を限定することはできないし、私たちが調査権限をもっているわけではないので、特定は困難だ」と回答した。
ドライブレコーダーの映像を提供する基準について聞くと、法令上の規定に基づく内容や、捜査協力の一環として外部提供は認めているが、それ以外については認めていないという。「事業者がどこかわからないが、少なくとも捜査協力の一環ではないと理解している。大多数のタクシー事業者は、この運用基準以外で提供することは普通考えられない」と強調した。
この度、チェッカーキャブ加盟会社の車内映像がテレビ等マスコミ各局にて放送されている事態となっております。
チェッカー加盟各社の車両では、ドライブレコーダーによる車内外の様子を記録しております。これには、防犯の観点の他、万が一の事故などの原因解明に活用することで、「安全・安心」の更なるレベルアップにつなげる目的もございます。
映像の活用は、法令又は条例の規定に基づく場合を除くほか、事故・トラブル等の確認及び事故分析、原因究明、ヒヤリハット情報の収集 、安全運行に資するための研修教材の作成及び安全運転教育への活用 、ドライブレコーダー導入車両による安全運転指導の実施などへの活用にとどめ、記録映像は運行 管理統括部長などの管理者が厳重に管理することとしております。
また外部への映像提供にあたっては、刑事訴訟法の規定に基づく捜査機機関からの文書による照会に応じて提供する場合、ならびに事故やトラブルの状況及び原因を明らかにするために、その当事者、保険会社、捜査機関に提供する場合のみとしております。
現在、マスコミ各社にて放送されている映像は、当グループ加盟の1社よりマスコミへ提供されたものでございますが、これは上記のような映像提供の事案には当たりません。映像提供を行った社に対しては、グループとして厳罰をもって対応し、記録映像の管理徹底を図らせる所存であります。
放送された映像の関係者の皆様におかれましては、大変なご迷惑とご心配をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。また、平素よりチェッカーグループをご利用いただいております皆様におかれましても、多大なるご迷惑をおかけいたしましたことを重ねてお詫びいたします。
当グループでは、これまでも記録映像にあたっては、加盟各社に対し厳格な取り扱いを求め情報管理の徹底に努めてまいりましたが、このような映像提供が発生したことを踏まえ、今後は更なる厳格化をはかって再発防止に全力で取り組んでまいります。
平成28年11月30日
株式会社チェッカーキャブ代表取締役社長
チェッカーキャブ無線協同組合理事長
安田敏明