言わなければならない事は言わないと前には進まない

生活する中において言わなければならない事や、他の記事で共感したことなどを中心に。今その時の思いを表す。

選挙供託金制度について その3

2011-12-13 23:05:09 | 言いたいことは何だ

選挙供託金制度の違法性



立法事実



参政権のような国民にとって重要な権利を制限するには、立法事実に基づいた議論が国会において十分になされ、慎重の上にも慎重を重ねた上で立法がなされなければならないのですが、この選挙供託金制度は、大正14年に立候補制が採用されるのと同時に導入された制度であり、それ以前に泡沫候補の立候補により公正な選挙が妨害されたなどの立法事実を欠いており、立法府の裁量の範囲を逸脱しているは明白です。
そして、この制度が成立した背景は、同年に治安維持法が制定されるなど、無産者に支持を得ていた思想及びその団体を政治的に弾圧することに政府が力を注いでいた時代であることは歴史的事実であり、この制度を成立させた議員は納税要件のある選挙権による制限選挙により選出されたのであり、まさに無産者に配慮を欠いた立法がなされるのは当然どころか、無産者に対する政治的弾圧のための立法であったのは想像に容易いでしょう。
この事は、単に立法事実を欠いていて立法府の裁量権の濫用というに止まらず、立法行為自体が違法違憲であると言わざるを得ないのかもしれません。

目的違憲



選挙において、立候補者の表現の自由とは、国民の投票における意思形成に貢献するものです。公職選挙法は選挙期間以外の選挙運動は禁止しているのですし、国民が政治に最も関心の集まる選挙期間に主義主張をすることによって、例え当選しなかったとしても、国政に間接的に反映されることとなるのです。
少数意見だからという理由で、参政権の行使を制限することは民主主義国家として許されることでは無いのは言うまでもありません。この選挙供託金制度の泡沫候補の排除という目的は、少数意見の者へ対する政治的弾圧であり、民主主義国家において、到底許されない合理性を欠いたものであると言えるでしょう。

手段違憲



選挙供託金制度の泡沫候補の排除という目的が、仮に立法府の裁量の範囲にあると仮定しても、その手段は一定金額の金銭を供託することを絶対条件とするもので、泡沫候補であることと一定金額を調達出来ないことの間には、なんら合理的関連性が無いばかりか、目的を達成するための手段として、途方もなく不合理な手段であると言えるでしょう。そして、この手段は資力がある者に対しては全く無力であり、過去幾多の国政選挙や知事選挙で売名行為と思われる出馬が繰り返されてきたかは、誰もが知るところです。
つまり、この制度の目的達成のための手段は合理性を欠いているのはもちろん、目的すら達成していないのです。

より制限的でない他の選びうる手段(LRA基準)



自由民主党や民主党の代表選挙においては、立候補にさいに一定金額を集めることを立候補の条件とするような不合理な方法は採られておらず、一定数の推薦人の推薦状を集めることを立候補の条件としています。選挙という制度は、一定の支持を得なければ結果として当選することは出来ないシステムであるのだから、事前にある程度の支持があることを証明させることは理にかなった方法ですし、むしろ当然の方法なのです。
参政権のような民主主義の基礎を成す国民の重要な権利を制限するさいには、国民に対し不公正な扱いや過度の負担をかけることない手段を選択しなければならないのであり、目的達成のためのより制限的でない他の選びうる手段があることは明白で、その目的さえ合理性を有していないのですから、立法府による裁量権の濫用と言わざるを得ないのです。
そして、この選挙供託金制度は無産者に対し殊更負担を強いる制度である以上、例え立候補しようとする者に対し一定額の供託をさせることが立法府の裁量の範囲だとしても、より制限的でない他の選択的手段を規定することなしには到底認められないと言うべきでしょう。

