【四季】 (2014/1/11)
:日本農業新聞
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今日は一一一忌。文豪・山本有三の命日だ。亡くなって40年がたつ。『路傍の石』がことに有名で何度か映画化もされた。吾一が、鉄橋からぶら下がるという肝試しの後、「(吾一は)われはこの世にひとりしかないという意味だ」と先生から無謀を諭される場面は有名だ▼大正から戦前にかけて、『女の一生』『真実一路』など数々の名作を残した。小説を書く傍ら、青少年の教育にも情熱を燃やした。編集の音頭を取った『日本少国民文庫』全16巻は、満州事変後の暗たんとした時代、子どもたちに質の高い読み物を提供した▼皇后美智子さまは、同シリーズの何冊かを疎開先で読み、心に残る本と語っている。『心に太陽を持て』『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著)などは、戦後も読み継がれ、多くの子どもたちの心の糧となってきた▼『路傍の石』は実は未完の小説である。あらためて読み直すと、物語が突如中断、「ペンを折る」が続く。1940年、軍部の圧力で連載中断を余儀なくされた。「筆を曲げて書く勇気は、わたくしにはありません」と断腸の思いをつづる▼特定秘密保護法が成立し、「ペンを折る」事態が起きはしないか気に掛かる。時代錯誤と言われるかもしれないが、山本の無念さを味わうような時代にしてはならない。