合理性の基準



上記で述べたように、一定金額を調達することと、泡沫候補であることに間には、合理的な関連性を見いだすことは出来ません。一定金額を調達させることが売名行為などの選挙の公正を害する者の立候補を思い止まらせることが出来たとしても、それは真の候補者をも排除してしまうものです。この制度を支えている法理は何一つ存在していないと言えるでしょう。

【結論】



公職選挙法92条並びに93条は、国民の基本的人権である参政権を著しく侵害するものですので憲法11条に違反し、国民の自由及び幸福追求に対する国民の権利を奪うものですので憲法13条に違反し、無産者に殊更負担を強いるものですから憲法14条並びに憲法44条但し書きに違反し、国民の公務員を選定する権利を侵害するものですから憲法15条1項に違反し、明かな制限選挙が行われているのですから憲法15条3項に違反し、国民の中の殊更無産者の政治的発言を著しく制限するものですから憲法21条1項に違反し、無産者の公務員になろうとする権利を奪うものですから憲法22条1項に違反し、無産者の参政権は著しく侵害されており全国民を代表する選挙された議員で組織されているとは言えないのですから憲法43条1項に違反していると言えるでしょう。
 
                                                                                                  転載元:http://nipponnkoku.jp/
 

選挙供託金制度について その2

2011-12-13 23:00:47 | 言いたいことは何だ
被選挙権の重要性
 
参政権とは、国民が政治に参加する権利であり、選挙権、被選挙権、公務員を罷免する権利等があげられます。選挙供託金制度は、この中の被選挙権を制限するものでありますが、今までこの被選挙権について多くの議論が成されることはありませんでした。しかし、この権利は、選挙権に並ぶ民主主義国家の根幹を成す重要な権利なのです。
選挙権に対し絶対的平等が求められるは、今更ここで詳しく説明するまでもないですが、簡単に言えば内閣総理大臣の持つ一票も、成人したばかりの若者の一票も全く同じ価値であると言う事です。つまり選挙という国民の代表者を決める場面においては、日本国民であれば誰しもが全く同一に扱われなければなりませんし、そうでなければ民主主義国家とは言えません。
それでは、被選挙権に対しては絶対的平等は、求められていないのでしょうか。
選挙権行使の場である選挙において、選挙権の絶対的な平等が確保されていたとしても、日本の選挙では、選挙に立候補することが認められた者の中からしか選ぶことしか出来ない制度なのですから、立候補者を国家が恣意的に選別してしまったら全く意味のないものになってしまいます。
一定金額を供託させることを絶対条件とする選挙供託金制度は、無産者の立候補を殊更制限する制度であることは一目瞭然です。これで平等で公正な選挙が行うことが出来るでしょうか。
現実に立候補することが出来る候補者は、資産の多い者ばかりですし、与党などの大政党は多くの利益を生む産業や団体からの多額の政治献金を受け取っていますし、それはまた、多くの政治献金を受け取るための政治を行うことになります。
選挙権と被選挙権とは表裏一体のもので、どちらの権利も絶対的平等が確保されなければ意味を成さない性質のもので、どちらか一方でも制限されれば政治の腐敗を生み、民主国家の根幹を揺るがすものとなります。
一定金額を調達出来ることと、政治家としての資質に関連性を見いだすことは出来るのでしょうか。
清貧(貧乏だが心が清らかで行いが潔白であること。余分を求めず、貧乏に安じていること。)という言葉がありますが、このような者こそ政治家に相応しいと私は思います。私利私欲を捨て国家国民のために政治を行う者こそ国民の代表であり、国会議員に相応しいのではないでしょうか。
一定金額を調達出来ることが、真の国民の代表の絶対条件であるならば、選挙供託金制度は素晴らしい制度だと言えるでしょう。しかし、そこにはなんら合理的関連性を見いだすことは出来ないどころか、途方もなく不合理な方法であるとしか言えません。
あまりに多い政治と金に関する事件からも、この選挙制度が真の代表者を選ぶために機能していないことは明白でしょう。
 
                                                                                              転載元:http://nipponnkoku.jp/

選挙供託金制度について その1

2011-12-13 22:58:02 | 言いたいことは何だ

選挙供託金制度の歴史



1.選挙供託金制度の成立



選挙供託金制度は、大正14年に衆議院議員選挙法の改正(通称:男子普通選挙法)のさいに採用された立候補制度と同時に、泡沫候補の排除を目的として導入されたものです。同年に、野党及び国民からの強い民主化への要求から、普通選挙と引き替えに無産者の支持を受けていた思想及びその団体の言論を弾圧する目的で、天下の悪法と言われる治安維持法が制定されます。
選挙供託金制度が出来た時代背景は、1918年(大正7年)の米騒動から広がった社会運動から、民主主義の思想が広がり普通選挙運動が活発となると共に、社会主義思想への激しい弾圧が行われた時代です。泡沫候補の排除という目的よりも、無産者の支持を受けていた候補者の立候補を制限する目的を持って導入された制度であることは明かで、公職選挙法が制定された後も、この制度が一度として廃止されたことはありません。

2.歴史年表



和暦 西暦    憲法        主な出来事               選挙法      供託金額  初任給※1明治221889
大日本帝国憲法
大日本帝国憲法施行
衆議院議員選挙法
5円明治371904日露戦争(~05)10~15円大正31914第一次世界大戦10~15円大正71918米騒動12~20円大正111922全国結成40~55円大正121923関東大震災40~55円大正141925衆議院議員選挙法改正(普通選挙法)2千円40~55円治安維持法昭和121937日中戦争(~45)40~55円昭和161941大東亜(太平洋)戦争(~45)50~60円昭和201945広島、長崎に原爆投下昭和211946
日本国憲法
日本国憲法300~500円昭和251950公職選挙法
公職選挙法
3万円3,991円昭和261951サンフランシスコ講和条約
日米安全保障条約5,500円昭和27195210万円5,850円昭和351960日米安全保障条約改定(新安保)10,000円昭和37196215万円12,900円昭和391964東京オリンピック16,300円昭和44196930万円27,100円昭和481973石油危機50,856円昭和501975100万円81,104円昭和571982200万円107,120円平成 41992300万円188,032円平成 61994比例代表制導入600万円※2
(比例)194,792円平成 71995阪神・淡路大震災196,000円
※1 東京・公立小学校教員の初任給 諸手当含まず(物価の文化史事典:展望社より)
※2 小選挙区は300万円

3.現行憲法下での選挙供託金制度



大日本帝国憲法の時代に出来た選挙供託金制度が、現行憲法下で合憲であるかについては慎重な議論が必要ですが、政府の主張する供託金引き上げの理由は、泡沫候補の排除との説明に終始するだけで、なぜ泡沫候補の排除が必要なのか、具体的な理由が説明されたことはありません。
そして、戦後現行憲法下で選挙供託金の存続に大きく貢献した事件があり、この事件によって国民は、泡沫候補の排除の必要性を誤認させれることとなります。その事件は、1963年(昭和38年)11月21日に行われた第30回衆議院議員総選挙のさいに肥後亨(ひご とおる)により起こされます。
肥後は、直前に行われた千葉県知事選挙と東京都知事選挙に関する事件で公民権を停止されており、立候補することが出来なかったため、肥後亨事務所(途中「背番号肥後亨事務所」に改称)という確認団体を立ち上げ、東京都内の選挙区全てと旧千葉1区に27名の候補者を擁立し、候補者名を一郎、二郎、三郎、・・・二六、二七と背番号をつけた通称で届出をさせ、選挙活動をほとんど行いませんでした。そして旧千葉1区では、当時自民党副総裁である川島正次郎を揶揄する目的で「おとぼけ正次郎」で立候補しようとするが却下され、「阿部十七」として候補者を擁立します。選挙後、肥後は選挙に関する事件で逮捕され収監され裁判途中に高血圧性脳出血で急死します。
この事件は、選挙供託金制度の合憲性が争われる裁判で引き合いに出される事がありますが、これをもって選挙供託金制度が必要であるとは到底言えません。なぜなら、この当時にも選挙供託金制度は存在しており、むしろ選挙供託金制度は資金のある者に対しては全く無力だと証明しているに過ぎないからです。
しかし、この事件はこれだけでは終わらないのです。川島正次郎は秘書である松崎長作を介して、肥後亨に活動資金を提供していたことが発覚し、後に国会でも追及されることとなります。
川島正次郎は選挙制度に精通していており、小選挙区制の導入など選挙制度の改革に大きく貢献した人物であることと、自民党副総裁という非常に影響力の強い地位にいた事を考えると、まさに選挙供託金制度の引き上げの布石として、この事件を肥後に起こさせた可能性が高いのではないかと思わざるを得ないでしょう。
捜査が政界要人に迫る直前の死であるだけに、その死にも当時疑いの目が向けられました。そして、川島正次郎は選挙供託金が倍に引きあがれた1969年の翌年に、持病である気管支喘息の発作により急死することとなります。
川島正次郎が自民党副総裁であったことを考えれば、政府が関与していたと疑わざるを得ない事件であり、この事件が選挙供託金制度の正当性を訴える理由とはなり得ないのは明らかです。
 
                                                                                           転載元:http://nipponnkoku.jp/

優越的地位の乱用に関する独禁法上の指針」 その3

2011-12-13 22:45:37 | 言いたいことは何だ
協賛金等の負担の要請
(1)考え方
 委託者が催事、広告等を行うに当たり、受託者に対し、その費用の一部として協賛金等の負担を要請することがある(注12)。
 このような要請は委託者が流通業者である場合に行われることが多いが、流通業者が商品の納入業者に協賛金等の負担を要請する場合には、当該費用を負担することが納入商品の販売促進につながるなど受託者にとっても直接の利益となる場合もある。しかし、役務の委託取引においては、販売促進活動につながるなど自己の協賛金等の拠出額に見合った直接の利益を受託者が受けることは少ないので、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、その一方的な都合で協賛金等の負担を要請する場合には、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい。
(注12)代金の減額に代えて協賛金等の負担の要請が行われる場合があるが、その場合についての考え方は、前記2のとおりである。
(2)独占禁止法上問題となる場合
 取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、協賛金等を負担させることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
協賛金等の負担額及びその算出根拠、使途等について、委託者と受託者の間で明確になっていない場合であって、受託者にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合
次のような方法により協賛金等を負担させ、受託者に不利益を与えることとなる場合(注13)
委託者の決算対策など、損益が悪化したことを理由として、協賛金等の負担を要請する場合
商品の納入業者など他の事業者に対しても協賛金等の負担の要請を行っていることを理由として、受託者が受ける直接の利益等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えて協賛金等の負担を要請する場合
一定期間に一定程度以上の委託取引がなされた場合に、協賛金等を徴収することをあらかじめ定めていた場合において、当該取引量に至らないにもかかわらず当該協賛金等の負担を要請するとき
(注13)②の場合は、協賛金等の負担の条件について委託者と受託者の間で明確になっている場合であっても違法となるケースである。
商品等の購入要請
(1)考え方
 委託者が、受託者に対し、役務の委託取引関係を利用して自己の販売する商品又は役務のほか、委託者の関係会社や取引先事業者が販売する商品又は役務の購入を要請することがある。
 取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、商品又は役務の購入を要請する場合には、受託者は、当該商品又は役務の購入を希望しないときであっても、今後の役務の委託取引に与える影響を懸念して当該要請を受け入れざるを得ないこととなり、優越的地位の濫用として問題となる。
 なお、このような商品等の購入要請は、いわゆる相互取引(それぞれ相手方がその事業遂行上必要な商品又は役務を販売している場合において、取引の相手方からの商品又は役務の購入と、相手方への自己の商品又は役務の販売が関連付けられている取引をいう。)の申出として行われる場合があり、このような相互取引についての考え方は、流通・取引慣行ガイドライン第1部第5(不当な相互取引)記載のとおりである。
(2)独占禁止法上問題となる場合
 取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、自己又は自己の指定する者から、次のような方法により受託者がその事業遂行上必要としない商品又は役務を購入させることは、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
委託取引担当者等の役務の委託取引に影響を及ぼし得る者が購入を要請する場合
受託者に対し、組織的又は計画的に購入を要請する場合
購入する意思がないとの表明があった場合又はその表明がなくとも明らかに購入する意思がないと認められる場合に、重ねて購入を要請し、又は不必要な商品を一方的に送付するとき
購入しなければ今後の役務の委託取引に影響すると受け取られるような要請をし、又はそのように受け取られるような販売の方法を用いる場合
情報成果物に係る権利等の一方的取扱い
(1)考え方
 情報成果物が取引の対象となる役務の委託取引にあっては、受託者が作成した成果物について、受託者に著作権が発生したり、受託者にとって特許権、意匠権等の権利の対象となることがある。また、受託者が当該成果物を作成する過程で、他に転用可能な成果物、技術等を取得することがあり、これが取引の対象となる成果物とは別の財産的価値を有する場合がある。
 このような役務の委託取引において、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、当該成果物が自己との委託取引の過程で得られたこと又は自己の費用負担により作成されたことを理由として、一方的に、これらの受託者の権利を自己に譲渡(許諾を含む。以下同じ。)させたり、当該成果物、技術等を役務の委託取引の趣旨に反しない範囲で他の目的のために利用すること(二次利用)(注14)を制限する場合などには、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注15)。
 しかしながら、このような場合に、成果物等に係る権利の譲渡又は二次利用の制限に対する対価を別途支払ったり(注16)、当該対価を含む形で対価に係る交渉を行っていると認められるときは、優越的地位の濫用の問題とはならない(注17)。
 ただし、このような場合であっても、成果物等に係る権利の譲渡等に対する対価が不当に低い場合や成果物等に係る権利の譲渡等を事実上強制する場合など、受託者に対して不当に不利益を与える場合には、優越的地位の濫用として問題となる(注18)。
(注14)二次利用としては、例えば、以下のような場合がある。
委託者からの発注により、受託者が地上放送用に制作したテレビ番組を、ビデオ化して販売する場合
委託者からの発注により、受託者が劇場映画用に制作したアニメーションを、インターネットにより配信する場合
委託者からの発注により、受託者が委託者の自社使用のために制作したコンピュータープログラムを、他の事業者のために使用する場合
委託者からの発注により、受託者が特定商品のために制作したキャラクターについて、他の商品に使用する場合
(注15)この(1)「考え方」及び下記(2)「独占禁止法上問題となる場合」において示されている考え方は、情報成果物の作成に伴い、受託者に権利が発生・帰属していることを前提としたものである。
 しかし、受託者が情報成果物を作成するに当たっては、役務の委託取引に基づき受託者が自己の有する技術、人員等により作成する場合だけでなく、委託者から提供された技術、人員等をも使用して作成する場合がある。
 委託者が役務の委託取引を行うに当たり,受託者に自己の有する技術を提供した場合は,役務の委託取引と技術取引とが同時に行われたものとみることができる。このため,情報成果物に係る権利の取扱いについても委託者が提供した技術との関係を考慮して判断されることとなるが,知的財産のうち技術に関するものの利用に係る制限行為に関する独占禁止法上の考え方については,「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(平成十九年九月二十八日公正取引委員会)のとおりである。
 また、委託者が技術、人員等を提供するなどにより、情報成果物を受託者と共同で作成したとみることができる場合においては、当該成果物に係る権利の譲渡、二次利用及び労務、費用等の負担に係る取決め内容について、委託者と受託者の間で著しく均衡を失し、これによって受託者が不当に不利益を受けることとなるときには、優越的地位の濫用又は共同行為における差別的取扱い(一般指定第五項)として問題となる。
(注16)二次利用の制限に対する対価には、二次利用による収益配分の条件として定める場合を含む。
(注17)当該対価を含む形で対価に係る交渉を行っていると認められるためには、取引の当事者双方が成果物等に係る権利の譲渡等が取引条件であることを認識し、委託者が成果物等に係る権利の譲渡等に対する対価が含まれることを明示した委託費用を提示するなど、取引条件を明確にした上で交渉する必要がある。
 また、違反行為を未然に防止するなどの観点からは、可能な場合には、委託者が委託費用を提示する際に権利の譲渡等に対する対価を明示していることが望ましい。
(注18)「対価が不当に低い場合」の判断に当たっては、本指針の「第2 3 著しく低い対価での取引の要請」に記載される考え方が適用される。
 また、「事実上強制する場合」の具体例として、例えば、受託者が権利の譲渡を伴う契約を拒んでいるにもかかわらず、今後の取引を行わないことを示唆するなどして、事実上、権利の譲渡を余儀なくさせる場合が挙げられる。
(2)独占禁止法上問題となる場合
 情報成果物が取引対象となる役務の委託取引において、取引上優越した地位にある委託者が、当該成果物を作成した受託者に対し、次のような行為を行う場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
情報成果物の権利の譲渡
受託者に権利が発生するにもかかわらず、当該成果物が委託者との委託取引の過程で得られたこと又は委託者の費用負担により作成されたことを理由として、一方的に当該成果物に係る著作権、特許権等の権利を委託者に譲渡させる場合
受託者に権利が発生する場合において、二次利用による収益配分を条件として、著作権等の権利を委託者に譲渡したにもかかわらず、二次利用の管理を行う委託者が受託者からの二次利用の要請・提案に対して、合理的な理由がないのに応じない場合
情報成果物の二次利用の制限等
受託者に権利が発生し、委託者には権利が発生しないにもかかわらず、委託者が、自らに又は自らにも権利が発生すると主張しこれを前提として、受託者との間で、一方的に当該成果物の二次利用の収益配分などの取引条件を取り決める場合、又は二次利用を制限する場合
受託者に権利が発生する場合において、委託者が、当該成果物が委託者との委託取引の過程で得られたこと又は委託者の費用負担により作成されたことを理由として、受託者に対し、一方的に当該成果物の二次利用の収益配分などの取引条件を取り決める場合、又は二次利用を制限する場合
受託者に権利が発生する場合において、受託者が、委託者が提示する成果物作成の対価に加えて、当該成果物の二次利用による収益配分の条件も考慮して当該成果物の作成を受託したにもかかわらず、二次利用の管理を行なう委託者が受託者からの二次利用の要請・提案に対して、合理的な理由がないのに応じない場合
受託者が情報成果物を作成する過程で発生した取引対象外の成果物等の権利の譲渡及び二次利用の制限等
 受託者が取引対象である情報成果物を作成する過程で生じた当該成果物以外の成果物等について、受託者に権利が発生する場合において、委託者が上記ア及びイと同様の行為を行う場合
 
転載元:公正取引委員会 独占禁止法 役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の      指針

優越的地位の乱用に関する独禁法上の指針 その2

2011-12-13 22:38:12 | 言いたいことは何だ

第2 委託者による優越的地位の濫用行為



代金の支払遅延
(1)考え方
 委託者が、提供を受けた役務の代金について、受託者に責任がないにもかかわらず、その全部又は一部を契約で定めた支払期日より遅れて支払うことがある。
 このような代金の支払遅延は、委託者側の収支の悪化や社内手続の遅延などを理由とすることが多いが、取引上優越した地位にある委託者が、正当な理由がないのに、契約で定めた支払期日に代金を支払わない場合であって、受託者が、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる。
 また、契約で定めた支払期日より遅れて代金を支払う場合だけでなく、取引上優越した地位にある委託者が、一方的に代金の支払期日を正常な商慣習に照らして遅く設定する場合や、支払期日の到来を恣意的に遅らせる場合にも、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい。ただし、支払期日が遅く設定される場合であっても、代金の額について支払期日までの受託者側の資金調達コストを踏まえた対価として交渉が行われるなど正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えていないと認められるときは、優越的地位の濫用の問題とはならない。
(2)独占禁止法上問題となる場合
 取引上優越した地位にある委託者が代金の支払を遅らせることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
社内の支払手続の遅延などを理由として、委託者側の一方的な都合により、契約で定めた支払期日に代金を支払わない場合
役務の成果物を対象とする取引において、役務の成果物の提供が終わっているにもかかわらず、当該成果物の検収を恣意的に遅らせることなどにより、契約で定めた支払期日に代金を支払わない場合
役務の成果物を対象とする取引において、代金は当該成果物を委託者が実際に使用した後に支払うこととされている場合に、委託者側の一方的な都合により当該成果物の使用時期を当初の予定より大幅に遅らせ、これを理由として代金の支払を遅らせるとき
代金の減額要請
(1)考え方
 委託者が、受託者に対し、契約で定めた代金の減額を要請することがある。
 受託者が提供した役務の内容が委託時点で取り決めた条件に満たないことを理由として委託者が代金の減額を要請することもあるが、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、正当な理由がないのに、代金の減額を要請する場合には、あらかじめ計算できない不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注8)。
 また、委託者が契約で定めた代金を変更することなく、役務の仕様を変更したり、契約外の役務の提供を要請する場合もあるが、このように代金を実質的に減額することとなる場合の考え方は、上記と同様である。
 なお、受託者から提供された役務に瑕疵(かし)がある場合、委託内容と異なる役務が提供された場合、納期に間に合わなかったために取引の目的が達成できなかった場合等、受託者側の責めに帰すべき事由により、当該役務が提供された日から相当の期間内に、当該事由を勘案して相当と認められる金額の範囲内で代金を減額する場合、代金の減額要請が対価に係る交渉の一環として行われ、その額が需給関係を反映したものであると認められる場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない。
(注8)受託者との間の継続的な取引関係の中で、代金の減額に代えて「協賛金」、「協力金」等の名目で金銭的な負担の要請が行われる場合があるが、その場合の考え方は、この代金の減額要請の場合と同様である。
 また、委託者が行う催事等の費用の一部に充当するために受託者に対して協賛金等の負担の要請が行われる場合があるが、その場合の考え方は、後記5のとおりである。
(2)独占禁止法上問題となる場合
 取引上優越した地位にある委託者が代金の減額を行うことは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
受託者に責任がないにもかかわらず、役務の提供を受けた後に、予算不足など委託者側の一方的な都合により、契約で定めた代金の減額を行う場合
提供を受けた役務について、あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくし、委託内容と異なることや瑕疵があることなどを理由として、契約で定めた代金の減額を行う場合
委託者側の一方的な都合により取引の対象となる役務の仕様等の変更、やり直し又は追加的な役務の提供を要請した結果、受託者側の作業量が大幅に増加することとなるため、受託者に対し当該作業量増加分に係る代金の支払を認めたにもかかわらず、当初の契約で定めた代金しか支払わない場合
受託者が委託者の要請に基づいて設備投資や人員の手配を行うなど、委託者に対する役務提供の準備のための費用を負担せざるを得なくなっているにもかかわらず、委託者側の一方的な都合により、当該役務の一部の委託を取りやめ、契約で定めた代金から委託取引の減少分に係る代金の減額を行う場合
著しく低い対価での取引の要請
(1)考え方
 委託者が、受託者に対し、当該役務の内容と同種又は類似の内容の役務の提供に対し通常支払われる対価に比して著しく低い対価での取引を要請することがある。
 取引の対象となる役務の対価について、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、著しく低い対価での取引を要請する場合には、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注9)。
 しかし、委託者が要請する対価が受託者の見積りにおける対価に比べて著しく低く、受託者からみると、委託者による代金の買いたたき行為であると認識されるとしても、委託者から要請のあった対価で受託しようとする同業者が他に存在する場合など、それが対価に係る交渉の一環として行われるものであって、その額が需給関係を反映したものであると認められる場合や、いわゆるボリュームディスカウントなど取引条件の違いを正当に反映したものであると認められる場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない(注10)。
 なお、著しく低い対価での役務の委託取引を要請することが優越的地位の濫用行為に該当するか否かについては、対価の決定に当たり受託者と十分な協議が行われたかどうか等の対価の決定方法、他の受託者の対価と比べて差別的であるかどうか等の決定内容、取引の対象となる役務の需給関係を反映しているかどうか等の対価の決定状況などを勘案して総合的に判断することとなる。
(注9)このような場合、委託者と受託者の間で対価に係る交渉が十分に行われないときには、受託者は委託者による代金の買いたたき行為と認識しがちであるので、取引上優越した地位にある委託者は、当該対価が需給関係を反映したものであることについて十分受託者に説明した上で当該要請を行うことが望ましい。
(注10)同業者が独占禁止法第二条第九項第三号又は一般指定第六項に規定する不当廉売に該当する行為を行っている場合には、当該同業者の提示する対価は需給関係を反映したものであるとは認められない。
(2)独占禁止法上問題となる場合
 取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、役務の委託取引において著しく低い対価を定めることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
受託者が役務の委託取引を行うに際して新たに設備投資や人員の手配を行う必要があるなど、これによって当該役務の提供に必要な費用等も大幅に増加するため、受託者が対価の引上げを求めたにもかかわらず、かかる費用増を十分考慮することなく、著しく低い対価を定める場合
受託者に対して短い納期の設定を行い、これによって当該役務の提供に必要な費用等も大幅に増加するため、受託者が対価の引上げを求めたにもかかわらず、かかる費用増を十分考慮することなく、著しく低い対価を定める場合
多量ないし長期間の役務の委託取引をすることを前提として受託者に見積りをさせ、その見積りにおける対価を少量ないし短期間しか取引しない場合の対価として定めるとき
特定の受託者に対し、合理的な理由がないにもかかわらず、他の受託者の対価と比べて差別的に低い対価を定める場合
やり直しの要請
(1)考え方
 委託者が、受託者に対し、提供を受けた役務について、それに要する費用を負担することなくやり直しを要請することがある。
 提供を受けた役務の内容が委託時点で取り決めた条件に満たない場合には、委託者がやり直しを要請することは問題とならないが、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、その一方的な都合でやり直しを要請する場合には、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注11)。
 なお、やり直しのために通常必要とされる費用を委託者が負担するなど、受託者に不利益を与えないと認められる場合には、優越的地位の濫用の問題とはならない。
(注11)役務の成果物が取引対象となる取引にあっては、受託者が成果物を試作した後でなければ具体的な仕様等が確定できないため、委託者が当該試作品につきやり直しを要請する場合がある。このような場合に、当該やり直しに係る費用が当初の対価に含まれていると認められるときは、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用として問題とはならない。
(2)独占禁止法上問題となる場合
 取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、提供を受けた役務のやり直しをさせることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
委託者側の一方的な都合により取引の対象となる役務の仕様等を変更したにもかかわらず、その旨を受託者に伝えないまま、受託者に継続して作業を行わせ、仕様に合致していないとして、受託者にやり直しをさせる場合
役務の提供を受ける過程で、その内容について了承したにもかかわらず、提供を受けた後に受託者にやり直しをさせる場合
提供を受けた役務について、あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくし、委託内容と異なることや瑕疵があることなどを理由として、受託者にやり直しをさせる場合
受託者が委託者に対し仕様ないし検査基準の明確化を求めたにもかかわらず、正当な理由なくこれを明確にしないまま、仕様等と異なることや瑕疵があることなどを理由として、受託者にやり直しをさせる場合
 
転載元:公正取引委員会 独占禁止法 役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の      指針